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ジェームズ・ハミルトン 「原油価格高騰の経済的な影響を探る」

●James Hamilton, “Coping with high oil prices”(Econbrowser, September 01, 2013)


ジェームズ・ハミルトンはカリフォルニア大学サンディエゴ校経済学教授。大恐慌研究、金融政策、計量経済学、石油の価格変動がマクロ経済に与える影響などについての研究を専門としている。Time Series Analysis (邦訳『時系列解析』)の著者。カリフォルニア大学バークレー校にてPh. D. (経済学)取得。


過去3年間のうち多くの期間にわたって、原油価格は1バレル当たり100ドルを上回り、ガソリン価格は1ガロン当たり3.40ドルを上回る結果となっている。このような原油価格の高騰は数年前であれば多くのアメリカ人にショックを与えたことだろうが、今や「ニュー・ノーマル」(新たなる常態)となった感がある。原油価格の高騰の結果として一体何が変わり、何が変わらないままなのであろうか?

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実質的な(2013年の物価を基準として測った)原油価格(1947年1月~2013年7月):1947年から1989年までに関してはウェスト・テキサス・インターミディエイトの価格データを用いており(データの出所はFRED)、1990年から2013年までに関してはブレント原油の価格データを用いている(データの出所はEIA)。なお、それぞれCPI(消費者物価指数)を用いて実質化が施されている。

原油価格の高騰がもたらしている効果の一つとして、アメリカ国内における原油生産量の急増を挙げることができるだろう。原油生産量が急増している背後には、水平掘削・フラクチャリング(水圧破砕)の技術を用いたシェールオイルやタイトオイルの採掘が活発化している事実があるが、原油価格が2004年当時の水準に止まっていればこういった新たな技術による原油の生産は採算が合わなかったことだろう。このような新たな技術による原油生産の活況が今後どの程度続くかはわからないものの、これまでのところアメリカ国内の原油生産地における所得や雇用の増加に重大な貢献を果たしていることは確かである。

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アメリカ国内の油田における原油生産量(1981年1月~2013年5月;単位は千バーレル/日):データの出所はEIA

原油価格の高騰は、アメリカ国内のドライバーの行動(自動車登録台数と新たに購入される自動車のタイプ)にも大きな影響を及ぼす格好となっている。

car_reg_sep_13 軽自動車の自動車登録台数(アメリカ人1人当たり登録台数(赤色)、免許取得者1人当たり登録台数(青色)、1家庭当たり登録台数(緑色)):データの出所はSivak(2013)

mpg_sep_13アメリカ国内で新たに販売された軽自動車乗用車の1ガロン当たり平均走行距離(単位はマイル):データの出所はUMTRI

こうした結果として-長年にわたって石油の消費量は増加して当然だと思われていたにもかかわらず-アメリカ国内での石油消費量はここのところ着実に減少する傾向を見せている。

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アメリカ国内での原油と石油製品の販売量(1985年1月~2013年6月;単位は百万バーレル/日):データの出所はEIA

アメリカ国内での原油生産量が増加する一方でその消費量が減少しているということは、海外からの原油や石油製品の輸入の減少を意味することになる-かつてはそれらの輸入は増加して当然と思われていたものの、アメリカ国内での石油消費の動向と同様にここでもそのトレンドが反転する結果となっている-。

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過去4週間の原油と石油製品の平均粗輸入量(1991年3月8日~2013年8月23日;単位は百万バーレル/日):データの出所はEIA

原油の国際価格とアメリカ国内で生産される原油価格との価格差のおかげもあり、アメリカ国内の石油精製業者は石油精製品を輸出する上で競争上有利な立場を手にすることになった。その結果、原油や石油製品の輸出は大きな伸びを見せることになったが、今のところは上のグラフで示されている原油の輸入を凌駕するまでには至っていない。

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過去4週間の原油と石油製品の平均粗輸出量(1991年3月8日~2013年8月23日;単位は百万バーレル/日):データの出所はEIA

原油の輸入がアメリカ経済に課す経済的な負担はバレルの量(輸入される原油の数量)によってではなく原油を手に入れるために手放さねばならない資源の実質的な価値によって測られることになる。国内での原油生産の伸びとその消費の節約もあって、対GDP比で見た原油の(ドルで測った)輸入額はここ最近若干低下気味ではあるものの、10年前と比べると依然としてかなり高い水準を記録している。

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対GDP比で見た原油と石油製品のドルで測った輸入額(単位は%):原油と石油製品の輸入額のデータの出所はBEA Table 4.2.5、GDPのデータ(1967年第1四半期~2013年第2四半期)の出所はFRED

言い換えると、ここ最近における国内での原油生産の伸びとその消費の節約は相当なものではあるが、それにもかかわらず原油の輸入は依然としてアメリカ経済に対して大きな負担を課す格好となっている、と考えられるわけである。


Comments

  1. こちらの「軽自動車」ですが,Sivak論文では「light-duty vehicles (cars, pickup trucks, SUVs, and vans) 」とありますので,日本語で言うところの軽自動車とはかなりニュアンスが違うかと.バンが入るので厳密ではありませんが,「乗用車」が近いかな?

    • コメントありがとうございます。ご指摘に従いまして、「乗用車」に修正させていただきます。

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