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スコット・サムナー「学術界がマーケット・マネタリストにどんどん追いついてきてるな」

Scott Sumner “Academics are rapidly catching up to market monetarists“(TheMoneyIllusion, March 31st, 2014)


マーケット・マネタリストは次のことを繰り返し述べてきた。

  1. QEは危険ではなく、QEを止めることが危険。
  2. アベノミクスは実質GDPと名目GDPを緩やかに押し上げる。
  3. 名目GDP目標は労働市場を安定化させるだけでなく、信用市場の変動も抑える。

以下はThe Economist誌からの引用だ。

Fedが債券買い入れのペースを落としている理由のひとつに、市場バブルに対する恐れがある。ハーバード大学のガブリエル・チョドロウ=ライヒによる新研究は、2013年以降、バーナンキ氏を含む連邦準備理事会理事の理事は、金融セクターのリスク引き受けの増大に対する懸念をQEの縮小の理由として記している。彼らの心配は理解できるものだ。低金利のさなかにあった銀行が、よりリスクの高いプロジェクトへ貸出を行ったり利益を改善するためにレバレッジを膨らませることによって、「利回りを探求した」2000年代中盤の際の教訓を中央銀行家は依然として恐れているのだ。その後に起こった金融危機以降の5年間でリスクは低下したが、一部の人間はリスク探求モードに再び陥ってしまうことを恐れている。

しかしこうした心配はより綿密な監査によって小さくなっており、チョドロウ=ライヒ氏もそれを示している。彼はQEと銀行や生保会社のリスクとの間の繋がりを調べるため、2008年から2013年にかけてのFedの14の発表に対する市場の反応を検討することから始めた。分単位のデータを用いて各声明の前後のわずかな時間を取り出すことで、チョドロウ=ライヒ氏はリスクに対する市場の見方を測定した。彼によると、QEの延長は破たんする銀行あるいは保険会社からの影響を保護するための債務不履行保険の費用の低下と関係している。したがって、中央銀行が心配しているとしても、市場はQEを心配してはいないのだ。

そしてもうひとつ

そして大胆な金融政策には大きな利点があることを、ミシガン大学のジョシュア・ハウスマンとカリフォルニア大学サンディエゴ校のヨハネス・ウィーランドによる日本の「アベノミクス」に関する新論文1 が示唆している。日本の金融緩和は巨大なもので、新たな2%のインフレ目標、無制限の資産購入、マネーサプライの倍増を伴うものだ。多くの人はしかしながら、これは上手くいかないだろうと懸念していた。日本の停滞は十年単位で続いており、QEは既に試みられていたからだ。2001年から2006年の間に、日本銀行は貸し手が保有する現金をQEによって5兆円から約35兆円まで増やしていた。しかし大したことは起こらなかった。インフレ率はゼロより上のところをゆっくりと動いたが、政策決定者は金利を尚早に引き上げてしまった。2012年に安倍氏が首相に就任するまで、物価は年間0.1%ずつ下落し、経済はずるずると横ばいだった。
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しかしハウスマンとウィーランドの両氏によれば、アベノミクスは日本のGDPを最大1.7%押し上げたという。そしてそのうち最大1パーセント・ポイントは金融政策によるものだ。市場への効果ははっきりとしている。この政策が発表されると、株価指数は跳ね上がり為替レートは急速に下落した(左側の図を参照2 ) 。マネーサプライ――銀行貸出が増えるにつれて増加する広義の貨幣集計量――への影響は以前のQEの試みよりもずっと強いものであった(右側の図を参照)。

この差異を説明するのはインフレ期待だ。アベノミクスは一時的な押し上げとしてではなく、政策の永続的な変更として発表された。物価は一定ではなく、年間2%で上がり始めるだろうということを人々はすぐさま予期した。長期のインフレ予測もまた上昇してきている。これは以前よりも借り入れが容易なものに映り、買い物客にとってはより多くの支出を行うという信頼を与えるものだ。しかしながら、日本経済は依然として弱々しい。金融政策の大胆さについてのコミットメントを強化することによって、日本経済は上向くことになるだろうと両氏は述べている。

