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ジェイ・フィッツジェラルド「NBER研究ダイジェスト: 科学は葬式のたびに進歩していくのだろうか?」

[Jay Fitzgerald, “Does Science Advance One Funeral at a Time?,” NBER Digest]

スター科学者が死去すると、その科学者の分野で主流をしめる問いに分野外の人々が挑戦することがよくある。そうした人々は、他の領域で登場した新しいアイディアを活用して問いに取り組む。

それまでの研究のうえに新たな研究を積み重ねていく知識の集積は、科学の進歩にとって核心をなしている。だが、このプロセスがどう機能しているのかはあまり理解されていない。

論文「科学は葬式のたびに進歩していくのだろうか?」(NBERワーキングペーパー、No. 21788)で、Pierre Azoulay, Christian Fons-Rosen, & Joshua S. Graff Zivin は物理学者マックス・プランクのこの有名な警句を検討している。著者たちによれば、エリート科学者が早死にすると、科学的発見のダイナミックスに影響が出るという。スター科学者が早死にすると、その後、その科学者の共同研究者でなかった科学者たちがもっと目立つようになり、そのスターが活躍していた分野で論文出版数を増やしていく。こうした「新星」たちは、それまでその分野で活発でなかった科学者であることがよくある。この研究結果からは、ある特定の科学分野の部外者たちは、その分野の指導者と目されているスター科学者に挑戦するのに気後れしているらしいことがうかがえる。

著者たちは、「スーパースター研究者」の死亡前後の期間にわたって、共同研究者たちとそうでない研究者たちによる研究公表の記録を追跡した。調査範囲をしぼるために、著者たちは生命科学の学者に限定して調査している。生命科学は、国立衛生研究所に多大な研究資金提供を受けており、公表される研究は膨大な量にのぼる。著者たちは、 12,935名のエリート科学者リストを作成した。リストにのせる規準には、受け取った研究資金量、論文の被引用数、特許数、一流研究機関への所属、研究キャリアでの受賞などを用いている。次に、そうしたエリート科学者たちのうち、1975年から2003年のあいだに早死にしてしまった 452名を著者たちは検討した――ここでいう「早死に」とは、退職前や組織の長になる前に亡くなってしまうことをいう。研究公表データは国立医学図書館の PubMed サービスを利用して収集した。PubMed では、40,000万件の公表論文をもとに、研究テーマ、著者名・共著者名、被引用回数、関連論文といった情報でインデックスを付けて追跡した。

こうして得られた発見は、スター科学者の死亡後にその共同研究者たちによる論文数が大幅に(40パーセントも)減少するというもので、先行研究を裏付けている。スター科学者の共同研究者でなかった人々の研究公表活動は、スター科学者の死後に平均で8パーセント増加している。死後5年までに、共同研究者でなかった科学者たちの活動は元共同研究者たちの活動低下を完全に相殺している。「こうして新たになされた学術貢献は、非常に引用回数が多くなりやすい」ことを著者たちは見出している。「また、スター科学者の分野でそれまで活発でなかった科学者たちがそうした論文を執筆していることの方が多い」そうだ。

早死にしてしまったスター科学者はたいてい学術誌の編集者や研究資金配分の監督役をつとめていないので、早死にした科学者がみずからの影響力を利用して自分の分野で誰が論文を公表できて誰ができないかを制限したという可能性は除外される。そうではなく、著者たちによれば、分野外の研究者たちはエリート科学者が活発だった研究分野での主導権に挑戦するのに後ろ向きだったことが証拠から示唆されるのだという。スター科学者死去後に参入は生じるものの、一枚岩ではない。スターに死なれてしまった共同研究者たちは知的・社会的障壁や研究リソースの障壁の差配をとおしてその分野への参入を規制できる。

「元共同研究者たちはスーパースター死去後に苦しむこととなるが、それは必ずしも、競合する他の研究室のスター科学者に主導権が奪われるからではない」と著者たちは締めくくっている。「そうではなく、他の領域で登場したもっと新しいアイディアを利用することで、その分野の主流の問題に挑戦する分野外の研究者たちが、主に研究を加速させている――そうした新論文は、多大な貢献となっている。少なくとも、長期的な被引用回数で測ったかぎりはそうだ。」


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