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ラルス・クリステンセン「ECBは10年前の日銀みたいだなあ」

Lars Christensen “The ECB should give Bob Hetzel a call” (The Market Monetarist, June 9, 2014 )


金融政策伝達メカニズムがどこかしら壊れてしまっていて、必要な政策対応は量的緩和ではなく金融政策伝達メカニズムを修復するものだってことを強調するのに欧州中銀は躍起になっている。

欧州中銀の立場に関して、ボブ・ヘッツェルのとある素晴らしい論文「中央銀行とは何か(What Is a Central Bank?)」の次の箇所がとてもおもしろいものだと思うんだ。

例えば日本においては、銀行の不良債権が金融政策伝達メカニズムを損なっているという主張が人口に膾炙している。中央銀行は商業銀行の準備金を増やすために資産を買い入れることができるが、商業銀行の貧弱な資本基盤が追加的な貸出を行おうとする彼らの意思を限定的なものにしている。リアルビルズ(real bills)的な世界1 では、価格を変化させる貨幣の独立した変化を作り出す中央銀行の能力は、市場によって支配される。

リアルビルズ的な見方と対置されるところの貨幣数量説によれば、中央銀行は貨幣(マネタリーベース)の創造によって人々の名目支出に対する支配を行使する。この支配は金融仲介業者に対する中央銀行の影響力に由来するものではない。商業銀行は、消費を差し控えて債権を保有しようという個人に対して、自分の負債を魅力あるものにすることで資産の買い入れをする。それとは対照的に、中央銀行は貨幣創出に由来する課税能力(シニョレッジ;通貨発行益)を通じて資産の買い入れを行う2 。中央銀行は現金の保有者に対して直接的に課税するとともに、銀行が預金の見合いで準備金を保有する限りにおいて銀行預金の保有者に対して間接的に課税するのである。

ボブがこの論文を書いたのは、彼が日銀の客員研究者だった2003年のことだ。

現在の欧州中銀の立場がボブのいた当時の日銀の立場とこんなにも似ているのは驚きだ。欧州中銀はボブに来てもらったほうがいいんじゃないの?

  1. 訳注;内生的貨幣供給説(いわゆる日銀理論)的な世界。実需がなければ通貨を供給しようとしても供給できず、中央銀行ができるのは需要に合わせて供給を行うだという考え。 []
  2. 訳注;ここでの課税とはインフレ税を指す。 []

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