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リヴァイ・ボクセル 「インターネット・ソーシャルメディア・政治分極化」 (2017年10月1日)

Levi Boxell, “The internet, social media, and political polarisation” (VOX, 01 October 2017)


インターネットは、近年の政治の分極化について相当な汚名を着せられてきた。合衆国のデータを用いつつ本稿が主張するのは、政治分極化の強まりという少なくとも1970年代まで遡れる一般動向について、インターネットはじつのところ何ら重要な役割を果たしてこなかったこと、これである。本研究結果は、都合のよい物語をとおした説明にとどまらない視点をもつことの重要性、そして政治的気分をうみだす諸要因をより深く理解することの必要性を照らし出す。

合衆国選挙民のあいだで近年政治の分極化が進んでいる旨を示唆する文献が増えている (例: Abramowitz and Saunders 2008, Iyengar et al. 2012)。1994年、政党支持者 (party affiliates) のおよそ20%が反対政党について 「強く不支持 (very unfavourable)」 の見解をもっていた。2016年までに、この数字は55%超に高まり、現在も減速の兆しは全くみられない (Pew Research 2016)。1994年から2014年にかけて、政治ポリシーにかんする質問群をとおし強固に一貫したイデオロギー的見解をもつアメリカ人の割合は、2倍以上に膨らんだ – すなわち10%から20%超に増加した (Pew Research 2014)。

政治分極化にたいする関心のほうも空前の高まりをみせている。Google Trendsが示すところでは、合衆国における政治分極化に関連した検索の件数は2016年の11月、2004年のモニター開始以降のいずれの選挙月をも上回るものとなった1。Gentzkow (2016) も、1950年から2008年にかけてのGoogle Books Ngram Viewerデータにおける政治分極化への言及について、同様の結果を得ている。

政治分極化の強まりの説明としてよく引用される仮説の1つは、インターネットとソーシャルメディアを主たる要因とするものだ。Cass Sunstein (2007) の次のような言葉は、この議論の標準型を示している:

インターネットのおかげで甚だしく容易になったのは自分の見解の後押しとなる膨大な資料を渉猟し … [なおかつ] それと反対の趣旨をいう資料のいっさいを排除することだ … このセルフ-ソーティングがもたらす重要な帰結に、飛び地の過激主義 (enclave extremism) とでも呼びうるものがある。同好の士からなる飛び地にゆき着いた人々は、通例そこからさらに極端な地点に向かってゆくものだ

よく知られたEli Pariser (2011) や Cass Sunstein (2001, 2009, 2017) の著作は、インターネットが 「フィルターバブル」 ないし 「エコーチャンバー」 の役割をはたすというこの考えについて詳説したものだ。

個人は、インターネット上で同好の士的な情報源をじじつ見い出しており、またソーシャルメディア上でも同好の士的な個人と繋がる傾向が比較的強いこと、これについては強固な実証データが存在する。既存研究は、政治ブログ上でのリンク (Adamic and Glance 2005)、ウェブサイト訪問 (Gentzkow and Shapiro 2011)、Twitter上の政治的リツイート (Conover et al. 2011)、ソーシャルメディア上の記事シェア・クリック (An et al. 2014, Bakshy et al. 2014, Flaxman et al. 2016)、Twitter上の政治的同類性 (Colleoni et al. 2014, Gruzd and Roy 2014, Halberstam and Knight 2016) などにおける住み分け (segregation) を明らかにしてきた。

図1 メディアと交流形態でみたイデオロギー的住み分け

出典: Gentzkow and Shapiro (2011).

しかしながら、オフラインの情報源とオンラインの情報源を比較する段になると、諸研究はどちらにも同程度の分節化レベルを見い出している。図1はGentzkow and Shapiro (2011) から取ったものだが、ウェブサイト訪問にかんする分節化をみると、これは全国紙にかんする分節化ほどではないが、地方紙にかんする分節化よりも激しいといった具合になっている。Halberstam and Knight (2016) もTwitter上の政治ネットワークを調べて、Twitter上の政治ネットワークとオフラインの政治ネットワークの分節化が同程度であることを明らかにしている。なお付言しておくと、インターネット上の情報源にかんする分節化はたしかに示唆的であるが、これはインターネットが分極化を促したという命題の必要条件でもなければ十分条件でもないのである。

図2 標準化した政治分極化の指標の動向 (1972–2016)

出典: Boxell et al. (近刊).

