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マーク・ソーマ 「経済モデルの意外な起源 ~戦争に起源を持つ経済モデルといえば?~」(2012年2月28日)

●Mark Thoma, ““Economics and Its Military Patrons””(Economist’s View, February 28, 2012)


ジュディ・クライン(Judy Klein)がインタビューの中で経済モデルの起源(+その他の話題)について次のように語っている1

・・・(略)・・・私が自らの研究を通じて驚かされたことは、経済学の分野で当たり前のように使われているモデルの多くが戦争にその起源を持っており、コンピュータの計算資源の稀少性が制約となってモデルの構築戦略が一定の方向に方向付けられることになったという事実です。フリードマン(Milton Friedman)やケーガン(Phillip Cagan)の名前と結び付けられることの多い「適応的期待」にしても、ボックス(George E. P. Box)とジェンキンス(Gwilym Jenkins)がその後時系列分析の分野で一般化を試みた「指数加重移動平均」(EWMA)にしても、その起源はB-17(戦略爆撃機)に搭載された(自動操縦装置(アナログ計算機)と連動していた)照準器と爆撃手との間でやり取りされる情報フローをどうにかしてモデル化しようとした第二次世界大戦中の試みに求められるのです。「合理的期待」はデジタル計算機の時代の産物です。リチャード・ベルマン(Richard Bellman)の「動的計画法」もそうですね。動的計画法は1940年代後半に空軍が抱えていた問題を解決しようと試みられる過程で磨き上げられることになりました。ソ連内にある競合する標的に向かって多段階(異時点間)にわたって核攻撃を行うとした場合に稀少な核爆弾をどのように割り振るのがベストか?という問題を解く過程で動的計画法に磨きがかけられることになったのです。  

私がLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)で大学院生として経済学を学んだのは1970年代初頭に遡りますが、その当時学んだ最先端のモデルのあまりに多くが戦争に起源を持っていると知った時は驚いたものです。「適応的期待」然り、(線形計画問題を解く手法の一つである)「シンプレックス法」然り、「数理計画法」全般然りです。

カーネギー工科大学と政府(軍部)との間では10年にもわたる業務契約が結ばれ、そのようなかたちで政府の支援を受ける中で(カーネギー工科大学の経済学部に在籍していた教授やそこで学んだ大学院生たちの手によって)あれこれのモデルが磨き上げられることになったわけですが、その過程では政府介入に「ノー」を唱えるタイプのモデル(消費者は合理的であり、それゆえ雇用の増加を目的とした政府の介入は不必要なばかりか有害でさえある、との結論が導き出されるノーベル経済学賞受賞対象ともなった一連のモデル)ばかりが続々と生み出されることになったというのは何とも皮肉な話であり、驚きを禁じ得ませんね。

  1. 訳注;もっと詳しい話は次の論文を参照。 ●Judy Klein, “The Cold War Hot House for Modeling Strategies at the Carnegie Institute of Technology” []

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