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ポール・クルーグマン「パニックをきたした新聞が経済学を道徳話に変えてしまう」

Paul Krugman, “A Panicked Press Turns Economics Into a Morality Play,” Krugman & Co., March 20, 2014. [“The Rate-Hiker’s Guide to the Economy,” The Conscience of a Liberal, March 10, 2014.]


パニックをきたした新聞が経済学を道徳話に変えてしまう

by ポール・クルーグマン

MEDI/The New York Times Syndicate

MEDI/The New York Times Syndicate

先日,『フィナンシャル・タイムズ』ウェブサイトのトップに出たヘッドラインをみて――少なくともアメリカ版では――国際決済銀行についての記事を見つけた.FT によると,国際決済銀行 (BIS) はこんな警告をしてるそうだ.「フォワードガイダンスは」――長い期間にわたって短期金利を低く維持すると約束することで長期金利を下げようとする試みは――「国際金融システムに危険をまねきかねない」んですって.いかにも国際決済銀行らしい言い分だな,と思ったね.あのバーゼルの小人さんたちは,完全雇用をとりもどすかもしれないどんな政策にもずっと一貫して反対してきたし,処罰にのめりこんできた.というわけで,BISバッシングのブログポストを書く用意はもうととのえてあったのよ.

ただ,まずは記事に引用されている BIS の報告書の実物を確認しておいた方がいいよなと思った――すると,『フィナンシャル・タイムズ』で記されているのとは,ずいぶん様子がちがってる.なるほどたしかに,金融の安定にとってリスクがあり得る点には言及している.でも,フォワードガイダンスをするべき理由についても述べているし,なんらかの非伝統的な刺激策の必要にも触れている.フォワードガイダンスについてなにか否定的なことを言ってるように思えるとしても,それは有効性の疑わしさに関する話であって,近づく破滅の話じゃあない.言い換えると,ここでの不安要因は,『フィナンシャル・タイムズ』みずからが抱いてる偏見を BIS に投影してる点であって,BIS の実際の判断じゃないってことだ.

で,このことは1つの指標になってると思う.金利を上げるべしという要請は同紙に広く見られる(理由づけはあれこれと変転しているくせに要求はずっと変わってない).なんでだろう? 理由は変わり続けるままに政策提言は一向に変わらないってことから,実は政策分析の話じゃなさそうだぞとうかがい知れる.そこで話題になっているのは,階級利害(金利生活者は金利を欲する)と,経済の仕組みを道徳劇に見立てたいという欲求(「低利のお金はなんだかいい感じなのでよこしまにちがいない」)のまぜこぜになったものだ.

ともあれ,なんともびっくりだ.ああやって「金利上げろ」とひっきりなしに太鼓が叩かれているうちに,中央銀行の人らが根負けしちゃわないかと心配になる.

© The New York Times News Service


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