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ジョセフ・ヒース『Brexitに見る、イギリス断絶の諸相』(2016年06月24日)

Intergenerational dimension of Brexit
Posted by Joseph Heath on June 24, 2016 | elections, political philosophy

昨日、イギリスは、国民投票で、EUからの離脱を決定した。この投票の際立った特徴の1つが、決定的なまでの世代間の断絶である。若い人達は、EUへの残留に強く賛成していた。(ここの図表で、投票の内訳を見ることができる。図表によると、55歳以上の年齢層のみがEUからの離脱に賛成票を多く投じている。一方で、別の世論調査によると、18~24歳では75%が、EU残留に票を投じている)。年齢によってこの件への関心の示し方が、明快に断絶している。イギリスは、EUからの移民を受け入れる代償として、自国市民が、他のEU加盟国で、居住し、働く権利を得ている。この権利による便益は、年配の人より、若い人に大きいメリットとなっているだろう。([Brexit後の]事実として、[イギリスの]年金を受給している年配の人は、ヨーロッパの住みたい場所ならどこであれ、住み続けることができる。[年金受給の]カナダ人が、フロリダで生活するのと同じように。一方で、若い人は、[EU加盟国で自由に]働けなくなることで、移動が制限されていると、感じるようになるだろう)。

公平さにおける重要な議論が起こっていると、人によっては感じているかもしれない。年配のイギリス人は、自身の若い頃のイングランドを維持する為に、結果的にであるが、投票を行ってきた。この年配者の投票行動は、イングランドで生活せねばならない将来世代への、無関心さを事実上表明してしまっている。([この年配者の投票行動は]イングランド(とウェールズ)が、強く意思表示を示してきたことと同義でもある。Brexitは結果的に、スコットランドの独立と、アイルランドの統合及び北アイルランドの[英連邦からの]分離を強く促す事にもなる1 )。もうすぐいなくなる高齢者が、結果的であれ、[投票で]強い存在感を示しているように感じられる事は、[投票による]発言権の平等の在り方として正しいのだろうか?

フィリップ・ヴァン・パレースによる、論文『高齢者の投票権剥奪、及び世代間の公平性確保への代替の諸提案』は非常に価値がある論文だ。この件[高齢者の強くなりすぎた投票による権力行使]に関して、彼は問題提起を行っている。彼が喚起している論点は、深刻に捉えられるべきであるのに、あまり関心を払われていないように、私には感じられる。もちろん、高齢者の投票権剥奪のアイデアを、そのまま検討するのは、あまりに非現実的だ。しかしながら、高齢者の投票による権力行使を減じさせる方法は、いくつか存在する。このいくつかの方法を取ることで、投票権剥奪を行わずに、[高齢者の強くなりすぎた投票による権力行使]を止めることが可能だ。ヴァン・パレースが検討している中で、一つの魅力的な提案が、子供も含む全年齢への選挙権の付与である。もちろん、[選挙権を与えられた]未成年者は、18歳になるまでは、両親や保護者が代理で投票権を行使することになるだろう。この提案が実現すると、幼い子供を持つ親は、1票以上の投票数を得ることになる。

この提案を政策として実施するのは、私には実現可能なものに思えるし、政策理念への反論は今のところ見聞きしていない。イギリスにおいて選挙制度の改革について論じるのなら、この提案を検討してみてはどうだろうか?

※※訳注
訳者による補足、註釈の文面は基本的に[]で囲っている。

  1. 訳注:イングランドの全投票者に占めるイングランドとウェールズの割合は非常に大きく、これら2地域はEU離脱への賛成票が多かった。逆に、スコットランドと北アイルランドはEUへの残留を望む投票結果を示している。スコットランドと北アイルランドの主要産業である農業はEUとの経済的繋がりが、非常に強い。 []

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