アレックス・タバロック「理系科目の男女差はみんなが思ってるようなのじゃないよ」

[Alex Tabarrok, “The Gender Gap in STEM is NOT What You Think,” Marginal Revolution, September 12, 2017]

NBER の新しい論文 (pdf) で David Card と Abigail Payne が STEM〔科学・技術・工学・数学〕の男女差についておどろきの新しい説明を提示している.通説だと,そうした男女差は女性に関わることであり,いろんな力がはたらいて――〔全般的な〕差別,性差別,適性,選択…お好みの要因をどうぞ――女性が STEM 分野で勉強しにくくなっているのだと考える.Card と Payne が言うには,男女差のかなりの部分は男性たちと彼らの問題に関わるものだ.少なくとも,彼らが出している研究結果をぼくはそう解釈してるけど,どうも著者たちはじぶんたちが出した研究結果がどう通説と衝突するのかはっきり言っていないように思える.(ぼくが論文を誤読しちゃってるから? どうかな.)

著者たちが使ってるのはカナダの高校生の大規模データセットで,これには12年生(レベル4)の高校のクラスと成績と卒業してすぐに進学した大学の学科が含まれる.このデータを使って著者たちは女性に STEM 進学の態勢が整っていることを見いだしている:

(…)高校最後の段階で,女性の全体的な STEM 学習進度は男性のそれとほぼ同水準にあり,〔大学で学ぶために〕必須の数学と自然科学コースの平均成績はわずかに男性を上回っている.だが,受講した STEM 関連コースは男女で異なっており,女性の方が生物学と化学をとる率が高く,物理学と微積分をとる率は低い.

高校卒業時点で女性も STEM 進学態勢が整っているとすると,「じゃあ,男女差をもたらしているのは STEM の学習進度に応じた進学選択のちがいか脱落率かのどちらかにちがいないな」と思う人も多いだろう.ハズレ.Card と Payne によれば,進路選択も脱落率も男女で似たようなものだという.じゃあ,女性より男性の方が STEM 学位をとりやすいのはどういうわけだろう?

男女差を生み出している主な要因は,大学進学率が男性 (32%) より女性 (44%) の方が高い男女差にある.STEM 進学態勢のない女性が同じく STEM 進学態勢のない男性と同じ率で大学に進学するものと単純に仮定すると,STEM 進学態勢のある新入生の男女比率格差は 14 パーセントポイントから 2 パーセントポイント未満にまで低下する.

さらに:

平均で見ると,UP(タバロック註記:「大学進学準備」)の数学と自然科学コースのにおける平均成績は男女でほぼ変わらないが,英語・英文学/フランス語・フランス文学をはじめ大学ランキング上位6スコア評価に含まれるコースの成績は女性の方が高い.この比較優位が,高校卒業時に STEM 学習進度に応じて STEM 専攻に進む確率の男女差の相当部分を説明する.

(行き過ぎなくらい)単純に言えば,大学に進めるくらいすぐれた男性は STEM が得意な男性しかいないってことだ.一方,女性は STEM 以外の分野にも STEM 分野にも進めるくらいすぐれている.このため,大学生全体をみると,STEM 以外の分野は女性が多数を占め,男性は STEM 分野で生き延びることになる.(前者は数学的に確実だけど,後者が正しいのは男性学生の現在の絶対数を踏まえるかぎりでのことだ.) この筋書きが有効かどうかはわからないけど,理論として魅力的な点は,最底辺の男性が労働市場から懸念すべきほどに退出しているのと整合する点だ.

こうした研究結果を受け入れるなら,男女差研究産業は見当違いなことに関心を絞ってしまっていることになる.真の男女差とは,男性が STEM 以外のあらゆるところでの競争に苦闘しているということだ.

Hat tip: Scott Cunningham.

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