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タイラー・コーエン 「マイケル・ウッドフォードはなぜQEの縮小を支持しているのか?」

●Tyler Cowen, “Why Michael Woodford supports monetary tapering (Kaminska wins)”(Marginal Revolution, September 13)


エントリーのタイトルに掲げたように、なぜマイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)はFRBによるQE(量的緩和)の縮小(tapering)を支持しているのか1 と私自身疑問に思っていたのだが、マシュー・クライン(Matthew Klein)がこの疑問への回答のヒントとなるような大変優れた記事を書いている-今後も同様にこの種の優れたレポートが伝えられることだろう-。クラインの記事から一部引用することにしよう。

----------(引用ここから)-----------

ウッドフォードにとって最も重要なポイントは、たとえインフレが低い水準にあり失業が高止まりしていたとしても、Fedによるバランスシートの拡大の継続には金融システムやマクロ経済に対するコストの発生が伴う、ということである。彼からの電子メールの中ではそのコストとは具体的に何なのかについてはっきりとは語られていないが、昨年彼がジャクソンホールシンポジウムで発表した論文(pdf)の中にその候補を見出すことができる2

(適切に定義された)「安全資産」(“safe assets”)の稀少性が増すことで安全プレミアム(safety premium)が上昇することになれば、経済厚生の低下がもたらされることになるだろう。国債がその保有者に(準備預金を含む)他の資産にはない(安全性や流動性といった)有用なサービスを提供しているとすれば、市中における国債の量が減少することはそのような有用なサービスから得られる便益の縮小を意味することになるのである。

言い換えると、国債は貯蓄家(資産の保有者)に対して他の資産にはない有用なサービスを提供している、というわけである。Fedの行動を通じて国債の価格が上昇することになれば-あるいは、Fedの買いオペを通じて市中における国債の量が減ることになれば-、FedによるQEはマクロ経済に対して大した刺激をもたらさない一方で貯蓄家に対して害を及ぼす格好となる、というわけだ。加えて、新規国債の発行が少ないことでこれまでにレポ市場に混乱が招かれる結果ともなっている。

Fedも同じような意見を持っているのではないかとウッドフォードは考えているようだ。彼からの電子メールでは、QEの縮小ペースはマクロ経済の状態如何によってではなくFedのバランスシートのサイズ(規模)によってもっぱら決められることになるだろう(し、そうなるべきだ)、と語られている。

Fedの高官らは、春の段階ではQEの縮小に踏み出すのは時期尚早だと認めながらも、今年の後半ともなれば債券の購入ペースを縮小すべきタイミングがやってくるかもしれないと示唆していますが、どういった理由でそのような判断が可能となっているのでしょうか? 私の意見では、今年の後半までに労働市場の状況がどうなっているかを自信を持って予測できるからこそそう判断しているというよりも、今年の後半までにFedのバランスシートの規模がどのあたりの水準にまで達するかをかなりの確度で予測できるためにそう判断しているのだと思います。この先経済の状況を巡って不測の事態が起こらなければという条件は付きますが、今年の後半がやってきた段階でバランスシートをそのままさらに拡大させ続けてもよいものだろうか、とFedの高官らは考えているのでしょう。

「ハト派」として知られる人物が自らの立場に反することなくQEの縮小を支持することは可能だということを今回のレポートがうまく説明できていればと願うばかりである。

----------(引用ここまで)-----------

クライン自身のコメントとウッドフォードのコメントとをはっきりと区別できるように、インデントの使用は避けさせてもらった。

なお、担保不足の問題に関するイザベラ・カミンスカ(Izabella Kaminska)の考察もあわせて参照するべきだろう。

  1. 訳注;この点については以下の記事を参照のこと。「世界の中銀変えた理論、生みの親は「無名」のエコノミスト」(ブルームバーグ、2013年9月10日) []
  2. 訳注;元の記事では論文からの引用ページ数は明示されていないが、pp.66~67からの引用 []

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