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タイラー・コーエン 「金融政策を扱った小説にはどんなものがある?」

●Tyler Cowen, “What are the novels about monetary policy?”(Marginal Revolution, December 29, 2010)


「金融政策を扱った小説はないものだろうか?」 エズラ・クライン(Ezra Klein)がそう問い掛けている

「残念ながらYou Shall Know Our Velocityは金融政策に関する小説ではない。」1

そう語るのはマシュー・イグレシアス(Matthew Yglesias)だが、彼のこのコメントを目にしてふと疑問に思ったことは「金融政策を扱った小説はないものだろうか?」ということだ。すぐに思い付くのはThe Wonderful Wizard of Oz(『オズの魔法使い』)だが、バウム(Lyman Frank Baum)のこの小説は金本位制の是非を巡ってたたかわされた政治闘争の寓話だと言われている2。金融政策の「効果」に関する小説も含めてよいというのであれば、大恐慌(Great Depression)が舞台の小説も文句なく該当することになるだろう。中でもスタインベック(John Steinbeck)のThe Grapes of Wrath(『怒りの葡萄』)は外せないだろう。他に適当な小説はないだろうか?

ポール・カンター(Paul Cantor)のこの論文(pdf)によると、トーマス・マンがハイパーインフレーションを話題にしているということだ。専門家向けの話になるが、フリードリヒ・アッハベルガー(Friedrich Achberger)の論文 “Die Inflation und die zeitgenossische Literatur”(「インフレーションと現代文学」)3によると、ムージル(Robert Musil)やツヴァイク(Stefan Zweig)、ブロッホ(Hermann Broch)などが金融政策をテーマとして取り上げているらしい。ハンス・ファラダ(Hans Fallada)のWolf Among Wolvesも金融政策を扱った小説ということになるだろう。H.G.ウェルズのThe Last War(『解放された世界』)はどうだろうか?(ウェルズはフレデリック・ソディ(Frederick Soddy)の信奉者だったのだ)。19世紀のイングランドを舞台とした小説では何かあるだろうか? SFの分野で何か適当な作品はないだろうか? 確かエリック・フランク・ラッセル(Eric Frank Russell)がミューチュアルファンド(に類するアイデア)について取り上げていたんではなかったか?

(追記)クルーグマンはベンジャミン・スタイン(Benjamin Stein)のOn the Brinkを挙げている。他のリストについてはこちらもあわせて参照あれ。

  1. 訳注;経済学で“velocity”という単語が用いられる際には「貨幣の流通速度」を意味することが大半だが(いわゆる交換方程式 『MV=PY』のVがそれにあたる)、本のタイトルに含まれている“velocity”は「貨幣の流通速度」を意味しているわけではなく、それゆえ“velocity”という単語を見て金融政策を扱った本だと早とちりしてはいけないよということ。 []
  2. 訳注;この点については次の論文が有名。Hugh Rockoff(1990), “The “Wizard of Oz” as a Monetary Allegory(JSTOR)”(Journal of Political Economy, Vol. 98, No. 4, pp. 739-760)  []
  3. 原注;Franz Kadrnoska(ed.) Aufbruch und Untergang: Osterreichische Kulturzwischen 1918-1938 (Vienna: Europa, 1981)のpp. 29-42に収録 []

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