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タイラー・コーエン 「説得の技法」

●Tyler Cowen, “Persuasion”(Marginal Revolution, October 24, 2003)


・・・物乞いがプラカードに「25セント恵んでくれませんか?」と書く場合と「17セントか37セントを恵んでくれませんか?」と書く場合とで恵んでもらえるお金の総額に違いは表れるだろうか? 答え:「17セントか37セントを恵んでくれませんか?」と書いた場合の方がおよそ60%だけ多くのお金を恵んでもらえることになる。

また次のような研究も紹介されている。・・・学生たちに家々を訪れて寄付を募る役割を務めてもらった。そして訪問先の半数では寄付をお願いする際に次の一言が付け加えられたのだった。「1ペニーだけでも寄付していただけたら助かります」。さて、この一言は何らかの効果を持っただろうか? 答え:寄付の金額を倍増させる効果を持った。

・・・次のうちどちらの方が大きな効果を持っただろうか? (a) 学生たちに対して「身の回りをきちんと整理整頓しなさい」と説教じみた調子で語りかける。(b)「あら。身の回りがきれいに整頓されていますね」と学生たちを褒めそやす。 答え:(a)は何の効果も持たなかった一方で、(b)では学生によるゴミの片付けが促され、片付けられたゴミの量は3倍にも上った。

これはスコット・アームストロング(J. Scott Armstrong)による書評から引用したものだ。書評の対象となっている本はアンソニー・プラトカニス(Anthony Pratkanis)とエリオット・アロンソン(Elliot Aronson)の2人が執筆している『The Age of Propaganda』(第1版1の邦訳『プロパガンダ-広告・政治宣伝のからくりを見抜く』)である。

説得つながりでバリー・ネイルバフ(Barry Nalebuff)とイアン・エアーズ(Ian Ayres)の共著である『Why Not?』(邦訳『エール大学式4つの思考道具箱』)の中から一つだけエピソードを紹介しておこう2

1990年のことになるが、ホバート・アンド・ウィリアム・スミス大学の教授であるウェスリー・パーキンス(H. Wesley Perkins)は次のような事実に気付いた。大半の学生は自分の飲酒量が平均を下回っていると思い込んでおり、そのような思い込みから他の学生と同じように振る舞わないといけないと感じて飲酒量を増やしていたのである。しかし、一度飲酒の実態に関する正確なデータが公表されると、パーティーで5杯以上お酒を頼んでいる人物はほとんどいないことが学生の間で知れ渡ることになり、どんちゃん騒ぎへの参加を促す同調圧力(ピア・プレッシャー)は大きく和らげられる結果となったのであった。こうして学生の飲酒量は大きく抑えられる格好となったわけだが、その目を見張るほどの成果を聞きつけてカリフォルニア州にある大学だけではなくそれ以外の地域の大学でも飲酒データの公開が進められることになったのであった。学生には「(お酒を勧められたら勇気を持って)いらないと答えなさい」とアドバイスするよりも「他のみんなと同じようにしなさい」と伝えた方が効果があるのかもしれない。

マクロスキー&クラマーの言葉を借りると、「GDPの4分の1は説得のための活動に費やされている」のだ3

  1. 訳注;アームストロングが書評しているのは第2版 []
  2. 訳注;以下は拙訳 []
  3. 訳注;Donald McCloskey and Arjo Klamer, “One Quarter of GDP is Persuasion(JSTOR)”(The American Economic Review, Vol. 85, No. 2, Papers and Proceedings of the Hundredth and Seventh Annual Meeting of the American Economic Association, January 6-8, 1995 (May, 1995), pp. 191-195) []

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