最近の論文で私は共著者らとともにインターネットと政治分極化の関係を調査している。そのさい 「全米選挙研究 (American National Election Studies)」 のサーベイデータを用いることで、オンライン情報へのアクセスで異なる人口学的諸集団をとおしてみた分極化動向の比較をおこなった (Boxell et al. 近刊)。研究における発見が個々の政治分極化基準によって左右される程度を減らすため、我々はこれまで関連文献で用いられてきた8つの基準をもとにあらたに1つの標準化指標を作成した。なおこれまでの尺度とは、Abramowitz and Saunders (2008) のイデオロギー整合性の尺度、Mason (2015) の党派的ソーティングの尺度などをさす。図2には、我々の指標の1972年から2016年にかけての動向を示した (1996年に値が1となるように標準化した)。本期間をとおし分極化には安定した上向きの動きがみられる反面、インターネットの勃興に対応する変節点を示す兆候はまったく確認できない。1996年以前の動向だけみても、政治的分極化の説明においてインターネットが果たし得る役割は限られていそうだ。

くわえて図3が示すように、分極化は1996年から2016年にかけて高齢者 (65+および75+の年齢層) のほうが青年 (18-39の年齢層) よりも急激に進行した。さらに、予測インターネットアクセスを計る尺度として人種や教育といったその他の人口学的変数を取り入れたより包摂的なものを用いた場合、1996年においてインターネットアクセスを享受していた可能性が最も低い人口学的諸集団のほうが、1996年においてインターネットアクセスを享受していた可能性が最も高い人口学的諸集団よりも、大きな分極化の変化を被っていたことが確認できた。

図3 さまざまな年齢層の政治分極化 (1996-2016)

出典: Boxell et al. (近刊).

インターネットないしソーシャルメディアへの直接的なアクセスが政治分極化の主要要因であるとすれば、予想される動向はこれと正反対になるはずだ。高齢者 (65+) が選挙キャンペーンにかんする2016年のニュースをオンラインで視聴していた可能性は、青年 (18-39) のおよそ半分であり、ソーシャルメディアを利用していた可能性はさらに少ない。それにもかかわらず、最大の政治分極化を被ったのはこの相対的年長者の層なのだ。これら事実を念頭におけば、諸年齢層にわたるインターネットアクセスへの反応の大きな不均一性、あるいは諸年齢層にわたる相当な波及効果を考慮しないまま、インターネットないしソーシャルメディアが現在みられる政治分極化の主要要因であるとする物語を作り上げることはできなさそうだ。

以上の発見は、インターネットないしソーシャルメディアが政治分極化に及ぼす影響を否定し去るものではない。事実、インターネットが僅かながら影響をもつ可能性を示す実証データも存在する。Lelkes et al. (2017) は恐らくは外生的だと思われる管路敷設権立法 (right-of-way legistlation) の変化を援用しつつ、ブロードバンドの普及が対象カウンティにおける感情的分極化 (affective polarisation) を一定程度強めたとの主張をしている。ただ同著者らは 「我々は、ブロードバンドが党派的反感の強まりを引き起こした唯一の原因などと主張するものではない。あるいは主要な原因ですらないかもしれない … 感情的分極化は少なくともインターネット利用が始まる二十年前には強まり始めていた」 と述べ、自らの発見を穏当なものにとどめている。またこれら研究結果は、諸年齢層にわたる感情的分極化の違いを説明するものでもない。

ところで、2016年の選挙結果をインターネットおよびソーシャルメディアの責めに帰すよく似た物語がある。選挙後、ヒラリー・クリントン氏は、自身の敗北の一因はフェイクニュースとFacebookだったと仄めかした。我々の論文では、人口学的諸集団にわたり投票率を比較することで、2016年の選挙にインターネットが及ぼした影響についても調査している。ドナルド・トランプ氏がインターネット利用性向の相対的に高い人口学的諸集団から獲得した票の比率が、以前の大統領達よりも大きかった旨を示す実証データはまったく確認されなかった。じっさいのところ、我々の点推定値はそれと正反対の構図を示唆している – トランプ氏はインターネット利用性向の高い人や実際のインターネット利用者のあいだでは比較的振るわなかったようなのだ。トランプ氏の支持者に占めるソーシャルメディア利用者の割合、および人口学的諸集団をとおしてみた投票率の違いを調べたHampton and Hargittai (2016) も同様の結論に至っている。

