タイラー・コーエン 「これまでに書かれた博士論文の中で最高傑作はどれ?」(2014年5月20日)

●Tyler Cowen, “Which are the greatest dissertations?”(Marginal Revolution, May 20, 2014)


ロバート・サンダースが次のように書いて寄こしてきた。

先日は、貴殿のブログでジョセフ・スティグリッツの博士論文紹介していただき感謝しています。毎度のことながら、ノーベル賞受賞者の博士論文を紐解くというのは実にいいものですね。

いつの日かブログで、「これまでに書かれた博士論文の中で最高傑作はどれか?」というテーマで一席ぶつのもありかもしれないと考えたことがあります。数ある学問分野の中でも貴殿が一番お詳しいのは、もちろん経済学ということになるでしょうが――経済学の世界だと、最高傑作はジョン・ナッシュ(pdf)の博論か、ケネス・アローの博論のいずれかということになったりするのでしょうか?――、物理学や生物学、化学、歴史学といったその他の学問分野についても貴殿がどういう御意見をお持ちか気になるところです。文学(英文学)の博士論文というのは(文字がどう綴られているかは別として)果たしてどんな見た目をしているのか存じませんが――小説みたいな感じなんでしょうか? それとも、短編集みたいな感じなんでしょうか?――、文学の分野についても貴殿の御意見が気になるところです。コメント欄でも興味深い意見が交わされることになるのではないかと思う次第です。

最後になりますが、長年にわたり、次から次へと矢継ぎ早に優れたブログエントリーを投稿していただき感謝する次第です。

経済学の分野だと、マイケル・スペンス(Michael Spence)の博士論文(就職市場におけるシグナリングの役割がテーマ)が思い浮かぶ。あとは、フランク・ナイト(Frank Knight)の『Risk, Uncertainty, and Profit』(「危険・不確実性および利潤」)もだ――ポール・サミュエルソンの(その後『経済分析の基礎』へと結実することになった)名高い博士論文は、数理経済学を勢いづかせるきっかけとなったと同時に、数理経済学を間違った方向に向かわせることにもなったというのが私の意見だ――。文学(英文学)の分野だと、ハロルド・ブルーム(Harold Bloom)の(P. B. シェリーに関する)博士論文が思い浮かぶが、他にも候補はたくさんあるだろう。その他の学問分野について思い付くままに挙げると、マリ・キュリー(Marie Curie)の博士論文では早くも「放射性物質」に目が向けられているし、ジェーン・グドール(Jane Goodall)の博士論文ではチンパンジーが研究対象となっている。他にも、クロード・シャノン(Claude Shannon)の(情報理論にまつわる)博士論文に、マックス・ヴェーバーの(プロテスタンティズムの倫理にまつわる)博士論文、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』もある。ガウスチューリングの博士論文なんかもどうだろうか? すべての分野をひっくるめての一番を決めるとなると、ド・ブロイ(de Broglie)の(ド・ブロイ波(物質波)の構想を提唱した)博士論文(pdf)ということになるだろうか?

カール・マルクスの博士論文(「デモクリトスの自然哲学とエピクロスの自然哲学との差異」)は、私であれば候補には入れないだろう。20世紀の半ばから後半にかけて活躍したロシアの数学者の面々はどうだろうか? 彼らの主要な貢献は、かなり若い時分に思い付かれたものであり、博士論文としてまとめられている例もいくつかあるかもしれない。

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