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アレックス・タバロック 「アルパカの経済学 ~アルパカに学ぶバブルのメカニズム~」/タイラー・コーエン 「反循環的な資産 ~景気が悪化すると需要が高まる資産とは?~」

●Alex Tabarrok, “Alpaca Economics”(Marginal Revolution, November 30, 2004)


「アメリカ経済にはハルマゲドンが迫っているのか?」なんていう物騒な話題をテーマに語りたいと思う人など果たしているだろうか? 少なくとも私にはその気はない。私が現在1気になっているのは次のことだ。

かつてのエミューやダチョウ、リャマがそうだったように、やがてはアルパカのバブルも弾けてしまうのだろうか? アルパカバブルが弾けたらどうなってしまうのだろうか?

これはニューヨーク・タイムズ紙のフロントページ(!)を飾っている記事から引用したものだ。真面目な話、アルパカはバブルのメカニズムを学ぶ上で何とも愉快な題材の一つを提供しているのだ。

アルパカのフリース(刈り取られた毛)は大変心地よいが、1頭のアルパカから取れるフリースの量は年間で5ポンド程度であり、市場で売ると200ドル程度になるという。しかし、現在アルパカは1頭あたり20,000ドルで取引されている。つまり、アルパカの価格はその生産物(フリース)を売って得られる収入ではなくキャピタルゲイン(売却益)の見込み2――「この先ますます多くの人々が新しいライフスタイル(スローライフ)に魅了されてアルパカの飼育ビジネスに参入してくるに違いない。そうなればアルパカに対する需要はもっと高まるはずだ3」という希望――によって支えられているわけだ。何ともキュートな顔をしたポンジー・スキームではないか。アルパカの輸出入には規制がかけられている関係でアメリカ国内に新たにアルパカを持ち込むことは困難となっており、このような事情も(国内のアルパカの数(供給量)を抑える役割を果たすことで)アルパカを対象としたポンジー・スキームの存続に手を貸す格好となっている。加えて、血統登録を通じてDNA鑑定を行い、「有象無象のアルパカ」との差別化を図る手立てまで講じられているようだ。血統登録はアルパカの質の改善につながると飼い主たちは思いたがっているようだが、実際のところは(高値で取引されるような)「優れた」アルパカの数を抑え、多くの人々の注目を一手に集めるフォーカルポイントを作り出すことでバブルの土壌を培う役割を果たしている可能性が高いのだ。

alpaca (1)

有名なアーティストの手になるものとして伝えられており、高い評価も得ている作品が実は贋作だったと判明した途端、その作品の価格が急落するのはなぜなのだろうか? 価格と同じだけその作品の美的な価値も急落するなんてことはあり得るのだろうか? アートを愛してやまない相棒のブロガーの意見はどうだかわからないが、私個人の意見ではそんなことはあり得ないと思う。にもかかわらず、贋作だと判明した途端にその作品の価格が急落する理由は、おそらくはアーティストの名前が(アート作品の)買い手にとってフォーカルポイントの役割を果たしているからなのだろう。買い手たちが作品を買い求める理由は作品を鑑賞することで得られる美的な喜びにあるわけではなく、それゆえ自分の好みだけに頼るわけにはいかないのだ。自分の好みだけに頼るのではなく、他人が何を買うかを予想した上で自分が買う作品を決めなければいけないのだ。あるアーティストが持て囃されるようになるそもそものきっかけについてはよくわからないが、とにかくそのアーティストが大勢の人々から注目されるようになるや、そのアーティストの名前はフォーカルポイントの地位を獲得することなり、そのアーティストの作品は日を追うごとにますます高値で取引されるようになるのだ。アルパカの血統登録もアーティストの名前と同じ役割を果たしていると言えるだろう。血統登録されているアルパカのフリースも血統登録されていないアルパカのフリースもどちらもともに同じような柔らかさであったとしても、買い手たちの注目は血統登録されているアルパカに引き寄せられることになるのだ。その結果として血統登録されているアルパカはバブルに沸くことになるのだ。

アルパカバブルもきっと近いうちに弾けるに違いない。私はそう予想する。どうしてそう考えるのかって? 鈍感な新参者たちがアルパカの正体を悟り、お金を巻き上げられそうになっている4ことに気付くのも時間の問題だと思うからだ。
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●Tyler Cowen, “The countercyclical asset, a continuing series”(Marginal Revolution, October 4, 2008)


景気の悪化に伴ってテーザー銃の売り上げが伸びているという話題をつい先日取り上げたばかりだが、テーザー銃よりもチャーミングな「反循環的な資産」の話題が飛び込んできた。

北米証券監督官協会(NASAA)の会長を務めたこともあるボーグ氏によると、かつての景気後退期においても多くの人々がチンチラや昆虫、ウサギの飼育に乗り出す姿を目にしたという。エミューの人気も高かったようだ。ボーグ氏は次のように語る。「最終的には世話が面倒になって野に放つというケースが多かったようです。ウェストテキサスのあたりを車で走っていてふと横を見ると、野放しになった大きなエミューが並走しているなんてこともあるかもしれません。」

詳しくはこちらを参照されたい(この話題に気付くきっかけをくれたJohn De Palmaに感謝)。アルパカの血統登録も順調な伸びを見せているようだ。

ペンシルベニア州のジョンズタウンで会計検査官を務めているペギー・パークス氏(49歳)はちょっと変わった家畜に目を付けた。彼女は次のように語る。「持っている株も紙切れ同然になり、個人年金(401(k))の口座もすっからかんになってしまいました。でも、このアルパカには癒されています」。パークス氏はこの小さな家畜を購入するために56,000ドルを投じたという。この家畜に秘められた繁殖力を考えれば、大抵のミューチュアルファンドに投資よりも前途はずっと明るい。彼女はそう信じて疑っていないようだ。

alpaca

  1. 訳注;2004年当時 []
  2. 訳注;買った時よりも高い値段で売れるだろうという見込み []
  3. 訳注;それにあわせてアルパカの価格はもっと高くなるはずだ []
  4. 訳注;原文は“someone is about to be fleeced”. アルパカのフリース(fleece)とのつながりで「お金を巻き上げられる(be fleeced)」という表現が用いられているのだろう。 []

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