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デビッド・ベックワース「パウエル議長が金融政策ルールに言及」

David Beckworth “Fed Chair Jay Powell on Monetary Policy Rules” Macro Musings Blog, February 27, 2018


本日2月27日,ジェイ・パウエルはFed議長としての初めての議会証言に臨んだ。それに加え,彼はFedの金融政策年次報告書を議会に提出した。彼の議会証言,それに続く質疑応答,そして年次報告書の論点は多岐にわたる。ここでは彼の証言のうち非常に興味深く,かつ重要なものともなりうる部分について取り上げてみたい。というのは,ジェイ・パウエルは金融政策ルールを承認(endorsement)したのだ。

議会証言録によれば,彼は次のように発言したとされている。

金融政策のスタンスを評価するに際し,連邦公開市場委員会(FOMC)は,政策金利に対する処方箋を私たちに課せられた目標と関連する変数に結び付ける金融政策ルールを日常的に参照しています。個人的には,こうしたルールによる処方箋は有用であると考えています。用いられる変数の測定や,こうしたルールが考慮しない多くの論点が意味するところに関し,慎重な判断は必要です。この金融政策年次報告書では,金融政策ルールやそうしたルールがFedの政策過程において果たす役割が詳細に議論されております。

これは,過去を含めこれまでのところFed議長による金融政策ルールに対する最も強力な承認だと思う。私としてはこれは進展だ。それどころかさらに朗報もある。ジェイが言及した金融政策年次報告書は,多くの金融政策ルールを列挙していて,その中には物価水準目標も含まれている。ルールに関する議論のほとんどが,大部分をテイラールールに費やしていた過去のやり方から比べてみると,これは大きな飛躍だ。例えば去年の金融政策年次報告書には物価水準目標は掲載されていなかった。

以下は様々なルールをリストアップした報告書に掲載されている表だ。

物価水準ルールの掲載は,Fedで大きな変化が起きていることを示すものなのかもしれない。この報告書が出る前には,金融政策の枠組みの変更についてFOMC参加者が議論を行った1月のFOMC会合の議事録が公表されている。以下はその議事録からの抜粋だ。

しかしながら数人の参加者は,近年の低水準のインフレは部分的にはより長期のインフレ期待がFOMCの2%目標を下回っていることを反映しているとの見解を示した。この点に関し,FOMCの2%インフレ目標がバランスのとれたものであることを引き続き強調することの重要性を多くの参加者が指摘した。2名の参加者は,FOMCが自身の目標が点推定というよりは範囲目標であると述べうると示唆した。その他数人の参加者は,特に中立的な金利が低い状態が続く可能性が高いと見込まれる環境において,目標からのこれまでの乖離を取り戻そうとする金融政策枠組みの採用が,FOMCのインフレ目標に整合的なインフレ期待の達成・維持を行うという課題を解決する可能性があるかについて,FOMCは検討を始めうると示唆した。

インフレ目標範囲と物価水準目標に関するこの議論は興味深い。これは金融政策年次報告書にあるルールのリストが拡大されたことが変化への新たな前向きな姿勢を表しているのだという見方を補強するものだ。ここではっきりさせてもらうと,イスラエルの事例に関する私の過去のポストにあるように,適切に実施されたインフレ目標範囲は外から見ると名目GDP水準目標に非常に近いものになる。

というわけで,新しい金融政策枠組みに関する公の議論すべてがFedの中で地歩を固めてきているようだ。もちろんながら,2018年版の金融政策年次報告書の中のリストに含まれていなかったルールはといえば,名目GDP水準目標にほかならない。よそでも述べてきているように,物価水準目標よりも名目GDP水準目標が望ましいということについては十分な理由がある。しかし,Fedがこうした議論を行っており,物価水準目標をそのルールのお品書きに加えたという事実は大きな進展といえる。

だからこうした議論を行っているFed新議長とFOMCには称賛を送ろう。ぜひこのまま行ってほしい。

追記:上に書いた物価水準目標は実際上は名目GDP水準目標にかなり近いという指摘があった。物価水準目標は失業ギャップを含んでいるからだ。マイケル・ウッドフォードは,自身の理論に基づいて産出ギャップ調整済み物価水準目標を呼びかけており,それが大まかには名目GDP水準目標の採用と同じこととしているが,先の指摘もそれに近い。非常に良い指摘だ。それについて書いておくべきだったけれども失念してしまった。

私としてはしかしながら,2つの理由からビシッとした名目GDP水準目標のほうが好ましいと思っている。1つには,この論文に書いた通り産出ギャップの推定については大きな認識問題がある(こちらの政策ペーパーでは同じ点について技術的議論を少なくして書いている)。もう1つには,私は産出ギャップ調整済み物価水準という観点よりも,流通速度調整済みの貨という観点から名目GDP水準目標にアプローチしている。すなわち,私としては名目GDPを式のPY側ではなくMV側から見ている。したがって,潜在産出の観測されない変化は名目GDP水準目標におけるバグではなく特色だと考えている

とは言え,Fedが実質的には名目GDP水準目標をルールのリスト中に入れたということについてはめちゃくちゃ興奮している。

PS:ジェイ・パウエルはじめFOMCのメンバーは毎朝こんなコーヒーマグを使い始めたら名目GDP水準目標がリストに記載されるかもしれない。Fedの庁舎用にいくつか用意しなければ。FOMCの皆さん,マグカップや名目GDP水準目標に関する議論にご興味あればぜひご連絡を。


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