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ニック・ロウ「反ニューケインジアンモデル:雇用と産出を増やす最低賃金」

Nick Rowe “The anti-NK model and minimum wages” (Worthwhile Canadian Initiative, February 21, 2014)


標準的なニューケインジアン(NK)モデルとはちょうど正反対の予測をする簡単なモデルを見せよう。つまり、中央銀行が名目金利を高すぎる(低すぎる)ところに設定すると、産出と雇用の上昇(下落)を引き起こすんだ。

企業が労働市場で独占力を持っているから最低賃金の上昇は雇用の上昇を引き起こす、と考える人は僕のモデルを気に入ってくれるだろう。

アイデアとしては一年生用のミクロ経済学の教科書からそのまま出てくるものだ。Xの価格が粘着的で、競争均衡よりも高い(独占)なら、売買されるXの量はXへの需要によって決定される。Xの価格が粘着的で、競争均衡よりも低い(買い手独占)なら、売買されるXの量はXの供給によって決定される。市場において、需要と供給のどちらか少ないほうが取引される量を決定するんだ。つまり、Q = min{Qd;Qs}

僕の反NKモデルは次のようなものだ。

全ての企業は全く同じ種類の製品を生産し、したがって製品の市場は完全競争だ(NKモデルでは各企業は異なった種類の製品を生産し、生産物の市場で独占力を持っているとともに、右下がりの需要曲線に直面している。)

各企業は異なった種類の労働者を雇用し、労働市場で独占力を持っていて、右上がりの労働供給曲線に直面している。(NKモデルでは全ての企業は同じ種類の労働者を雇用するため、労働市場は完全競争だ。)

代表的個人モデル好きな人向け:僕のモデルの代表的個人は雇用に対してディキシット=スティグリッツ型の選好1 を持っていて、様々な企業に対して労働力を売ることを好む。(NKモデルの代表的個人は消費に対してディキシット=スティグリッツ型の選好を持っていて、様々な企業から製品を買うことを好む。)

僕のモデルでは価格は完全に伸縮的だけど、賃金は粘着的で、賃金インフレに対してカルボ型のフィリップス曲線となっている。(NKモデルでは賃金は完全に伸縮的だけど、価格は粘着的で、価格インフレに対してカルボ型のフィリップス曲線となっている。)

僕のモデルでは、利益最大化を図る企業は価格に労働の限界生産物をかけたものにマークダウン2 をして賃金を設定する。W=(1-m)・W・MPL(NKモデルでは、利益最大化を図る企業は限界費用にマークアップを加えて価格を設定する。P=(1+m)・W/MPL)

僕のモデルでは、利益最大化を図る企業は賃金が一定であるならば、労働者を雇えるだけ雇う。(NKモデルでは、利益最大化を図る企業は価格が一定であるならば、売れるだけ製品を生産する。)

これ以外の全ては、僕のモデルと標準的なNKモデルは全く同じだ。

僕のモデルで鍵となる方程式は、余暇のオイラー方程式だ。現時点で需要される余暇と予想される将来の余暇の比率は、名目金利から予想賃金インフレを差し引いたものの負の関数となる。

中央銀行が名目金利を一期間に渡って低すぎるところに設定したとしよう。代表的個人はより現在においてより多くの余暇を消費し、将来の余暇を少なくしようとする。だから現在の労働供給は減ることになる。企業は賃金を上げたいと思うけれど、それができない。賃金は粘着的だからだ。なので現在の雇用は減少し、それは産出もまた減少し、製品市場を均衡させるために価格が上昇するということを意味する。

中央銀行が名目金利を一期間に渡って高すぎるところに設定したとしよう。代表的個人は現在において消費する余暇を減らし、将来の余暇を多くしようとする。だから現在の労働供給は増えることになる。企業は賃金を減らしたいと思うけれど、それが出来ない。賃金は粘着的だからだ。なので現在の雇用は増加し、それは産出もまた上昇し、製品市場を均衡させるために価格が下落するということを意味する。

標準的なNKモデルで鍵となるのは消費のオイラー方程式だけれど、それは僕のモデルでは重要じゃない。産出と雇用の決定にあたって何の役割もないんだ。現在の物価水準は期待将来物価水準と名目金利にしたがって、産出がどのような水準でも消費のオイラー方程式を満たすように瞬時に調整される。

僕のモデルで鍵となる余暇のオイラー方程式は、標準的なNKモデルでは重要じゃない。産出と雇用の決定にあたって何の役割もないんだ。現在の賃金水準は期待将来賃金水準と名目金利にしたがって、産出がどのような水準でも余暇のオイラー方程式を満たすように瞬時に調整される。

僕のモデルでは、義務的な最低賃金法は雇用と産出を上昇させる。それによって企業の独占力が減少するからだ。

標準的なNKモデルでは、義務的な価格上限法は産出と雇用を上昇させる。それによって企業の独占力が減少するからだ。

  1. 訳注;選択肢が増すことによって効用が増えるという形の選好。 []
  2. 訳注;一定率の減額。次の等式のなかのmに相当する。マークアップ原理と呼ばれるものの符号を変えたものなので、そのままマークダウンと訳した。 []

Comments

  1. 最後、
    >標準的なNKモデルでは、義務的な賃金上限法は産出と雇用を上昇させる。
    ではなく
    >標準的なNKモデルでは、義務的な価格上限法は産出と雇用を上昇させる。
    では。

  2. 返答が遅れて申し訳ありません。おっしゃる通りです。
    修正を反映させて頂きました。

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