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ジョセフ・ヒース「講義『気候変動問題』のシラバス」(2015年6月23日)

Climate change syllabus
Posted by Joseph Heath on June 23, 2015 | Uncategorized

今秋学期開始のこの講義では、環境倫理学を教える予定です。特に「気候変動問題」に焦点を当てています。本コースは3学年向けのものであり、2学年時の一般環境倫理学を既に履修していることを前提にしています。なので、このコースで基本分野を扱うことは義務付けられておらず、扱うことは少なくなる予定です。エリック・ポズナー (Eric A. Posner) とディヴィッド・ワイスバッハ (David Weisbach)1の本”Climate Change Justice“『気候変動対策の公平性』を基本の教科書として使用し、授業の進行に応じて副読本を追加する予定です。指定資料が全てではありません。私が賛成しそうなものや、議論を呼ぶような資料も追加する必要があるでしょう。ついでに、[本講義は]純粋な環境「倫理」というより、環境における「公平性」や「政策」を重視した内容となっています。

いずれにせよ、どんな追加書籍・論文であろうと、[学生からの]提案を歓迎します。ヘンリー・シュー (Henry Shue)2 、ステファン・ガーディナー (Stephen Gardiner)3 、カレン・マッキノン (Karen McKinnon)4 、ダレル・メレンドルフ (Darrel Moellendorf)5 、その他らは、お馴染みかもしれませんが、私もまだ一部しか読んでいませんので、見逃している良い事例があれば、お知らせください。あと、私はポズナーとワイスバッハの本の内容に従って講義の項目を作成しており(彼らのこの問題への体系化は非常に優れていると考えています)、この本を読んでいない場合、このシラバスは無意味なものとなるでしょう。

PHL373F:環境倫理の諸問題6
気候変動への対処:この講義では、人由来の気候変動問題に対処するための効果的な政策手段を立案するときに直面する、規範的な難問のいくつかを、学生に説明する予定です。
まず、問題の制度的な側面と主な政策手段を説明するところから始めます。そこでは、[人や政府機関等が]共同で行動する際の問題の分析、『炭素価格付け』の理論的根拠、炭素排出の削減を達成する為の主要な制度的メカニズム、等が含まれています。私たちは、そこで具現化した2つの規範的論題に焦点を合わせることになるでしょう。「環境保全はどの程度までなされるべきなのか?」と「『便益』と『負担』をどのように配分するのか?」と言った論題です。
対処するには非常に難しい問題群もあります。それは「現役世代と将来世代との、利益の調整をどのように決定すればよいのか?」とか「将来世代の排出権を決定する際に、『過去の排出量』や現時点での経済的な不平等が果たす役割をどう位置づければよいのだろう?」といったものになります。

1.総括的導入

2.コモンズの悲劇
ギャレット・ハーディンThe Tragedy of the Commons,” 『コモンズの悲劇』 Science 192号(1968年)
トーマス・シェリングミクロ動機とマクロ行動』”Micromotives and Macrobehavior”(1978年)第7章

3.規制についての理論
アフメド・フッセン (Ahmed Hussen)7Principles of Environmental Economics”『環境経済学の原則』(London: Routledge, 2000) 第5章
ロナルド・コース  “The Problem of Social Cost,”『社会的費用の問題8 Journal of Law and Economics, 3 (1960): 1-44.

4.気候危機についての序論
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第1章
ジョン・ブルーム (John Broome)9Climate Matters”『気候の諸問題』(New York: W. W. Norton, 2012),第2章

5.政策手段
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第2章

6.義務論的アプローチ
サイモン・キャニー (Simon Caney)10Climate Change, Human Rights and Moral Thresholds,”『気候変動、人権と道徳による限界』in Stephen Gardiner et. al. (eds.) Climate Ethics (Oxford: Oxford University Press, 2010), pp. 122-145.
キャス・サンスティーン恐怖の法則 予防原則を超えて』“Beyond the Precautionary Principle,” University of Pennsylvania Law Review, 151 (2003): 1003-1058.

7.実質よりもスタイルが大事
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第3章
エリノア・オストロムA Polycentric Approach for Coping With Climate Change,”『気候変動に対処するための多面的アプローチ』 World Bank Policy Research Working Paper 5095 (2009)

8.気候変動と再分配の公平性
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第4章

9.悪事を成敗する
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第5章
ウォルター・シノット・アームストロング (Walter Sinnott-Armstrong)11   “It’s Not My Fault,”『それは私の責任じゃない』in Stephen Gardiner et. al. (eds.) Climate Ethics (Oxford: Oxford University Press, 2010), pp. 332-346.

10.1人あたりの排出権
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第5章
サイモン・キャニー“Justice and the Distribution of Greenhouse Gas Emissions,”『温室効果ガス排出における公平性と再分配』Journal of Global Ethics, 5 (2009): 125-146.

11.将来世代
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第7章
デイヴィッド・ピアース (David Pearce)12  、ベン・グルーム (Ben Groom) 、キャメロン・ヘプバーン (Cameron Hepburn) 、フィービー・クローンドリィ (Phoebe Koundouri) “Valuing the Future,”『将来世代を評価する』World Economics, 4 (2003): 121-141.

12.結論と総括
エリック・ポズナー&ディヴィッド・ワイスバッハ “Climate Change Justice”『気候変動対策の公平性』第8章

※訳注:訳者による補足、註釈の文面は基本的に[]で囲っている。
※訳注:”Justice”は「公平性」と訳している。
※訳注:指定書籍・論文で、邦訳があるものは、邦訳タイトルをまず記載した後に、原題を記載している。邦訳がないものは、原題の記載後に、暫定の邦題を『』で囲った上で続けて記載している。指定の書籍・論文で、ウェブ上で確認できたものにはリンクを貼っている。
※訳注:挙がっている人名で、邦訳された人名がある場合はその記載に従っている。人名が日本で一般的で無い場合は、暫定の邦訳人名を記載した後に、アルファベット表記の人名を続けて記載している。
※訳注:書籍・論文の著者で日本語版のウィキペディアに項目がある人物は、ウィキペディアにリンクを張ることで説明を割愛している。

  1. 訳注:共にシカゴ大学ロースクールの教授。エリック・ポズナーは、「法と経済学」で有名なリチャード・ポズナーの息子である。 []
  2. 訳注:オックスフォード大学教授。政治学が専門 []
  3. 訳注:ワシントン大学教授。哲学者 []
  4. 訳注:レディング大学教授。公共政策と気候変動の研究が専門 []
  5. 訳注:ゲーテ大学フランクフルト・アム・マイン教授。政治倫理学が専門 []
  6. 訳注:PHL373Fは講義の管理コード []
  7. 訳注:経済学者。カラマズー大学経済学部教授。環境問題が専門。同名の政治家との混合に注意。 []
  8. 訳注:有名な『コースの定理』が始めて提唱された論文。邦訳書籍『企業・市場・法』の第5章に収録 []
  9. 訳注:オックスフォード大学教授。哲学および経済が専門 []
  10. 訳注:オックスフォード大学教授。政治理論が専門 []
  11. 訳注:デューク大学教授。哲学者 []
  12. 訳注:経済学者。元ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授 []

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