スコット・サムナー「消費者物価指数と住宅価格」(2018年5月11日)

[Scott Sumner, “The CPI and housing prices,” TheMoneyIllusion, May 11, 2018]

9年前のことだが、住宅価格の計測間違いで消費者物価指数 (CPI) がどう歪んでいるか論じたポストを書いた:

朗報! 住宅バブル崩壊なんてなかったんだよ!

――少なくとも、アメリカ政府によればね.

労働統計局によれば、住宅価格は過去12ヶ月で 2.1% 上昇しているそうだ
それがなんで重大かって? ありとあらゆる理由があるけれど、まずは,実際に起きたことを探ってみよう。労働統計局によれば、財とサービスのコア・バスケットの40パーセント近くを住宅が占めている。

カテゴリ 重み インフレ率
住宅 39 % 2.1%
それ以外 61% 1.4%
全体 100% 1.7%

かりに、2.1% 上昇するかわりに住宅コストが過去12ヶ月で 2.1% 下落していたとしたらどうだろう? その場合、コアインフレ率はゼロということになる。どちらがもっともらしい数字だろう? 過去1年間のかなりにわたって、住宅価格は月あたり 2% 以上で下がり続けてきたんだよ。

ブルームバーグ』で、同様の結論に達した新しい学術研究が伝えられている:

新研究によれば、CPI は物価変動の反映が遅れるという――さらに、同じくらい重要な点として、CPI は物価が上がったり下がったりする度合いを過少に示してしまう。この問題の出どころにさかのぼると、政府による住居費の計算方法にたどりつく。住居費は、この物価指標の3分の1を占める。

3名の経済学者が開発した代替の計測法では、物価が動くとすぐさまこれを把握し、さまざまな変化の全域を示している。大恐慌以来で最悪の景気後退が起きた 2008年〜2009年にもしもこれが存在していたなら、労働統計局が公表した数字よりはるかに深刻なデフレを示していたことだろう。新研究によれば、大不況のあいだに公式の CPI はインフレ率を年率 1.7 パーセントポイントから 4.2 パーセントポイントも過大に示していたという。さらに、もっと近年では、反対方向の問題も生じている:年率の数値が 0.3 から 0.9 パーセントポイントも過少に示されていたと著者たちは書いている。さまざまな予想では公式数値のたった 0.1〜0.2 パーセントポイント の上下変動で大騒ぎしているのを考えると、これは途方もない落差だ。

どれだけ落差が大きかったかわかるグラフを示そう:

実のところ、今回の訂正はぼくの予想よりもちょっとばかり大きかった。だが、彼らの手法が完璧でないとしても、基本的な論点は正しいことにほぼ疑問はない。経済の実際の市場物価を反映する代替の物価指標に比べて CPI は上下変動がおとなしい。

彼らが指摘している問題は、ぼくがかつて2009年に言及した問題に似ている。労働統計局は既存の契約での賃料支払いを計算につかっている。その数字には、現時点で賃貸物件が市場でいくらで貸し出されているのかが反映されない。不況時には、新しい店子が賃貸料1〜2ヶ月分を無料にしてもらえることはめずらしくない:

今回の研究を行なったのは、ペンシルバニア州立大学スミールカレッジオブビジネスの Brent Ambrose と Jiro Yoshida、そしてカリフォルニア大学 Merage Schoold of Business の Edward Coulson だ。研究の最新版は学術論文「住宅賃料とインフレ率」のタイトルで掲載されている。CPI との主なちがいは、新研究では新しい賃貸物件のみ(新しい店子の賃貸契約や以前からの店子が更新した契約を含む)を計測している点だ。これと対照的に、労働統計局は賃貸契約が直近の月に更新されていない店子が払った賃料も含めている。これにより、CPI は市場状況の変化を遅れて拾い上げることになっている。

CPI の重大な欠点にスポットライトを当てた Ambrose, Yoshida, Coulson の3人に拍手。多くのプロ経済学者たちはあまりに無批判に CPI を使ってしまっている。

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