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タイラー・コーエン「仮想通貨Fedコイン採用のススメ?」

Tyler Cowen “What would Fedcoin look like?” (Marginal Revolution, February 26, 2014)


熱心な読者のひとりであるJWがこんな文章を送ってきてくれた。

時は2018年、ジャネット・イエレンはその第一任期において堅実な成長と低インフレ率を達成したことで、ウォーカー大統領によりFed議長の職に再任された。しかしながら、そうした成長を達成するために、イエレンは超低金利を維持せざるをえなかった。そして災厄がやってくる。フランスが突如としてユーロを離脱し、世界的な信用収縮を招くのだ。これは2008年の完全な再現だ。ウォーカー大統領はどのような刺激策もとろうとはしない。イエレンはレジーム変更がFedにおいては必要だと考えるのであった。

MMT1 、ケインズ、バーナンキの主張を胸に、イエレンはお金を瓶詰にして埋めるというケインズのアイデアと、空からお金をばらまくというバーナンキのアイデアを融合させる。アメリカが独自の暗号通貨を創設することをFedはアナウンスし、それは国内の規制預金取扱機関であればどこでもドルと交換できるものだという。そうした換金を行うにあたって銀行から課される手数料は、ゼロあるいはごくわずかだ。その通貨はビットコインと正に同じように設計され、分散的でマイニングアルゴリズムに依っている。アメリカ市民はビットコインを発掘し、そのためにビジネスを生みだし、人々を働かせることができる。ビットコインとは異なり、ドラーコインの供給は有限ではなく、2100万という上限はない。その代わりに、ドラーコインは20兆ドルの名目GDP水準目標2 と整合的なインフレ率で成長すると目標づけられる。流動性は復活する。量的緩和は全く必要ない。ビジネスニュースは、ドラーコインをイエレンコインと呼んで応援を始める。

それと同時に、ビットコインの価値が暴落する。今やアメリカ政府が暗号通貨を用いることになったおかげで、ビットコインの利点は消滅するのだ。ビットコインの価値に対する人々の信念は立ち消え、不安に変わったことで、ビットコインは崩壊した。アフリカやラテンアメリカにいる親族への送金は今やイエレンコインによって行われ、それは人々がわずかな間ビットコインで行っていたのとちょうど同じだ。

なんでこの話がとても実現しそうにないのかを考えるのは興味深い。理由はいくつかある。

1.イエレンコインは支払手段とはなるだろうが、計算手段にはならないだろう。これは経済をGirton and Roperが言うところの通貨代替モデル3 へと移行させるだろうが、直接的な金融緩和効果はない。

2.暗号通貨は、ある特定の類の取引に使われる可能性がそれ以外の用途と比べて遥かに高い。なので暗号通貨を作り出すという「金融政策」行動は、ものすごく非中立的なものになるだろう。

3.中央銀行は大きなリスクを抱えたり、何らかの既存秩序を打倒するものとはされていない。中央銀行は人々からの評判に関して非常にリスク回避的で、作為の罪よりも不作為の罪を強く好む4 。もしFedがFedコインを作り、それによって何か悪いことが起きてしまうと、彼らはとりわけても重い非難にさらされることになる。その一方で、暗号通貨を作らなかったことで彼らを非難する人はほとんど(例外はいるだろうか?5 )いない。

  1. 訳注;Modern Monetary Theory(現代金融理論) []
  2. 訳注;アメリカの2013年の名目GDPは16兆ドル程度 []
  3. 訳注;同論文では、通貨代替、すなわち独自通貨を発行している国において他国の通貨が支払い手段として用いられるような状況(例えばアジア諸国などでの買い物でドル払いできてしまうような状況)においては、その代替率に応じて金融政策の効果に影響がでることを論じている。 []
  4. 訳注;何かして怒られるよりも、しなかったことで怒られるほうがずっと良いと考えているという意。 []
  5. 訳注;リンク先の画像はフィナンシャルタイムズのイザベラ・カミンスカという記者で、ビットコイン好き。過去には公的機関による電子通貨発行を支持するエントリも書いている。 []

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