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タイラー・コーエン 「スーパーマンのマクロ経済学」

●Tyler Cowen, “The macroeconomics of Superman”(Marginal Revolution, June 7, 2006)


今年の夏1スーパーマンが再び我々の前に戻ってくる

そこでスーパーマンの復帰を記念して(?)、あの利他的で清廉潔白なスーパーマンが現実に存在すると仮定して次のような問題を考えてみることにしよう。スーパーマンにはマクロ経済の活性化に向けて手を貸してもらうとしよう。さて、そのためには彼にどのような仕事に取り組んでもらうべきだろうか? 彼は強力なパワーの持ち主であり2 、物凄い速さで空を飛ぶことができ3、ひと飛びで高層ビルを飛び越せるだけの跳躍力を備えており、はるか遠くのものまで見通せる驚異の視力にも恵まれている。さらに、彼はアインシュタインの相対性理論の枠外にある存在であって、光速に近い速度で移動するにもかかわらず時間の遅れを経験することもない(スーパーマンがこれまでに成し遂げた成果の中で何が最も印象に残っているかと尋ねられたら、私は真っ先にこの点を挙げることだろう)。

スーパーマンには邪悪な狂人たちからこの世界を救う任務を遂行してもらうべきだとの意見はその通りだろう。しかし、こと日常的な犯罪に関しては彼の手を煩わせるだけの価値があるとは思われない。というのも、犯罪行為を防止するための投資(例えば、強盗を予防するための鍵への投資)は非効率的ではあるものの4 、仮にスーパーマンが犯罪の取り締まりに乗り出すことで鍵への投資が減ったとしても成長率に目を見張るほどの違いが生まれるとは思われないからである。また、(テネシー州の)メンフィス上空が飛行機で混雑している際にフェデックス(FedEx)に代わってスーパーマンに物流の仕事を務めてもらうというのも同様に馬鹿げているだろう。

ところで、スーパーマンは普段は「クラーク・ケント」として新聞社に勤めているわけだが、新聞記者という仕事は果たして普段の彼に適した仕事だと言えるだろうか? 少なくとも新聞記者はコピー(再生産)するのが容易な(reproducible)財(記事)の生産に携わる職業だと言えるが、おそらく彼はシャーウィン・ローゼン(Sherwin Rosen)の論文(”The Economics of Superstars“)を読んだことがあるに違いない5

(マクロ経済の活性化のために)スーパーマンに取り組んでもらうべき仕事の候補を私なりにリストアップすると以下のようになるだろうか(ダルフール紛争など彼に解決してもらいたい問題はあるが、そのような問題はひとまず脇に置いておくことにしよう)。

1. 研究一筋の科学者になる

2. Fed(をはじめとした中央銀行)のためにデータを収集する

3. 名目賃金を引き下げるべき状況6 が到来したら空中を駆け巡ってその旨(「名目賃金をカットせよ!」)を人々に伝えて回る。

4. テレビに出演してド派手なスタントを披露し、誰もが知る超有名なセレブになる。そしてセレブとしての地位を存分に利用して経済学のリテラシーを身に付けることがいかに重要であるかを説いて回る;これはダニエル・クライン(Daniel Klein)が候補に挙げたものだ。

読者の皆さんのお考えはどうだろうか? どのような仕事を候補に挙げるかによって読者自身がどの分野で大きな見返りが見込めそうだと判断しているか7 が明らかにされることだろう。

  1. 訳注;2006年の夏 []
  2. 訳注;一説によると、機関車よりも力がある []
  3. 訳注;一説によると、弾丸よりも速いスピードで移動する  []
  4. 訳注;例えば、強盗という行為は(財産の持ち主から強盗へ向けて)強制的に富の移転を図る行為であり、それゆえ強盗という行為は富の増大に貢献することのないゼロサムゲームであると言える。しかしながら、強盗ならびに強盗を予防する行為(鍵への投資)のために用いられた資源や労力がそれとは違うかたちで行使されていたとすれば富の増大につながっていたかもしれず、そういう意味で(富の増大につながる機会が見逃されているという意味で)強盗とそれを予防するための鍵への投資は資源の非効率的な(=ネガティブサムの結果を招く)利用法ということになる。ちなみに、富の移転を狙う強盗行為とその予防に向けた行為(鍵への投資)は各企業がレント(政府によって与えられる特権)の獲得を目指して競合し合うケースと同様にネガティブサムの結果を招くという点はレントシーキングの概念を初めて提示したと言われているゴードン・タロックの論文(pdf)でも指摘されている。 []
  5. 訳注;インターネットなどのテクノロジーの発展に伴って財や(パフォーマンスを含む)サービスの追加的な生産に伴う費用が低下すると、才能のある人物が一人勝ちする状況(莫大な報酬を手にする機会)が生まれることになる(例えば、歌手のパフォーマンスをインターネット等を通じてどこにいても容易に視聴できるようになると、一流の歌手に人気と収入が集中する傾向が生まれる可能性がある)。詳しくはロバート・フランク/フィリップ・クック著『ウィナー・テイク・オール-「ひとり勝ち」社会の到来』などを参照してもらいたいが、ここではクラーク・ケントことスーパーマンはこの一人勝ち市場の構造を見抜いた上で(優れた才能に対して大きな報酬の見返りが得られる可能性のある)新聞記者という職業を選んだのだと言いたいのだろう。 []
  6. 訳注;名目賃金の下方硬直性が原因で景気後退が発生した場合など []
  7. 訳注;あるいは、マクロ経済の大きな足かせとなっている問題は何であると読者自身が判断しているか []

Comments

  1. 全く意味がわからないのですがw

    • コメントありがとうございます。
      あくまでも私は翻訳しただけなので原著者の真意はわかりませんが、おそらくポイントは一番最後の「どのような仕事を候補に挙げるかによって読者自身がどの分野で大きな見返りが見込めそうだと判断しているかが明らかにされることだろう。」というところにあるんでしょうね。「スーパーマン」という話題にかこつけて、本当のところは読者が考えているマクロ経済上の問題は何であり(経済成長率が低い/失業率が高い/格差が広がっているなどなど)、その問題をもたらしている要因は何と見なしているか(経済学者の研究が遅れている、価格の調整がなかなか進まない、一般国民が経済学を知らなすぎるなどなど)をあぶり出そうというのが目的なのかもしれません。スーパーマンのような超人がいて何でも解決してくれるとして、「私ならスーパーマンにAという要因の解決にあたってもらいたい」と考えているとしたら、その人はAという要因がマクロ経済上の問題をもたらしている根源だと考えている、ということになるんでしょう。

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