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タイラー・コーエン 「電子書籍は紙の本に比べて内容が記憶に残りにくい?(その2)」(2014年8月20日)

●Tyler Cowen, “Do readers absorb less from a Kindle than from paper?”(Marginal Revolution, August 20, 2014)


アリソン・フラッド(Alison Flood)がガーディアン紙で次のように報じている

ミステリー小説をKindle(電子書籍)で読んだ読者はペーパーバック(紙の本)で読んだ読者に比べてあらすじ(物語の中で出来事が生起する順序)を記憶している度合いが「著しく」低かった。デジタル化が読書体験に及ぼす影響を探る(ヨーロッパ全域を対象とした)研究プロジェクトの一環として企てられた最新の研究でそのような結果が明らかになった。

件の研究結果は先月(2014年7月に)イタリアで開催されたカンファレンスの席上で発表されたが、近々論文としてまとめられる予定になっているとのこと。件の研究では総勢50名の被験者にエリザべス・ジョージ(Elizabeth George)作の28ページの短編小説が手渡された。被験者のうちの半数にはその作品をKindleで読んでもらい、残りの半数にはペーパーバック版で読んでもらったとのこと。そして被験者が物語の中に出てくる品や人物、物語の設定などについてどれだけ正確に覚えているかを後になってテストしたという。

研究チームのリーダーを務めたのはノルウェーのスタヴァンゲル大学に籍を置くアン・マンゲン(Anne Mangen)氏。マンゲン氏は以前にも短編小説を紙の本で読む場合とiPadで読む場合との違いを比較した研究を手掛けており、その時の研究を通じて「媒体の違いによって物語への熱中度をはじめとした感情面での反応に違いが見られる」可能性を一つの結論として得ていた。「紙の本で作品を読んだ読者はiPadで同じ作品を読んだ読者に比べて物語への共感や感情移入、熱中度などを測る指標で高い値を記録する傾向にあったんです」とマンゲン氏。

今回の研究では媒体の違いが作品の内容の記憶度に及ぼす影響に焦点が合わせられているが、物語の設定や登場人物に関しては電子書籍で読む場合と紙の本で読む場合とで記憶度に大きな違いは見られなかったという。しかしながら、物語の中で起きた出来事の順序をどれだけ正確に覚えているかという点になると媒体の違いによって結果に大きな違いが見られたとのこと。マンゲン氏は語る。「Kindleで作品を読んだ読者はペーパーバックで同じ作品を読んだ読者に比べてプロットの再現度を測る指標(物語の中で起きた14の出来事をどれだけ正確に順番通りに並べられたかを測る指標)で著しく低い値を記録する傾向にあったんです」。

「紙の本だとページをめくるという触覚面でのフィードバックが物語を心のうちで再構成する手助けをしてくれますが、Kindleで作品を読む場合には同じようにはいかないのかもしれません」とマンゲン氏は語る。

あくまでも暫定的な結論ではあるが、直感的にも頷けるし私なりの癖――情報を場所(空間)と結び付けて整理(記憶)する癖(「あの話って確かあの本のあのあたりに出てきたんだっけ?」)1――とも合致する結果ではある。

  1. 訳注;この点については本サイトで訳出されている次の記事も参照されたい。 ●タイラー・コーエン 「我は『ラムス主義者』なり ~空間、記憶、乱雑さ~」/「乱雑さの擁護」(2018年1月2日) []

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