フランシス・ウーリー 「見せびらかしの政治」(2011年4月7日)

●Frances Woolley, “Conspicuous Politics”(Worthwhile Canadian Initiative, April 07, 2011)


今日のことだ。外を出歩いていると、スノードロップだとか、クロッカスだとかが植えられている、きれいな庭のある家のそばを通り過ぎたのだが、その家には、「緑の党」支持者であることを示すローンサイン(立て札)もあわせて掲げられていた。しばらく歩くと、今度は、玄関の前の柵に自転車をつなぎとめてある家の前を通り過ぎた。その家には、「新民主党」(NGP)支持者であることを示すローンサインが掲げられていた。さらに先へと歩を進めると、手入れの行き届いている庭のある家の前にたどり着いた。その家には、「カナダ自由党」支持者であることを示すローンサインが掲げられていた。

ジェフリー・ミラー(Geoffrey Miller)の『Spent』(邦訳『消費資本主義!:見せびらかしの進化心理学』)は、住まいの様子とそこに暮らす住人の政治信条(どの政党を支持するか)との間のつながりについて、いくばくかの光を投げかけてくれる。ミラーは、本書で、「見せびらかしの消費」(誇示的消費)に関する古くからある理論に、最新の心理学の知見を融合させている。私たちの消費選択(購買行動)は、「私はこういう人間です」(人となり、性格)ということを、周囲に対してシグナルしようとの衝動によって突き動かされている。ミラーはそう語る。そして、人間の性格(パーソナリティ)は、以下の六つの特性(Central Six)に還元できるという。すなわち、一般知能(g因子)(general intelligence)、開放性(openness)、誠実性(conscientiousness)、調和性・協調性(agreeableness)、情緒安定性(stability)、外向性(extraversion)の六つ。

どんな家を選ぶかも、その人の性格をシグナルする役割を果たすことになる。ミラーはそう語る。マイホームを買う場合に、「建築士と話し合ってデザインを決める(そのおかげで、その建築士と友達付き合いをするきっかけとなるかもしれない)」のはどうして? その理由は、「創造性に、開放性、協調性、そして、外向性といった特性を備えた人間だということを示すシグナルとなるからだ。完成済みの建売住宅を買うよりもずっと確実に、そういった特性の持ち主だということをシグナルできる。建売住宅を買うためには、頭金を用意しさえすればいい。あとは、信用情報に傷がついていなくて、騙されやすければいいだけだ」。

ミラーの議論は、家(建物)だけではなく、庭づくりにも簡単に応用できる。芝生の手入れが行き届いている庭は、友人や隣人に対して、「私は誠実性を備えた(慎重で几帳面な)人間です」ということをシグナルする手段となる。型破りの庭づくり――例えば、ベニバナインゲンを(食用として育てるのではなく)観賞用として花壇の真ん中に配置したり――は、開放性をシグナルする手段となる。花壇の囲いを印象的に並べたり、多彩な色や形の植物を混ぜ合わせたり、植物の配置に工夫を凝らしたりすれば、創造性をシグナルできる。キボウシ属の草も、工夫次第で、何かをシグナルする手段として使える。

どの政党の支持者かということも、その人の性格をシグナルする役割を果たすことになる。ミラーはそうも語る。「民主党を支持するアメリカの有権者だったり、労働党を支持するイギリスの有権者だったりは、調和性や開放性が高い傾向にある。それに対して、共和党を支持するアメリカの有権者だったり、保守党を支持するイギリスの有権者だったりは、誠実性が高い一方で、開放性は低い傾向にある」。

家(そして、その延長である庭)選びに関するミラー流の理論に、政治(支持政党選び)に関するミラー流の理論を組み合わせると、次のような検証可能な仮説が導き出されることだろう。保守政党(右寄りの政党)を支持する有権者は、「誠実性」のシグナルとなり得る、家なり庭なり(芝生の手入れが行き届いている庭、雑草が一本も生えていない花壇、などなど)の持ち主。その一方で、左寄りの政党を支持する有権者は、「開放性」のシグナルとなり得る、家なり庭なり(外来植物が植えられた庭、型破りのデザインの庭、などなど)の持ち主。

どう思う? 庭のつくりが仄めかすその人の性格と、ローンサインの選択(どの政党を支持するか)との間には、何らかのつながり(相関)があると思う?

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