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タイラー・コーエン 「独裁者の地位の継承にまつわる仮説」(2005年9月13日)

●Tyler Cowen, “Are autocratic successors less fierce?”(Marginal Revolution, September 13, 2005)


仮説A:独裁者の跡継ぎは先代に比べると気性が穏やかだと予想される。跡継ぎの座を狙っている気性の荒い側近(や身内)は独裁者にとって恐怖の対象となるためである1

仮説B:世襲君主制のもとでは権力欲(権力への愛)が培われることはなく、跡継ぎの面々はその座を力ずくで手に入れた初代に比べると気性が穏やかだと予想される。この仮説はゴードン・タロックによるものだ2、とはブライアン・カプランの言だ。

仮説C:独裁者の地位を巡ってその都度(独裁者が死亡してその座が空くのに伴って)熾烈な権力闘争が繰り広げられるよりは穏便な権力移譲を保障する仕組み3を通じて跡継ぎが選び出される方が好ましい4

仮説D:穏便な権力移譲を保障する仕組みを通じて選ばれる跡継ぎは気性が穏やかな傾向にあるとすると、穏便な権力移譲を続けていくことは次第に(代替わりが繰り返されるに伴って)困難になっていくものと予想される5

仮説E:何度も何度も企てられるクーデターの試みをどうにかして未然に防ぐことができれば、経済成長への道が開かれる可能性がある。

ネオ・ラオホ

ジョナサン・クリック(Jonathan Klick)による関連する論文はこちら(pdf)。独裁制から民主主義への体制転換をテーマとしたダニエル・サッター(Daniel Sutter)の論文はこちら。ネオ・ラオホ(Neo Rauch)の別の作品はこちら

  1. 訳注;独裁者が生前にその座を退いて跡継ぎを指名するとなったら自らの身の安全を守るためにも気性が穏やかな人物を後任に選ぶ可能性が高いものと予想される。跡継ぎの気性が荒いと場合によっては国外追放されたり殺害されたりするかもしれず、絶えずビクビクしながら日々(独裁者としての地位を退いた後の人生)を過ごさねばならなくなるかもしれないためである。 []
  2. 訳注;この仮説はGordon Tullock(著)『Autocracy』(この本はタロック選集第8巻の『The Social Dilemma: Of Autocracy, Revolution, Coup d’Etat, and War』にも収録されている)の中で展開されている。 []
  3. 訳注;世襲制はそのうちの一つ。 []
  4. 訳注;世襲制が(クーデターの発生を抑えることで)社会秩序の維持に対して持つ意義についてはこちらの論文(Peter Kurrild-Klitgaard, “The Constitutional Economics of Autocratic Succession”)を、(世襲制が)その国の経済成長に及ぼす影響については例えばこちら(pdf)の論文(Timothy Besley&Marta Reynal-Querol, “The Logic of Hereditary Rule: Theory and Evidence”)を参照されたい。 []
  5. 訳注;おそらくは政権転覆を狙った試みが誘発されやすくなるという意味だと思われる。気性が穏やかな人物が独裁者の地位にある場合、クーデター等が発生してもそれほど抵抗することもなくあっさりとその座を明け渡すことになるかもしれない。言い換えると、独裁者の気性が穏やかなほどクーデターが成功する(それも犠牲をそれほど伴うことなく成功する)見込みが高まり、それゆえクーデターが誘発されやすくなる可能性がある。 []

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