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サイモン・レン=ルイス「需給ギャップを埋めるには:金融政策か、減税か、政府支出か」(2014年8月27日)

Filling the gap: monetary policy or tax cuts or government spending (mainly macro, 27 August 2014) Posted by Simon Wren-Lewis 

 

資本のないシンプルな閉鎖経済で非自発的失業の増加を伴う総需要の不足があるとしよう。我々は、民間消費(C)と政府消費(G)のどちらかの引き上げを試みるだろうか? 仮に前者を試みるなら、なぜ減税より金融政策をより好むのだろうか? その理由は?

もし民間生産財と公共生産財に対する選好が安定的なら、理想的にはC/Gの比を最適な水準に保ちたい。したがって、もし総需要の減少がCの急減で生じるなら、何とかしてCを引き上げたいと考える。実質利子率は将来消費に対する現在消費の価格なので、明らかな第一の最善政策は、Cの価格が変化して消費不足が取り除かれる実質金利を達成するよう、名目金利を設定することである。こうした考えは、金融政策を景気安定化装置として好む現代の選好の背後に入る基礎的な直観である: 私が政策割り当てのコンセンサス(the consensus assignment)と呼んでいるものの一部だ。

古典派モデルあるいは実物的景気循環モデルでは、こうした金利調節は魔法のようにひとりでに起こる。そうした調節は通常、 ’価格伸縮性’ という用語を当てにしているが、総需要の不足がどのようにしてより低い実質金利に変換されるかについてあまりよく説明できないので、やはり魔法に過ぎない。現実の世界では、「魔法使い」は中央銀行だ。注意してほしいのだが、私は金融政策と財政政策に関する実施ラグについては一切言及していない。実施ラグは、教科書において政策割り当てのコンセンサスの理由の一つとして挙げられているが、金融政策を選好する理由として私が挙げたものは、それよりもいっそう本質的な代物だ。

もし総需要の不足が技術進歩を通じた ’供給’ の増加によって 起きた場合はどうだろう? この場合でも、第一の最善政策は消費を増やす金利引き下げである。しかし、我々はまた、最適なC/G比を保つために、公共消費も増やしたいと考える。

最後に、より複雑なショックについて考察しよう――フィリップス・カーブに影響を与え、ある水準の産出・総需要に対するインフレ率を引き上げる ’コストプッシュ’ ショックについてだ。既に知られている通り、この場合我々は(負の総需要ギャップを作って)産出を減らし、インフレーションをある程度抑制する政策を求める。産出ギャップにもインフレーションにもコストがあると考えるからだ。しかしながら、こうした場合において金融政策がファーストベストなのかどうかについてはさほど明らかではない。Fabian Eser、Campbell Leith、そして私が執筆したこの論文では、ここでも金融政策がファーストベストなのであると示した。我々はいくつかの方法で(ただし、それ以外の方法は使わずに)モデルを複雑化して、金融政策だけで社会厚生が最大化されるという結果を得た。

消費下落による需要ギャップに話を戻すと、名目金利がゼロ下限で行き詰まり、金融政策が使えなくなったとしよう。民間消費を引き上げたいなら、明らかな代替手段は減税だ。もし定額税(人頭税のような、所得と無関係な税)を用いることが出来るなら、仮に消費者が減税に反応するとして、減税は極めて有効に機能するだろう。そこには二つの問題がある。リカード等価性の問題と、定額税が存在しないという問題だ。

リカード等価性が完全に成り立つ場合は、減税は消費を全く刺激しない。しかしリカード等価性が成り立たないという首尾一貫したエビデンスがある。ただ、こうしたエビデンスは、少なくとも半分、あるいはそれ以上の減税が貯蓄に回されることを示しており、このことは、消費ギャップに比して額面の点で大きい減税が必要だということを意味する。また、減税の効果の不確実性も付加される。何かしらの刺激政策パッケージのサイズにある程度の資金的制約がある場合は(しばしばそうであろう)、それによって所得効果に依存する税の変更政策に深刻なデメリットが生じる。もし資金的制約がないとしても、減税の消費刺激効果の相対的な弱さは、他の理由で問題になる。

定額税は存在しないので、ある程度歪みを齎す税(インセンティブに影響を与える税)を用いなくてはならない。これは、減税は租税の平坦化を侵害することを意味する。最善の政策は、税の歪みを一貫してキープすることだと考えられている。ある年で税率10%、他の年で税率50%とするよりも、税率30%をキープする方が好ましい。したがって、所得税減税(後には増税を行う)で消費ギャップを満たすのにはコストがある。より多くの減税が貯蓄に回されるほど、そうしたコストは大きくなる。こうしたコストのせいで消費ギャップを満たすのをやめるという可能性は極めて低い。なぜなら、失業コストはそうした不公平な税の歪みよりもはるかに重要だからだ。しかしながら、コストの存在により、実質金利変更のようなファーストベストの政策とはかけ離れたものとなる。

対照的に、あらゆる需要ギャップ埋め合わせにおいての公共支出の利用は、はるかに直截的だ。その需要面での影響と雇用面での影響が比較的予想しやすいからだ。しかし、それにもコストがある: CとGのバランスが崩れるのだ(Cに比してGが過剰になる)。Chris Houseの最近のエントリは、代替的財政刺激手段としての減税と政府支出の対立を扱っている(ノア・スミスがそれに続いてエントリを書き 、Chrisはそれに反応している )。彼の提案によれば、政府支出は、その社会的便益が社会的コストを上回るときにのみ刺激手段として用いるべきなのだという。私はそうした考えがこの問題を考えるにあたって大して有用とは思われない。私の考えでは、もっと良い考えは、需要ギャップは必ず埋め合わせられないといけないということを受け入れて(なぜなら、何もしないことのコストは極めて大きいからだ)、付帯的損害を最小化する方法を見つけ出すという事だ。それは減税ではなく、Gの追加だろう。もし財政刺激のサイズに資金的制約があるなら、そのことはほぼ確実だ。

同じような論理が、非伝統的金融政策についても当てはまるが、そのことについては別のエントリで論じよう。

 

 


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