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ポール・クルーグマン「より輝かしい2014年の徴候」

Paul Krugman, “Encouraging sings for a brighter 2014,” Krugman & Co., January 16, 2014.


より輝かしい2014年の徴候

by ポール・クルーグマン

Van Dam/The New York Times Syndicate

Van Dam/The New York Times Syndicate

2014年アメリカ経済の展望について,楽観論が警戒すべきところまできている.そこでぼくも,状況をいっそう警戒すべきものにするために,ひとこと言わせてもらおう――ぼくも基本的に楽観論を共有しておるのですよ.

なんでって? 『3バカ大将』効果のためだ:理由もなく壁に頭をずっと打ち付け続けていたなら,それを中断すればずっとマシになるでしょ.

2013年のアメリカ経済を描写するには,こんな風に言ってもいい.「事実上,アメリカ経済は力強い回復をはじめようと試みたものの,連邦政府のひどい財政政策で引き戻されてしまった.住宅建設はカムバックを果たそうとしていた.州・地域の緊縮は,拡大に転じることはないにせよ,少なくともより引き締められることはなかった.家計債務の水準低下にともなって家計支出は息を吹き返しはじめていた.

ところが,連邦政府は給与税を引き上げていたし,政府支出の強制削減によって支出を削減していたし,他にもそういうことをやっていた.

ちなみに,こうした他の要因があったために,「経済成長が2013年につぶれなかったことから,財政政策はモノを言わないことがわかる」という市場マネタリストたちの主張をぼくは真に受けたりしない.アメリカの緊縮はほんとにひどかったけれど,南ヨーロッパで起きた緊縮ほどにはキツくなかった.緊縮は十分に抑制されていたので,まる1年にわたる他の状況の展開によっておおむね相殺されているだろう――し,ぼくとしては現に相殺されたと主張したい.

ともあれ,大事なところは,三ばか大将方式の頭叩きはもうすぐ終わるってことだ――〔緊縮路線という〕間違った方向から反転して〔財政支出拡大に向けて〕進むって意味じゃあなくて,あんな間違った方向に進み続けるのはやめるだろうって意味でね.その一方で,住宅市場はいまも改善しつつあるし,他の物事も比較的に良好だ.

だからといって,いまの話はこの数年にわたる緩慢な回復を正当化するわけじゃない.活発な回復がなされてしかるべきだった.それに,ここは誤解しないでおこう:この種の予想は,たとえば「流動性の罠にはまっているかぎりアメリカのインフレと金利は低いままにとどまるだろう」みたいな,モデルの原則にもとづいている予想ほど信頼できるものにはならない.

とはいえ,この新しい年は幸先よく始まっている.

そうそう,政策についても言っておこう:オバマケアはひどい失敗になってないし,アメリカ人はこの先にほどほどの経済成長の見通しがあるから,11月の中間選挙は,いま多くの保守派が期待しているようなかたちにはならないかもしれないよ.


すてきな年が証明しないこと

簡潔に補足を1つ:2014年が比較的に良好な成長の年だとしたら,多くの人はこれをケインズ主義を反証するものだと受け取ることだろうね――「おいおい,キミらって,財政刺激をやんないかぎり経済は回復しないって予測してませんでしたっけ?」って.

いんや,してませんけど.

2009年に書いたように:「長期的には,自然発生的な経済回復が起こるだろう.たとえ,いまの政策イニシアティブが失敗したとしてもだ.他方で,長期的にはなんとやらで…」」

物事がいずれよくなっていくのは,ケインジアンの分析を反駁するものでもないし,これまでのダメ政策が起こした広範な経済的・人的なコストを大目に見てゆるす言い訳にもならない――イギリスの緊縮政策の正当化にならないのと同じことだ.

© The New York Times News Service


Comments

  1. “household spending” は住宅支出じゃなくて家計支出じゃないでしょうか。文脈から考えてもこの方が合ってると思います。たぶん、household を housing と見間違えたんだと思いますが。

  2. “Housing was making a comeback…” 以降の文って、”if not going into reverse” という副詞句が挿入されてる以外は、別に修飾関係ではなくて、”Housing was making…”, ”state and local austerity was not getting…”, “household spending was starting…” という三つの節が並列されてるだけのような気がするんですが。

    緊縮政策云々に関しては、連邦政府 VS 州・地方という対比をしてるように読みましたが。州・地方はそんなに緊縮を強めてないのに、連邦政府の財政政策はひどかった、みたいな。

    • optical_frog says:

      これもご指摘のとおりです.修正しました.
      困ったことに,NYTのシンジケートから配信された原文では下記のように編集されており,これをもとに訳した結果があのようになった次第です:
      ” Housing was making a comeback; if state and local austerity policies were not going into reverse, at least they were not getting more intense; and household spending was starting to revive as debt levels came down.”

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