●Tyler Cowen, “Should we subsidize or tax research into time travel?”(Marginal Revolution, January 9, 2011)
政府は、(時間旅行を可能にする)タイムマシンの開発に助成金を出すべきだろうか? それとも、税金を課すべきだろうか? ただし、助成金を出すにしろ、税金を課すにしろ、政府の予算には何の変化も生じないように埋め合わせがなされるとしよう [1] 訳注;助成金を出す場合は他の政府支出が同じ額だけ減らされ、税金を課す場合は他の税金を減税して税収を一定に保つ。。つまりは、景気変動を安定化するための財政政策という側面を持たせないようにするわけだ。あるいは、こう考えてもいい。あなたが全人類の安寧を願う慈悲深い慈善家で、身銭を切らないかたちでタイムマシンの開発を支援できる何らかの手があるようなら、その手を使うべきだろうか? それとも、どうにかしてタイムマシンの開発を阻止しようとすべきだろうか?
時間旅行の根底にある科学的な原理はまだ大して理解されていないと思われるが、昔のSF映画の中で描かれているそのままに事が運ぶ可能性もなくはない。つまりは、あなたがタイムマシンに乗って時間旅行をすると、歴史の流れが変わってしまい、そのせいであなたがこれまで(生まれてからタイムマシンに乗り込むまでの間に)慣れ親しんできた世界がどこかに消え失せてしまうことになるかもしれない。歴史の流れがいい方向に変わる可能性もなくはないが、元いた世界が失われてしまう可能性があるというのは時間旅行に備わるネガティブな面の一つにカウントしたいというのが私の考えだ。
時間旅行に備わるポジティブな面に話を移すと、将来的にいつの日か人類が何らかのかたちで滅亡するようなことがあるようなら、タイムマシンはそのような危機から逃れる安全な避難場所を用意してくれる可能性がある。小惑星が地球に衝突しそうになるたびに、タイムマシンに乗って数日前あるいは数十年前にタイムスリップすれば、地球に小惑星が衝突する瞬間を永遠に迎えずに済む。不死を可能にする(あるいは、コンピューター上に脳の情報をアップロードする)テクノロジーが将来的に開発されて、過去にタイムスリップする際にそのテクノロジーも一緒に持っていくことができるようなら、人類滅亡の危機が迫るたびに過去へのタイムスリップを繰り返すことの魅力はなお一層高まることだろう。
まとめると、こういうことだ。地球最後の瞬間に立ち会うはずだった人類の多くがタイムマシンのおかげで不死の命を手に入れる可能性――不死の人類が誕生する可能性――がまず一方であり(過去へのタイムスリップを繰り返しているうちに、小惑星の軌道をずらして地球への衝突を回避する術が見つかる可能性もある)、タイムマシンに乗って時間旅行をするせいで歴史の流れが変わってしまう可能性――元いた世界とは別の世界が生み出される可能性――がもう一方であるわけだ。
それでは、再び問うとしよう。タイムマシンの開発に助成金を出す(タイムマシンの開発を後押しする)べきだろうか? それとも、税金を課す(タイムマシンの開発を妨げる)べきだろうか?
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●Mark Thoma, “The Economics of Time Travel”(Economist’s View, September 29, 2007)
タイムマシンを作るためには、一体どれくらいの費用がかかるのだろうと疑問に思ったことはないだろうか? 「ある!」とお答えの御仁に、耳寄りの情報だ。
“Time machine possible says professor, Gold Coast News” [2]訳注;リンク切れ。代わりに、例えば次の記事を参照されたい。 ●“Time travel may be possible but won’t be economical”(Phys.org, October 8, 2007)/“Time … Continue reading:
未来へのタイムスリップを可能にするタイムマシンは、最早SFの世界の中にだけ存在する空想上の機械ではない。ただし、あなたがタイムマシンを作ろうとするなら、途方もないお金持ち(兆万長者のさらに上)でないといけない。
そう語るのは、オーストラリア国立大学で相対性理論と量子力学を教えているクライグ・サベッジ(Craig Savage)博士だ。未来にタイムスリップするのは技術的には可能だが、タイムマシンに乗って未来へタイムスリップしようとすると莫大な費用がかかるというのだ。
サベッジ博士は語る。「光速の4分の3のスピードで移動する宇宙船を作ることができたとしましょう。その宇宙船に乗って移動している最中は、常に1時間先の未来にタイムスリップする計算になります」。
そのような宇宙船はこれまでにいくつも設計されているが、いざ実際に作ろうとすると、想像もつかないほど莫大な費用がかかってしまうという。「障害になっているのは、技術的な問題ではなく、金銭的な問題なのです」とサベッジ博士。
サベッジ博士の推計によると、タイムマシンを動かすためには、10兆ドル単位の電気代がかかる計算になるという。
References
↑1 | 訳注;助成金を出す場合は他の政府支出が同じ額だけ減らされ、税金を課す場合は他の税金を減税して税収を一定に保つ。 |
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↑2 | 訳注;リンク切れ。代わりに、例えば次の記事を参照されたい。 ●“Time travel may be possible but won’t be economical”(Phys.org, October 8, 2007)/“Time Travel – Is It Possible?”(Catalyst, February 14, 2008) |