タイラー・コーエン 「我が子にサンタの正体を明かすべきか?」(2014年12月24日)

●Tyler Cowen, “Should you lie to your children about Santa?”(Marginal Revolution, December 24, 2014)


世の親たちは、我が子にサンタの正体を隠しておくべきなのだろうか? サンタは巷間に流布しているイメージのような人物ではないことを黙っておくべきなのだろうか? サンタの正体を明かすとしたら、それは誰だと伝えたらいいだろうか? ウィル・ウィルキンソン(Will Wilkinson)が次のように語っている

今や、我々は神を信じていない。とは言っても、自分の息子を無神論者に無理矢理仕立て上げるつもりはない。その内容は何であれ、我が子に特定の思想を信じ込ませることには興味がない。私が育児の面で興味を持っていることと言えば、真実に辿り着く可能性をできるだけ高めるために理性をどう働かせたらよいかを教えることくらいだ。この世の中に関する最も興味深い真実のうちの一つは、大勢の人々が加担するちょっとした陰謀に支えられるようにして強力な神話の体系が築き上げられているということだ。世の中の人々は、数ある神話の中からどれか一つを選び出して、それを本気で信じ込もうとしているように見える。身をもって体験してみないことには、その実態がどうなっているかを理解するのは難しいかもしれない。そこで、サンタクロースだ。サンタクロースというのは、超自然的な存在に関する共同幻想を支えている社会心理学的なメカニズムを子供に学ばせる上で比較的害の少ない格好の入門教材なのだ。サンタに関する真実が明らかになった暁には幻滅を感じるだろうが、そのおかげで、世間に流布しているその他の超自然的な存在に関する根拠の乏しい信念(神話)一般に対しても懐疑心が育まれることになるだろう。

世の親たちは、我が子に推測させるに任せておけばいい――我が子をベイズ的な推測の世界に迷い込ませておけばいい――というのが私の意見なのだが、どうだろうか? 私の両親は、息子である私に向かって「サンタはいる」とは一度も言わなかった。加えて、「サンタなんていない」とも決して言わなかった。そこで、私なりに推測を働かせてみて、きっぱりと結論を下した。「サンタなんていない」という信念の持ち主になるに至ったのだ。だからといって、喪失感から幻滅を感じた覚えもないし、「サンタ」からのクリスマスプレゼントもずっと変わらず送り届けられた。クリスマスプレゼントの要望をどこに出したらいいかについても頭を悩まさなかった。何か問題でもあるだろうか?

子供たちには、できるだけ早いうちからウォルター・ベンヤミン(Walter Benjamin)の仕事について教えておくべきじゃなかろうかね[1] 訳注;おそらくは、複製技術時代におけるアウラの衰退に関する一連の研究を指しているものと思われる。

99セントを支払えば購入できるアプリの「おしゃべりサンタ」(“Talking Santa”)では、アニメ化されたサンタのキャラクターに話しかけることができる。それだけでなく、雪玉でサンタを押しつぶすこともできるし、「バイオレンス」モードに設定してサンタの顔をひっぱたくこともできる。

このアプリは、クリスマスの魔力を打ち消してしまう恐れがあると警告する社会学者や育児専門家もいる。その言い分によると、子供たちがサンタを学校の友達と同等に扱うようになってしまったら――携帯端末で短いメッセージを頻繁にやり取りしたり、呼び出したり、ツイートを返したりする相手の一人と見なすようになってしまったら――、サンタの特別さ(神秘性)が保たれなくなるのではないかというのだ。

アダム・スミスの「ダイヤモンドと水のパラドックス」――実のところは、「ダイヤモンドと水のパラドックス」はガリレオ・ガリレイにまで遡れるのだけれど――が思い出されるところだ [2] … Continue reading

私がちびっ子だった時に、「サンタ」絡みでギョッとさせられたことがあるのを覚えている。「サンタ」の膝の上に座った時に「サンタ」の手元をふと見たら、指が普通じゃなかったのだ。指サックがはめられていたのだ(どうして指サックなんてはめていたんだろう? 本物の指を切ったかなんかして、傷を隠そうとしたんだろうか?)。ありがたいことに、そんな日々もとうの昔になりにけり。あの頃に携帯端末が今のように普及していたとしたら、「サンタ」と直接触れ合うよりも、携帯端末でメッセージをやり取りする方を選んでいたろうね。そのやり方(携帯端末で「サンタ」とメッセージをやり取りする方法)については詳しくは知らないけれど。

References

References
1 訳注;おそらくは、複製技術時代におけるアウラの衰退に関する一連の研究を指しているものと思われる。
2 訳注;「サンタ」のような貴重な存在も、アプリ等を通じて日常的に簡単に触れ合えるようになると、その有難味も薄れてしまう、という意味。言い換えると、「サンタ」がそこらじゅうに溢れるようになると、「サンタ」と触れ合うことで得られる限界効用が小さくなる、という意味。
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