アレックス・タバロック「二転三転クルーグマン」

Alex Tabarrok “The Austerity Flip-Flop” (Marginal Revolution, January 5, 2014)

補足:このポストだけでなく、財政派(クルーグマン)VSマーケット・マネタリストという形で幅広く論争が起こっているので、興味ある方はサムナー、ベックワース、デロング、ノア・スミスなどのブログも参照のこと。


2013年4月28日にポール・クルーグマンは、2013年はマーケット・マネタリストのテストだとはっきりと言った。

しかしマイク・コンツァルが指摘するように、財政政策が引締められる中でFedはより拡張的な政策を採用していて、実質的にマーケット・マネタリストの見方が正しいかのテストとなっている。

昨日(2014年1月4日)[邦訳 [1] … Continue reading ]ではしかし、ポール・クルーグマンは次のように言っている。

(中略)2013年に経済成長が崩壊しなかったことで、財政政策は重要じゃないということがある程度証明されたというマーケット・マネタリストの主張を、僕は真剣に受け止めてはいない。

わけがわからないよ、ということが二つある。一つは、テストだと言いだしたのはマーケット・マネタリストではなくて、手袋を投げつけたのはコンツァルとクルーグマンだ。つまりクルーグマンは自分自信の(4月の)主張を真剣に受け止めてないと言っているわけだ。もう一つは、4月のクルーグマンは自分の主張を真剣に受け止めていたと思われることだ。おそらくは以下のことがその理由だ。

(中略)結果はマネタリストにとっては分が悪いように見える。Fedによる政策と政策アナウンス双方の全くもって劇的な変更にも関わらず、財政緊縮は被害をもたらしているようだ。

今や結果が出たにも関わらず、ポールは南ヨーロッパと比べればアメリカの財政緊縮はそれほど酷くない、あるいは非常に酷いけれども「他のこと」で相殺されるほどに小さいと主張している。

アメリカの財政緊縮は、非常に酷いものではあるけれども、その激しさは南ヨーロッパで起こったことには程遠い。アメリカの緊縮は、これは僕が言いたかったことでもあるけれど、多かれ少なかれ他のことで単一年のうちに相殺されるほどに小さかった。

しかし2013年4月27日のポストでは、大きく異なったことを言っている(ここでポールは「他のこと」を名指ししているが、問題を小さくするどころかややこしくしていることにも注目)。

経済評論家の間では、深く沈滞した経済における財政緊縮政策はヨーロッパのものだと考えるような傾向がある。でも本当のところ、連邦政府の財政刺激は何年も前の話である一方で、州や地方政府は歳出削減を行ってきていて、ヨーロッパのよりは小さいけれども大した違いはない財政収縮というのが大体の話だ。景気後退が始まって以降、たくさんのベビーブーマー世代が定年を迎えていて、これは本来であれば支出の上昇をもたらすし、当然のことながら医療費も増やすものだったということを念頭に置いてほしい。民間部門は未だ債務解消を行っていて、これは経済を持続させるために政府がより多くの支出を行わなければならないということも考えてほしい。つまり、実際のところこれはとても酷い政策の絵図なんだ。

さらに面白いことに、極度のケインジアンであるポール・クルーグマンは今、私たちは長期へと向かいつつあると言っている。What A Good Year Won’t Prove[邦訳 [2]訳注;訳注1に同じ ]と題したポストで彼は次のように言っている。

2014年が比較的良い経済成長の年ならば、多くの人がそれをもってケインジアニスムへの何らかの反論とするだろうね。おい君たちは財政刺激なしには経済は絶対に回復しないとか言ってなかってけ?って。

いえ、言ってませんが。(タバロックによる注:リンク先の記事は2009年のもの)

現在の政策行動が全て失敗したとしても、長期においては自然発生的な経済回復が起こるんだよ…。

まあ公正を期すために、一つのテストは決定的ではないという点でクルーグマンには同意しておこう。経済は非常に複雑で、私たちはマクロ実験の制御を行っていないから、多くの物事が同時に進行している。しかし、とある頭のよろしいコメンテーター [3] … Continue reading は次のように言っている。

(中略)逃げ道を残す物言いを使っても、自分がはっきりと言っていたことのとおりに物事がいかない場合の結果からは免れられないし、正しいモデルが時々間違った予測をするという事実も免責にはならない。自分のモデルからインフレ緊縮が2009年2013年の「大きな危険」だと信じたのであれば、この危険が一切訪れなかったという事実はモデルに対する自信の信頼性を大きく引き下げるものなのであって、そしてそこで自分の信ずるところを修正することを拒否するのであれば、自分の信頼性を大きく引き下げるんだ。

追記:スコット・サムナーもEconlogで同様の反応をしている。

References

References
1 訳注;リンク先の邦訳は、正確にはクルーグマンのブログを再編集した配信記事の邦訳であるため、必ずしも完全に同じ文章ではない(一部省略あるなど)ことに注意。
2 訳注;訳注1に同じ
3 訳注;リンク先を見れば分かるが、クルーグマンのこと。次の引用部の取り消し線と「緊縮」「2013年」という修正は、タバロックによるクルーグマンに対する皮肉。
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