私の言える限りのこととして、日本の年間インフレ率(CPI)は去年の11月にアメリカのインフレ率を越えたが、これはここ40年近くで初めてのことだ(1997年に日本が国内消費税を引き上げた3 後の数か月の間の期間は除く。)しかしこの目論見は、水準目標ではないことから依然として弱点を抱えている。再度デフレに転落しないことを保証するために、日本にはさらにやるべきことがあるのだ。そしてそれをやらない理由なんてあるだろうか。予測されていた良いことは全て起こっていて、批判者が懸念していた悪いこと(日本国債利回りの上昇など)は一切起こっていないというのに。これはタダ飯なのだよ。世界がタダ飯を御馳走してくれる4 というのであれば、東京のすきやばし次郎5 で好きなだけかっ食らうべし。

より過激な選択肢もある。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのケヴィン・シーディは、インフレ目標に代えて名目GDP目標とすることで有益な結果が得られる可能性があると考えている。ふつう中央銀行はインフレ率に焦点を当てる。これが支払い価値を安定するのに役立ち、そうしなければ物価の上昇によって支払い価値が損なわれてしまうからだ。しかし労働者が直面する固定契約6 は賃金だけではない。彼らの債務もまた固定されているのだ。所得を減少させるようなGDPショックが労働者の債務負担を大きく跳ね上げる場合があることをこれは意味している。

名目GDPに焦点を当てている中央銀行が有用となる、とシーディ氏は述べる。物価を押し下げずにGDPを引き下げることが多い供給ショックを考えてみてほしい。名目GDPを目標としている場合、インフレを発生させて債務やGDPの価値を一定に保つために経済を刺激し、より大胆な政策をとる。このような変更を金融政策の制度へと組み込むには、多くの障害を越えなければならないだろう。しかし家計の債務所得比率は、1990年代初頭のインフレ目標草創期にはずっと低いものだった。今日の高債務世界においては、名目GDP目標はより魅力的なものとなっている。

こうした研究がどの程度の影響を及ぼすかについては、今後を見守る必要がある。

いくつかコメントを。

この3つの論文は全て、権威あるシンクタンクであるブルッキングス研究所によって発表されたものだ。

ベン・バーナンキはつい最近ブルッキングス研究所に入った。

マーケット・マネタリストが勝ちを収めているにもかかわらず、我々はその栄誉に浴してはいない。しかしそれはいつものことだ。重要なのはアイデアが採用されることだ。小さな研究所の非主流研究者グループに関連付けられていないほうが、このアイデアが尊敬を得るために良いなら、私たちマーケット・マネタリストたちは完全に無名のままでありたいと私は思う7

追記:ベントレー大学8 女子バスケットチームの国内チャンピオンシップ(第二地区)優勝おめでとう。そして4強に残ったウィスコンシン大学(私の母校だ)にも。

追追記:ニック・ロウに対するコメントとなっている乗数に関する記事をEconlogに載せた。

  1. 訳注;この論文については、ベックワース(リンク先はhicksian氏による邦訳)が詳細にコメントしているので参照のこと。 []
  2. 訳注;サムナーの引用文に図は含まれていなかったので付け加えた。 []
  3. 訳注;原文では導入した(instituted)となっていたので、事実関係から見て訂正した。 []
  4. 訳注;タダ飯などない(There ain’t such thing as a free lunch)、つまりあらゆるものには何らかの代償が伴うという言葉を念頭にしている。ここでは何も悪いことなしに良い結果を得られるという意味。 []
  5. 訳注;当初ラーメン二郎と訳していたが、すきやばし次郎のことであると思われるので訂正した。 []
  6. 訳注;一定の名目金額で支払うことになっている契約 []
  7. 訳注;MMが市民権を得るためであれば、その栄誉をブルッキングスという大研究所に喜んで譲ろうという趣旨。 []
  8. 訳注;サムナーの勤務する大学 []

Comments

  1. 「このアイデアが尊敬を得るための貢献が小さな研究所の非主流派研究者グループに関連付けられていないのであれば、私たちマーケット・マネタリストたちは完全に無名のままであって欲しいと私は思う。」

    「小さな研究所の非主流研究者グループに関連付けられていないほうが,このアイデアが尊敬を得るために良いなら,私たちマーケット・マネタリストたちは完全に無名のままでいたい。」
    かもしれません.

    • 全くおっしゃるとおりです。ほぼそのままの形で修正させて頂きました。ありがとうございます。

  2. 森岡のおっさん says:

    サムナーも二郎知ってるんだwwwww

    • 既に本文を修正させて頂いてますが、後から思い返してみるとサムナーの言っているJiro’sはすきやばし次郎のことだと分かりました。申し訳ありません。

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