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クルーグマン「ものわかりいい共和党なんてわけがわからない」

Paul Krugman, “The Elusive, Fairly Reasonable Republican,” Krugman & Co., December 27, 2013.


ものわかりいい共和党なんてわけがわからない

by ポール・クルーグマン

Doug Mills/The New York Times Syndicate

Doug Mills/The New York Times Syndicate

みんさんご存じのとおり,経済学者には3種類ある.リベラルなプロの経済学者,保守的なプロの経済学者,そして,プロの保守主義者の経済学者(別名「右翼売文業者」)の3種類だ.いやいや4種類でしょう,という人がいるだろうね.実はそうでもないの――左翼はお金があんまりなくてね.この非対称性のおかげで,周知の「売文格差」が生じてる.


ともあれ,保守的なプロ経済学者のなかには,「頭のなかだけの共和党員」とでも呼べそうな人たちが含まれる.かなり道理の分かった経済学者なんだけど,政治的な幻想郷に暮らしていて,現代の共和党は自分たちみたいな人間で構成されていると夢想してる.つまり,教条にぴったり合致しない実用論的な議論も受け入れる用意がある人間たちでつくられていると思っちゃってる.こうした経済学者たちは,いわば火星から来た人間みたいなもので,この地球って惑星の政治文化がこのところどういう仕組みになっているか,皆目ご存じない.

ロナルド・レーガン大統領のもとで経済諮問委員長をつとめたハーバード大学教授のマーティン・フェルドシュタインが,その好例だろう.ある意味で,フェルドシュタインは真の共和党員だ.2009年からの拡張的な金融政策に憤怒して反対したし,当初の主張(手のつけられないインフレが生じるぞって主張)が5年あまりにわたって間違い続けてしまったいまでも反対してる.でも,彼は財政刺激の考え方には共感を示しているし,『ニューヨークタイムズ』に寄せた最近の論説では,長期的には赤字削減をするかわりにインフラ支出を通して1兆ドルの財政刺激を含む超党派の取り決めを提唱している.

で,これに何が言えるだろう? そんな取り決めなんて,共和党の指導者連中が取り合うわけがない――連中はいまだに,支出削減は拡張的だって見解に染まってる.でも,それだけじゃない.(火星でこの5年間を過ごさなかった人ならだれでもわかりきってることだけど)共和党は,赤字なんて気にしちゃいないし,これまで一度も気にしてこなかった――いつだって,あの手の話は,メディケアと社会保障制度を瓦解させるために利用するカードでしかなかった.

ぼくもマーティーと同じ火星に暮らしていたらよかったのにって思う.でも,現実はちがう.ぼくも,彼もね.

© The New York Times News Service


政治経済の空っぽな箱

フェルドシュタイン氏は完璧にふつうのケインジアンとして(正当にも)こう信じてる.「拡張的な財政政策は拡張的である.」 それと同時に,彼はこんな妄想にもはまってる.「右派で政治的影響力をもってる人間のなかには,一時的な財政刺激を支持すべきだと説得されうるような人物がいる.」

経済評論家のラメシュ・ポンヌルも,これと同じ範疇に属すらしい.この前ブルームバーグに寄せたコラムで,彼は「インフレ偏執症」を捨て去るよう共和党にもとめている――インフレ偏執症とは,これまでずっとそんな考えは間違ってきたっていうのに「連銀が経済を加速させるべくとっている方策はドルを毀損し,すぐにも手のつけられないインフレを生じさせてしまう」と共和党がいつまでたっても言い張ってることを指す.

フェルドシュタイン氏と同じく,ポンヌル氏も,共和党のなかで経済学の道理を理解できる層に向けて訴えかけている.でも,そんな層は存在しないんだよ.

下記のようなマトリックスで考えてみよう.明らかに,アメリカにおいてイデオロギー上の大きな分断があるのは,福祉国家を維持――もしかするとちょっとばかり拡大――したい人たちと,福祉国家を急速に縮小させたい人たちの間だ.それと同時に,こんな分断もある.一方には,おおむね道理のわかった経済学を受け入れる人たちがいる.道理のわかった経済学ってのは,標準的な教科書で定義される経済学のことだ.なんなら,シカゴ大学のスクール・オブ・ビジネスでいつもサーベイされている代表的とされる経済学者の集団が言ってることで定義される経済学でもいい.そして他方には,大半の専門的な経済学者がたわごとだと考える見解を抱いてる人たちがいる.

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原則としては,4つのボックス全部に相当数の政治家がいたっておかしくない:市場よりも中央での計画が優れてると信じるリベラルな政治家だとか,保守派でありながらケインズはいいところを突いてると信じる政治家とか,そんなのがいたっておかしくはない.実際にはどうかって言うと,左派のたわごと屋はアメリカ政界でとりたてて目立つ役割を果たしてこなかった.その一方で,右派のたわごと屋はいつでも立派に目立つ役割を果たしてきた.ただ,ジョージ・H・W・ブッシュ大統領〔パパの方〕の時代にまでさかのぼると――あるいは,ある程度までなら,子ブッシュの時代であっても――左下のボックスにも政治家たちがいた.

でも,いまはもうちがう.共和党トップの政策通とされるポール・ライアンは――実は数字のわかんない人だけど,これはナイショね――アイン・ランドの小説にでてくる登場人物から金融政策の着想をえている.共和党はこぞって拡張的緊縮策と差し迫るハイパーインフレ説になだれ込んだ.そして,現実に起きたことから学習した形跡はちっとも見えない.フェルドシュタイン氏やポンヌル氏に耳を傾けているのはね,リベラルだけなのよ.

© The New York Times News Service


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