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ガエターノ・バッソ, ジョバンニ・ペリ, アフムド・ラフマン 「移民流入がオートメイト化テクノロジーの時代における賃金分布に及ぼす影響」(2018年1月12日)

Gaetano Basso, Giovanni Peri, Ahmed Rahman, “The impact of immigration on wage distributions in the era of technical automation“, (VOX, 12 January 2018)


過去三十年間にわたり合衆国とヨーロッパの双方で賃金の二極化が見られてきたが、これと並行して進んできたのがオートメイト化テクノロジーの成長である。本稿では、移民流入が労働供給サイドに与える効果を介して賃金格差に及ぼす影響を分析してゆく。明らかになったのは、移民流入がネイティブの雇用機会と賃金の二極化を部分的に反転させることである。これは移民によって、総需要が拡大されるとともに、ネイティブが給与のよりよい業種へと移動することが可能になるところによる。ネイティブ側のミドルクラス労働市場機会の擁護をねらいとして低技能移住の縮減をめざす政策は、じつのところ真逆のことを行っている可能性がある。

雇用と賃金の二極化は過去三十年間にわたり合衆国とヨーロッパの双方で猖獗を極めてきた (Autor et al. 2003, OECD, 2017)。利得が賃金分布の2つの極 (典型的には一端に肉体労働的な対個人サービス職、他端に専門職や管理職が結び付けられる) に集中し続けるなか、賃金分布の中間に位置する労働者は雇用縮小と賃金抑制を被ってきた。これらは大学教育を受けておらず、ルーティン業務に従事する人達である。

こうした変化はすでに盛んに研究されているが、そこでは多くのばあいテクノロジー駆動型の労働需要変容に原因が求められてきた (Autor and Dorn 2013, Goos et al. 2014)。しかしながら、依然としてあまり知られていないのが労働供給サイドの事情である。平均的な教育水準の低い、国外生まれ労働者の持続的な流入は、これと同時期に進んだ合衆国労働市場における技能供給のひとつの大きなシフトを現わしている。こうした労働者はテクノロジー駆動型の労働市場シフトとのあいだでどのような相互作用を見せたのか? 構造的な労働需要ショックにたいし、外国人労働者は、オートメイト化テクノロジーの採用を進めている分野への移動でもって応じたのか? もしそうであるとして、かれらの従事する業種や特化分野は、全体的な雇用二極化に作用しているのだろうか? こうした問いに答えれば、近年合衆国のネイティブのあいだに見られる雇用機会と賃金の二極化パターンを評価するさい関連性を持つ、さまざまな含意が得られるかもしれない。

オートメイト化にたいする移民流入の反応

我々の新たな研究 (Basso et al. 2017) では、コンピュータテクノロジーの採用傾向が相対的に高く、これらテクノロジーの採用のおかげで労働生産性の上昇が最も大きかった合衆国の地域労働市場では、低技能移民を引き付ける傾向も相対的に高くなっていたことを示した。肉体労働-集約職に比較優位を持つこれら労働者は、地域経済における生産性上昇のために需要が高まっていたサービス業のブームを加速した。図1は技能分布の下端における雇用シェアの上昇について、そのほとんど全体が国外生まれ労働者層に帰し得ることを示している。これは二極化現象の極めて興味深い性格規定なのだが、Mandelman and Zlate (2014) のさきだつ指摘があるものの、関連分野では依然としてあまり注目されていない。

図 1 職の二極化 (ネイティブと国外出生者)

: グラフは雇用シェアの変化を、1980年における業種平均賃金で測定した技能パーセンタイル毎に示したものである。合衆国国勢調査データをもとに著者らが作成 (Ruggles et al., 2015)。

既存文献とも整合的だが、オートメイト化テクノロジーの価格が下がるにつれ、合衆国の地域労働市場は雇用と賃金の点で二極化を被るようになったことを我々も確認している。しかしながら、フォーカスをネイティブ労働者に絞ると、こうした観察があてはまる程度はかなり弱まり、とくに賃金分布のごくごく下端ではこの傾向が著しい。肉体労働-集約的な対個人サービスといった低賃金ポジションの増加は、もっぱら移民によって充填され、したがって結果として生ずる賃金上昇圧力は緩和されていたのである。これは、コンピュータ資本の採用が増加を続けるなかにあってなお、ネイティブに技能を更新し、給与がよりよい生産業種に参入させる圧力を生み出す一因となった。これはネイティブ雇用における 「脱-ルーティン化」 を和らげるとともに、総需要の増加をとおしてネイティブのルーティン 〔職の〕 賃金と分析 〔職の〕 賃金を底上げすることとなった。賃金分布の上端でも、移民はネイティブに人的資本投資のインセンティブを与えることで、ネイティブが専門職や管理職に参入することを可能にしたのである。

