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タイラー・コーエン 「イギリスの図書館で一番借りられているのはどの作家の作品?」(2010年2月14日)

●Tyler Cowen, “What are the most borrowed books from UK libraries?”(Marginal Revolution, February 14, 2010)


2008年~2009年の1年間のデータによると、(イギリス全土にある図書館での年間での貸出回数が多かった順の)上位4作品のうち3冊はジェイムズ・パタースン(James Patterson)の作品とのこと。イアン・ランキン(Ian Rankin)だとかルース・レンデル(Ruth Rendell)だとかの作品の名前も垣間見える。ダン・ブラウン(Dan Brown)の作品は出てこないようだが、おそらくあまりにもたくさん買われてしまったか読み終わられてしまったかしたんだろう。前年度のブッカー賞の最終候補に残った6作のうちでランキングに名を連ねているのは・・・、一作も無いようだ。

長年にわたり1位(イギリスの図書館で1年間に作品が貸し出された回数が一番多かった作家)の座を守り続けてきたのはキャサリン・クックソン(Catherine Cookson)。しかし、アメリカの人気作家勢の激しい追い上げに屈して首位の座から陥落。クックソンの順位は(2000年代の)10年間の総計で測っても第10位にまで下げているようだ。2000年代の10年間の総計で第1位の座に君臨する作家は誰かと言うとジャクリーン・ウィルソン(Jacqueline Wilson)とのこと。それにしても何とも妙な栄冠ではある。「買うほどの価値は無いが、読む価値はある」というわけだから。

全体的な傾向として言えることは、ノンフィクションは「図書館で借りられた回数」ランキングでかなりの苦戦を強いられているということだ。その理由については個人的にこうじゃないかなと思う仮説がある。多くの人は本音のところでは大衆的で接しやすいフィクションを「読みたい」と思っている(それゆえ、買われもするし図書館でも借りられる)が、ノンフィクションは買われはしても読まれはしない。ノンフィクションを「買う」(私物として所有する)のは何のためかというと、その作品の著者なりその作品が体現している概念(アイデア)なりと一体になる気分を味わう(そしてその様子を周囲に見せびらかす)1ためなのだ。

ところで、「本を借りる」面々は「本を買う」面々に比べると保守的な傾向にあるようだ。「保守的」というのは文字通りの意味だ。すなわち、図書館の利用者(「本を借りる」面々)は同じ作家の作品(ただし、同じ作品ではなく同じ作家の別の作品)を繰り返し借りようとする傾向にあるようなのだ。

この話題は(いつもいい仕事をしている)Literary Saloon経由で知ったものだ。感謝する次第。

  1. 訳注;()内は訳者による挿入。コーエンは似た話題を扱ったこちらのエントリーで次のように述べている。「本を買いはするけど読まない。本を図書館で借りはするけど読まない。どっちがありそうだろうか? うぶな経済学者であれば後者に軍配を上げるかもしれない。本が無料で手に入る(借りられる)場合の方が(本を読んでもいないのに読んだふりをする)嘘吐きは増えるんじゃないかというわけだ。「いや、逆だろう」というのが私の考えだ。無料で手に入れた(借りた)本を家に持ち帰ってもシグナリングの効果は大して期待できない。本棚に分厚い本が並んでいたら隣人に強い印象を与えることができるかもしれないが、それはあくまでもあなたが身銭を切ってその本を手に入れねばならない(買わねばならない)場合に限られるのだ」。つまりは、本を図書館で借りるのは主に読むためであり、本を買うのは主にシグナリングのため(周囲に見せびらかすため)というわけだ。このあたりの話については本サイトで訳出されている次の記事もあわせて参照されたい。 ●タイラー・コーエン 「本を買う理由は?【イギリス版】」(2017年12月12日) []

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