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サイモン・レン-ルイス 日本とその公的債務負担 (2017年8月18日)

Japan and the burden of government debt  (Mainly Macro, Friday, 18 August 2017)

Posted by Simon Wren-Lewis

日本について十分書いているとは言えない.今となっては,私の投稿の一部がありがたいことに日本語に翻訳されている1のだから,その埋め合わせをしてみるべきだろう.実際,ちょうど日本経済について書くべき大変よい理由がある.それは,非常に強かった2017年第2四半期のパフォーマンスである.年率換算した成長率は4%で,それに比べて英国は1.2%だ.最近の日本の成長に関して特に励まされる点は,貿易でなく内需に主導された成長であるという点だ.過去において日本は,英国と正反対の問題を抱えていたように思われる.すなわち,成長が貿易依存であり,内需が弱かった.

この近年の成長は,単に他国と比べて劣っていた今までのパフォーマンスを帳消しにしたというだけではない.GDP成長率で比較するのは日本については誤解を招く.なぜなら,(英国や米国と違って)日本への移民流入はほとんどないからで,したがって,この種の比較には一人あたりGDPを使うほうがよい.(ノア・スミスが指摘している通り,これでもまだ日本にとって不利な比較になってしまうかもしれない.というのは,日本では人口の高齢化が進んでいるからである.) 2006年から2016年までの間,日本の一人あたりGDPは約5.5%増加した.それと比べ,米国は5%近辺であり,英国は約3%であった.他国と比べて悪くないと言えるが,しかしこれらどの国もすべて,あの不況からの回復はもっと力強いものであるべきだったのだ.

力強い成長がよいニュースである理由は,インフレ率がかくも低く(約0.5%),インフレ目標の2%をずっと下回っているからだ.政府は成長を刺激しようと,控えめな財政刺激と大規模な量的緩和(短期金利だけでなく長期の金利までちょうどゼロ),さらにさまざまな構造改革を実施している.しかし,これらすべてに関して目立つのは政府の債務のGDP比が125%に達し,まだ増加中であることだ(OECD Economic Outlook基準).これは,ギリシャとイタリアを除けば他のどのOECD諸国と比べても高い.

比較的高い成長率と高い政府債務水準の組み合わせというのは,経済理論が誤っていたことを示すのだろうか? (ビル・ミッチェルはそう言っている.)ハイパワードマネーとインフレ率の関係と同様,政府債務と成長の間のどんな関係も,利子率がゼロに張り付いている時には働かない.高い政府債務は民間投資をクラウドアウトする可能性がある(異論を唱えるものもいるが).しかし,実質長期金利がゼロでインフレ率がゼロ近傍にある場合はそうした可能性はない.高い債務が労働供給の妨げになる可能性もある.しかしやはり,利子率がゼロの場合にはその可能性はない.債務が将来世代の負担になるということも,実質利子率が成長率よりずっと低い場合には起きない.

もちろん,ほとんどの人々はこれほどの高い債務水準を本気で心配するだろう.「市場」が反乱を起こすのではないかと.しかし,市場が債務の買い入れをやめるとしたら,デフォルトや猛烈なインフレを予測したときだけであり,そして自国通貨を持つ政府をデフォルトさせる方法は存在しない.また,これほど利子率が低い際にデフォルトを選択するということもありえない.これこそが基本的な真実,我らが英国の指導者たちがあえて告げずにいる(そして,真実でないふりをしている)真実なのである.

だが,成長がついにインフレに転じ,利子率が上昇したら何が起こるのだろう.その時,債務は問題にならないだろうか? 問題となる可能性はあるが,ただし長期的にしか問題とはなりえない.したがって,政府はたっぷり時間をかけて,日がさしている間に屋根を直しておくことができる2.日本は現在,高水準の政府債務についてたしかに憂慮している.しかし,日本は正しくも,低成長と低インフレの組み合わせについてもっとずっと憂慮している.この意味で,日本は他の諸国に対してよい手本を示したのである.

  1. 訳注: こちらをどうぞ []
  2. 原注: 日がさしている間に屋根を直しておけというのは,キャメロンとオズボーンの説教のうち私が賛同する稀な例の1つである.彼らの説教の問題は,彼らがこの言葉を使ったときの英国経済は,実際は非常な苦境にあったという点である(苦境にあったことは,利子率が低かったことから明らかである). []

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