デビッド・ベックワース 「大将の後を追え ~マネタリー・スーパーパワーとしてのFed~」(2009年9月9日)

●David Beckworth, “Follow the Leader”(Macro Musings Blog, September 9, 2009)


以下の図をご覧いただきたい。この図は、OECD(経済協力開発機構)が公表した最新(2009年9月版)の経済見通し(Economic Outlook)の中から借用したものだ。世界を代表する三つの中央銀行(Fed、ECB、日本銀行)が操作する政策金利の推移が2000年以降の期間を対象にそれぞれ跡付けられているが、何とも興味深い事実が窺える。ECB(欧州中央銀行)にしても、日本銀行にしても、政策金利を変更するにあたって、Fedの後追いをしているかのように見えるのだ。

「Fedはマネタリー・スーパーパワーなり」。上の図は、そのような見解ともしっくりくる。この点について、かつて私は次のように述べたことがある

Fedは、世界経済を牛耳る通貨王である。Fedは、世界の主要な準備通貨たるドルを管理しており、数多くの新興国は公式・非公式に自国通貨をドルにペッグしている。その結果として、Fedによる金融政策は、世界中のあちこちに「輸出」されることになるのだ [1] … Continue reading。それと同時に、その他の通貨大国たる、ユーロ圏にしても、日本にしても、米国の金融政策には無関心ではいられない。というのも、ECBも、日本銀行も、ユーロや円が、ドルに対してだけではなく、ドルにペッグしている通貨に対しても、高くなり過ぎないように(ドル安ユーロ高、ドル安円高が行き過ぎないように)と注意を払うだろうからだ。そういうわけで、Fedによる金融政策は、ユーロ圏や日本にも、ある程度は「輸出」される格好となるのだ。以上のことを踏まえると、2000年代の初頭から中頃にかけて世界経済を襲った「グローバル流動性過剰」の元凶がFedにあるやもしれぬことを理解するのは難しくない。2000年代の初頭から中頃にかけて、Fedは政策金利(フェデラル・ファンド金利)を実質値で測ってマイナスの範囲に留め置き、そのために、実質金利(実質値で測ったフェデラル・ファンド金利)が生産性の伸び率を一貫して下回る(言い換えると、実質値で測ったフェデラル・ファンド金利が自然利子率を一貫して下回る)結果となったのだ。

「マネタリー・スーパーパワー」たるFedは、名目支出の刺激を通じて、2000年代の初頭から中頃にかけて世界経済の過熱を後押しするだけの力を備えていた。そうも言い換えられるだろう。名目価格の粘着性の存在を踏まえると、Fedのせいで(Fedによる過度の金融緩和によって、世界経済全体の名目支出が大いに刺激されたせいで)、世界経済は一時的に(2000年代の初頭から中頃にかけて)自然産出量(潜在GDP)を上回るところまでいってしまった(世界経済の過熱が引き起こされてしまった)可能性があるのだ。

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1 訳注;例えば、Fedが政策金利を引き下げるなどして金融緩和に乗り出すと、その他の国の中央銀行もその後を追って金融緩和に乗り出さざるを得なくなる、という意味。
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