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ローラ・ラルストン「銃と麻薬と経済開発」

LAURA RALSTON “Guns, Drugs and Development” (blogs.worldbank.org, April 4, 2014)


Gunspic
不法取引は西アフリカにおいて目新しいことではないが、その規模は目を引くものとなっている。マリ北部からガンビアにかけて、密輸業者たちは燃料、タバコ、必需食料品を数十年に渡って取引してきた。古くからの貿易路や部族間の繋がりによって、非合法の国際取引は伝統的な商習慣と足並みを揃えて成長してきているのだ。

モロッコの大麻はこの地域に現れた不正取引商品の最初のひとつで、1990年代に登場した。その後、南アメリカのコカインがそれに続いたが、これはヨーロッパでの需要の高まりを受けたところもある。この地域の反乱軍が力を発揮してくるにつれ、密輸武器市場がここ10年を通じて拡大してきており、そうした反乱軍にはニジェールやマリ内の分離独立運動やらナイジェリアのボコ・ハラムやデルタ、コートジボワールの若き愛国者などがある。石油ダイヤモンド木材といった価値のある天然資源は不法に獲得され、犯罪や反乱活動を支えるための現金を得るために頻繁に取引されるのだ。

こうした違法な流れの大きさの推定はバラバラだが、年間数十億ドルにも上っており、不法取引がこの地域で最も実入りの良い経済活動となるとともに、伝統的な地元の所得源を弱らせている。多岐にわたる不法取引のネットワークは地域全体に及んでいる。地元市場向けのもの(武器、大麻)もあれば、先進国の消費者をねらったもの(コカイン、ヘロイン、ダイヤモンド)もある。

地域内の不安定性が不法取引への注目度を高めてきており、不法取引による収入がもたらす悪影響は既に燃え盛っている火に油を注ぐ形となっている。最近のいくつかの研究は、2011年のマリ北部での反乱、サハラにおける組織化された犯罪による不安定の増大、ギニア・ビサウの政治危機、そしてより広いレベルにおいてはこの地域にまたがる安全保障問題に対する、不法取引ネットワークの直接的な繋がりの役割を強調している。

不法取引は安全保障問題だけではなく、開発における課題でもある。組織化された犯罪は、国家の発展や平和構築を直接的に妨げる。不法取引がどのように西アフリカにおける国家の脆弱性や開発へ作用するのかをよりよく理解するため、先般私たちはこの問題についての研究者たちと意見交換をおこなった(このイベントの記録へのリンクはこちら)。いくつかの事前の発見には次のようなものがある。

不法取引と脆弱性は必ずしも手に手を取って進むものではない。不法取引は事実上あらゆるところで起こっており、そこには先進国も脆弱な国もある。しかしながら、不法取引の悪影響に対して他の国よりもずっと大きな耐久性を示す国もある。この理由は、不法取引による脆弱性をもたらす既存の要因への作用にあるのかもしれない。ギニア・ビサウを例にとろう。この国は一部の手に政治力が集中した歴史、政治に首を突っ込んだ軍隊、国内に蔓延する汚職といった特徴を持つ弱い国で、不法取引に対してとりわけても弱くなってきている。ガーナやセネガルのようなもっと耐久力のある国では、良質のインフラと発展した金融セクターが資金洗浄や小規模空輸1 への機会を増やしているが、政治過程は大部分そこから遮断されているのだ。

不法取引が脆弱性を悪化させるところでは、それを引き起こすいくつもの経路がある。

1.反乱軍や犯罪集団への資金供給:不法取引は貿易に補完的な技能や資産(たとえば商品を輸送する車両、領域の支配力、犯罪ネットワークへのアクセス)を持つ反乱軍や犯罪者へ資金源をもたらす。彼らは既に非合法に運営されているため、新たな犯罪活動を行うことによる追加的な危険性は彼らにとっては比較的薄い。

2.暴力に関係する技能に恩恵を与え、促進する:強制力、攻撃、あるいは強迫であれなんであれ、不法取引は暴力への需要を生み出す。(たとえば農作物の栽培などと比べれば)不法取引はそこまで労働集約的ではないといういう事実があるために、今のところこうした影響は限定的だ。しかしこの地域で麻薬の販売市場が発展することになれば、この地域では若い男性の多くが既に暴力に関係する多くのリスク要因、すなわちトラウマ的な体験の被害、家族構造の解体、経済的機会の不足を示しているために、西アフリカは危険にさらされることになる。

3.国家当局への挑戦:投資を行う意思が国家にないような縁辺地域では、不法取引業者たち(あるいは彼らを支援する当局者)が地元の人々に対して仕事や公共財・サービスを提供することで支持を勝ち取る場合があるのだ。地場の不法取引を真に根絶するためには、国家は不法取引業者たちを競争で締め出す必要がある。これは多くの場合、法執行へと軸足を移す前に合法的な財・サービスの提供に焦点を当てるということを意味する。

4.政策決定者のインセンティブを動かす:不法取引は天然資源の採掘のようなものだ。両方とも大きな経済的レントを手中に入れ、これは政府職員のインセンティブを法執行から離して横領へと向かわせる可能性がある。ガバナンスの弱い国では不法取引は国政の一部となる場合があり、ギニアビ・ビサウでは一部の政府職員が有権者の広い利益を犠牲にしてコカインの不法取引に対して積極的に投資及び支援を行ったことが明らかとなっている。

5.競合グループ間に対立をもたらす:公的な制度がない場合、所有権や契約は当事者間の圧力、強迫、暴力によってのみ強制することができる。ライバル関係にある不法取引グループが最良の取引ルートの支配や政治的支援者へのアクセスを求めて競争することにより、局所的な暴力が増すことになる。

今後の記事では、こうした課題について可能な対応策をより深く探究するとともに、この点について読者諸兄の考えも頂ければ幸いだ。今まで仕事上で不法取引に出くわしたことはあるだろうか。上の5つの経路は皆さんの現場経験に照らして整合的だろうか。これ以外に不法取引が開発に影響を与える場合はあるだろうか。不法取引に対する開発分野における対応策で成功したものをこれまでで目にしたことはあるだろうか。

この研究について私たちを助けてくれた以下の3人には特に感謝したい。

ヴァンダ・フェルバブ=ブラウン(ブルッキングス研究所)
ブルック・ローソン(USAID;米国国際開発庁)
ダヴィン・オレガン(ACSS;戦略研究アフリカセンター)

(本エントリは世界銀行のウェブサイト使用条件に従って掲載しています。The World Bank: The World Bank authorizes the use of this material subject to the terms and conditions on its website, http://www.worldbank.org/terms.)

  1. 訳注;密輸用の空輸を指している。例えば、近年ラテンアメリカからのドラッグは、船で西アフリカにやってきた後にダカールなどの空港を利用してマリ北部などの密輸商路へ空輸されているという話がある。 []

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