今日の合衆国には諸政治集団のあいだに相当な断裂がさまざま存在し、しかもこれら断裂が埋まってゆく気配もみえない。政治分極化やポピュリスト的な大統領候補の席巻を理解しようと試みるさい、インターネットやソーシャルメディアをやり玉に挙げたくなる気持ちも分からなくはない。しかしながら、人口学的諸集団にわたる基本動向は、どちらの現象を説明するにしてもインターネットが大きな役割を与えるような物語を支持するものとはなっていない。メディア消費は従来型メディアを離れこうした新たなプラットフォームに向かうシフトを続けており、我々もまたこれらプラットフォームの利用形態およびその政治領域への影響を注視し続けてゆく必要がある。だが、前述の結論を覆す新たな実証データが現れるまでは、FacebookフィードやGoogle検索に代わる何かがあれば我々の直面している政治問題が解決されるなどと考えるべきではない。

参考文献

Abramowitz, A I and K L Saunders (2008), “Is polarization a myth?”, The Journal of Politics 70(2): 542—555.

Adamic, L A and N Glance (2005), “The political blogosphere and the 2004 US election: Divided they blog”, Proceedings of the 3rd International Workshop on Link Discovery: 36–43.

An, J, D Quercia and J Crowcroft (2014), “Partisan sharing; Facebook evidence and societal consequences”, Proceedings of the Second ACM Conference on Online Social Networks: 13–24.

Bakshy, E, I Rosenn, C Marlow and L Adamic (2012), “The role of social networks in information diffusion”, Proceedings of the 21st International Conference on World Wide Web: 519–528.

Boxell, L, M Gentzkow and J M Shapiro (2017), “A note on internet use and the 2016 election outcome”, Working Paper.

Boxell, L, M Gentzkow and J M Shapiro (forthcoming), “Greater internet use is not associated with faster growth in political polarization among US demographic groups”, Proceedings of the National Academy of Sciences.

Colleoni, E, A Rozza and A Arvidsson (2014), “Echo chamber or public sphere? Predicting political orientation and measuring political homophily on Twitter using big data”, Journal of Communication, 64:317–332.

Conover, M D, J Ratkiewicz, M Francisco, B Goncalves, F Menczer and A Flammini (2011), “Political polarization on Twitter”, Fifth International AAAI Converence on Weblogs and Social Media.

Fiorina, M P, S J Abrams and J C Pope (2010), Culture war? The myth of polarized America, London: Longman Publishing.

Flaxman, S, S Goel and J M Rao (2016), “Filter bubbles, echo chambers, and online news consumption”, Public Opinion Quarterly 80(S1): 298–320.

Gentzkow, M (2016), “Polarization in 2016”, Toulouse Network for Information Technology Whitepaper.

Gentzkow, M and J M Shapiro (2011), “Ideological segregation online and offline”, Quarterly Journal of Economics, 126(4): 1799–1839.

Gruzd, A and J Roy (2014), “Investigating political polarization on twitter: A Canadian perspective”, Policy & Internet 6(1): 28–45.

Halberstam, Y and B Knight (2016), “Homiphily, group size, and the diffusion of political information in social networks: Evidence from Twitter”, Journal of Public Economics 143: 73–88.

Hampton, K N and E Hargittai (2016), “Stop blaming Facebook for Trump’s election win”, The Hill.

Ingram, M (2017), “Hillary Clinton blames the Russians, Facebook, and fake news for her loss”, Fortune.

Iyengar, S, G Sood and Y Lelkes (2012), “Affect, not ideology: A social identity perspective on polarization”, Public Opinion Quarterly 76(3): 405–431.

Lelkes, Y, G Sood and S Iyengar (2017), “The hostile audience: The effect of access to broadband internet on partisan affect”, American Journal of Political Science 61(1): 5–20.

Mason, L (2015), “I disrespectfully agree: The differential effects of partisan sorting on social and issue polarization”, American Journal of Political Science 59(10): 128–145.

Pariser, E (2011), The filter bubble: What the internet is hiding from you, New York, NY: Penguin Press.

Pew Research (2014), Political polarization in the American public, Research report, Pew Research Center.

Pew Research (2016), Partisanship anolitical animosity in 2016, Research report, Pew Research Center.

Sunstein, C R (2001), Republic.com, Princeton, NJ: Princeton University Press.

Sunstein, C R (2007), “Sunstein on the internet and political polarization”.

Sunstein, C R (2009), Republic.com 2.0, Princeton, NJ: Princeton University Press.

Sunstein, C R (2017), #Republic: Divided democracy in the age of social media, Princeton, NJ: Princeton University Press.

Endnotes脚注

[1] See https://trends.google.com/trends/explore?date=all&geo=US&q=%2Fm%2F02shm1 を参照


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