本分析では合衆国の地域労働市場 (通勤区) を観察しているが、これら地域労働市場の移民誘引力はそれぞれ異なる。この点は1980年にさきだつ過去の移民流入、そして国外生まれの人々による地域ネットワークの存在に着目することで明らかにしているが、こうしたネットワークが新たな移民の到来を促進することはよく知られている (Altonji and Card 1991)。オートメイト化の激しさによりネイティブのあいだに生じた二極化が、様々な市場をとおして同じ水準にあったのか分析したところ、移民にたいしアクセスが開かれている市場ほど、ネイティブの雇用と賃金に関する二極化も目立たなくなっていることが判明した。これはコンピュータ化駆動型の生産性成長に反応した移民流入が、多くの低賃金肉体労働職を充填するとともに、ネイティブ労働者に賃金分布の中間層に向かうよう圧力をかけ、ネイティブの技能を移民の技能で補完していたためである。

過去四十年間にわたり、合衆国は高い技能を伴う移民の相当な流入も経験したが、こうした移民にはテクノロジーの進歩にたいする貢献があった (Peri et al. 2015, Bound et al.2017, Jaimovich and Siu 2017, Waugh 2017)。とはいえこの種の流入も、ネイティブの雇用二極化を緩和するプロセスを無きにすることはなかった。内生的な有技能移住が、総需要の増加をとおし、技能を持たない移民の誘引を触発したからだ。

移民減少の帰結

今回の新たな実証成果は、移民流入が、オートメイト化やコンピュータテクノロジーの採用といった労働市場構造の長期的変化にたいし、内生的に反応していることを示唆する。本研究は政策立案者にも重要な含意をもっている。というのも、移民流入はネイティブのあいだに見られる雇用機会と賃金の二極化を部分的に反転させるからだ。これは総需要を拡大し、ネイティブに給与のよりよい業種への参入を可能にすることをとおして実現される。本研究でのシミュレーションが示すところ、ネイティブ側のミドルクラス労働市場機会の擁護を目的に低技能移住の縮減をめざす政策は、じつのところ真逆のことを行っている可能性がある。反実仮想シミュレーションにおいて低技能移住労働者の供給を減少させてみたところ、ネイティブは需要低下に直面し、給与の低い肉体労働サービスの提供を余儀なくされるだろうことが示された。ミドルクラス雇用の空洞化もさらに見過ごし難いものとなるのである。

執筆者注: 本稿で表された見解は本稿執筆者の見解であり、必ずしもイタリア銀行の立場を反映するものではない。誤記脱漏はすべて本稿執筆者の責任である。

参考文献

Altonji, J G, and D Card (2001), “The Effects of Immigration on the Labor Market Outcomes of Less-skilled Natives” in J Abowd and R Freeman (eds.), Immigration, Trade, and the Labor Market, Chicago: The University of Chicago Press.

Autor, D H, and D Dorn (2013), “The Growth of Low-Skill Service Jobs and the Polarization of the US Labor Market”, American Economic Review, 103 (5), 1553-1597.

Autor, D H, F Levy, and R J Murnane (2003), “The Skill Content of Recent Technological Change: An Empirical Exploration”, The Quarterly Journal of Economics, 118 (4), 1279-1334.

Basso G, G Peri, and A Rahman (2017), “Computerization and Immigration: Theory and Evidence from the United States,” NBER Working Paper 23935.

Bound, J, G Khanna, and N Morales (2017), “Understanding the Economic Impact of the H-1B Program on the US”, in G H Hanson, W R Kerr and S Turner (eds.), High-Skilled Migration to the United States and its Economic Consequences, University of Chicago Press, forthcoming.

Goos, M, A Manning, and A Salomons (2014), “Explaining Job Polarization: Routine-Biased Technological Change and Offshoring”, American Economic Review, 104 (8), 2509-2526.

Hunt, J (2016), “The Impact of Immigration on the Educational Attainment of Natives”, The Journal of Human Resources, forthcoming.

Jaimovich, N, and H E Siu (2017), “High-Skilled Immigration, STEM Employment, and Non-Routine-Biased Technical Change”, in G H Hanson, W R Kerr and S Turner (eds.), High-Skilled Migration to the United States and its Economic Consequences, University of Chicago Press, forthcoming.

Mandelman, F, and A Zlate (2014), “Offshoring, Low-Skilled Immigration, and Labor Market Polarization”, Atlanta FED, Working Paper 2014-28.

OECD (2017), OECD Employment Outlook 2017, OECD Publishing, Paris.

Peri, G, C Sparber and K Y Shih (2015), “STEM Workers, H1B Visas and Productivity in US Cities”, Journal of Labor Economics 33, S1 (Part 2), S225-S255.

Ruggles, S, K Genadek, R Goeken, J Grover, and M Sobek (2015), “Integrated Public Use Microdata Series: Version 6.0”, Machine-readable database, Minneapolis: University of Minnesota.

Waugh, M E (2017), “Firm Dynamics and Immigration: The Case of High-Skilled Immigration”, in G H Hanson, W R Kerr and S Turner (eds.), High-Skilled Migration to the United States and its Economic Consequences, University of Chicago Press , forthcoming.

 


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