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クルーグマン「いまの連銀に伝統的な考え方なんていらない」

Paul Krugman, “Now Is Not the Time for Conventionality at the Fed”, September 13, 2013.


いまの連銀に伝統的な考え方なんていらない

by ポール・クルーグマン

Paresh The Khaleej Times Dubai / The New York Times Syndicate

Paresh The Khaleej Times Dubai /The New York Times Syndicate

ほんの数ヶ月前のこと、オバマ大統領の大統領経済諮問委員会の委員長を以前つとめていたクリスティーナ・ローマーが、流動性の罠における金融政策の展望について、見事な講演をやった。題名は「レジーム転換が必要」(“It Takes a Regime Shift” [pdf])。

これまでに多くの人が述べているように、安全な短期金利がゼロ下限ぎりぎりに下がっているとき、中央銀行は直接的な牽引力をほとんど発揮できない。たぶん、非伝統的な資産をたくさん購入することで(「量的緩和」)、いくらかは成し遂げられるかもしれないけど、でも、中央銀行の主なねらいは予想の管理によってなにか達成するということにある――金融市場と実体経済のプレイヤーたちに、「経済が改善しても、世間がいま予想しているのより長い期間にわたって、中央銀行は引き締めを控えるぞ」ってことを信じさせるんだ。

すると、これが予想インフレと需要を高めることにつながり、いまの支出が増えるってわけ。

ただ、そうした予想の変化をあやつるのは――「無責任になりますよと信用できる約束をする」とずいぶん前にぼくが名付けた行動は――困難だ。中央銀行は、ちらっとでも経済が改善するきざしが見えたらすぐさまお金の供給を引っ込めたがっているわけじゃない、すぐに元の木阿弥にもどしたりしない、と世間に信じてもらうには、どうしたらいい?

ローマー女史の答えは、「レジーム転換」が必要だというもの――レジーム転換っていうのは、過去ときっぱり切断しているのを反映したいろんな行動をひとくくりにした呼び方だ。フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、そうしたレジーム転換を1930年代にやった。金本位制から離脱し、また一般的には、えー、ニューディールを実行したわけですわね。日本の安倍晋三首相は、いままさに、単に一見すると日本らしからぬやり方で語り行動することによって、これと似たようなことを達成しつつあるのかも知れない(成果はまだ揃ってないけど)。アベノミクスが予想以上にうまくいっているとすれば、それはほかでもなく、安倍氏がいかにもありきたりな日本の利益分配型政治家に見えていたのに、経済政策に本腰を入れ始めたらそんなことなかったからじゃないかとぼくは見ている。

ラリー・サマーズが連銀議長に指名される見込みが高まるにつれて、すでに経済に萎縮効果が出始めているのはどういうわけなのか、『ニューヨークタイムズ』の最近の記事で Binyamin Applebaum が書いているけれど、これの読み筋になるのがこれだとぼくは思ってる。ジャネット・イェレンが指名された方が、はっきりと連銀が新しくなったことが伝えられる――ライターの Garrison Keilor がかつて言ったようにたんに連銀の副議長がちがうジェンダーの人だからじゃあなくって、イェレンは強固で首尾一貫した金融面のハト派だからであり、もてはやされるようになる前からその立場をとっていたからだ。

他方で、ビル・クリントンのもとで財務長官をつとめたサマーズ氏はっていうと、たしかに公職にないときには非伝統的な見解をよく表明しているけれど、公職に就いたら伝統的な考え方に切り替えてしまう強い傾向がある。それに、歴史的なつながりを考えてみるといい:経済学者ロバート・ルービンの忠実な弟子をいまどき選ぶことほど、旧レジームが健在だってことを伝える強力なシグナルって他に想像できる?

だから、サマーズ氏を指名する決定がなされたらしいけど、それじゃあオバマ氏は反レジーム転換のシグナルを送ってしまうことになる。

さて、サマーズ氏が議長になったときには、問題を認識してくれるのを望むことができる――日本で安倍氏がやってのけたことを、自分なりにやってのける必要があるってことを認識し、人々に衝撃を与えて自分は世間が予想してたような伝統的な知見の持ち主じゃあないってことを認識させるようなことを言ったりやったりする必要がある。実際、サマーズ氏が指名されたときにぼくが与えたい助言はこれだ:「就任直後の数ヶ月を、穏やかな物腰で愛想の良い友達になって過ごしてはいけない。この経済が必要としてるのは金融のショックだ――すぐさまそれをやらなかったら、きっと2回目のチャンスはないだろう」

© The New York Times News Service


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