アレックス・タバロック 「猫はお好き?」(2006年1月22日)/「トキソプラズマという名の人形使い」(2009年7月18日)

●Alex Tabarrok, “Do you love cats?”(Marginal Revolution, January 22, 2006)


その驚くべき特性のために、進化生物学者の間で持(も)て囃(はや)されている寄生虫の一つがトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)だ。トキソプラズマは、猫の腸内に寄生して猫の糞(ふん)の中に卵を産み付ける。その糞が体外に排出されると、ネズミに食されることが多い。トキソプラズマは、ネズミから再び猫(新たな宿主)の体内に戻るのだが、どうやってかというのが驚きなのだ。トキソプラズマは、(卵入りの)糞を食べたネズミの脳に感染して、ネズミの行動をそれとなく――己の繁殖力を高めるような方向に――変化させる。トキソプラズマに感染したネズミは、猫をそれほど怖がらなくなり、そのせいで猫の餌食となる(猫に食べられる)可能性が高まるのだ!

まさかの展開がもう一つ。トキソプラズマは、多くの人間にも感染するらしい

—————————————————————

●Alex Tabarrok, “The Return of the Puppet Masters”(Marginal Revolution, July 18, 2009)


数年前に遡(さかのぼ)るが、「猫はお好き?」と題した拙エントリーで次のように語った。

その驚くべき特性のために、進化生物学者の間で持(も)て囃(はや)されている寄生虫の一つがトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)だ。トキソプラズマは、猫の腸内に寄生して猫の糞(ふん)の中に卵を産み付ける。その糞が体外に排出されると、ネズミに食されることが多い。トキソプラズマは、ネズミから再び猫(新たな宿主)の体内に戻るのだが、どうやってかというのが驚きなのだ。トキソプラズマは、(卵入りの)糞を食べたネズミの脳に感染して、ネズミの行動をそれとなく――己の繁殖力を高めるような方向に――変化させる。トキソプラズマに感染したネズミは、猫をそれほど怖がらなくなり、そのせいで猫の餌食となる(猫に食べられる)可能性が高まるのだ!

まさかの展開がもう一つ。トキソプラズマは、多くの人間にも感染するらしい

さて、最新の研究結果を紹介しておこう。

大半の国では、2~6割の人間がトキソプラズマに感染する可能性を秘めている。・・・(略)・・・人間がトキソプラズマに感染すると、反応速度が鈍って交通事故に遭うリスクが高まることが我々の前向きコホート研究によって初めて立証された。我々の研究によると、・・・(略)・・・抗トキソプラズマ抗体価が高い感染者は、交通事故に遭う確率がおよそ16.7%――トキソプラズマに感染していない人物の6倍以上の値――に上(のぼ)るとの結果が得られている。

血液型がRh陽性であるようなら、トキソプラズマに感染したとしても、交通事故に遭うリスクがいくらか抑えられるようだ(詳しくは、リンク先の論文を参照されたい)。ところで、トキソプラズマに感染した人間は、ネズミがそうであるように、猫に食べられる確率が上がったりするんだろうか? この件については詳しいことはまだわかっていないようだが、「上がるに違いない」というのが私の見立てだ。

Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts