タイラー・コーエン 「19世紀前半のイギリスでベストセラーを連発した超売れっ子作家と言えば?」(2005年9月18日)

●Tyler Cowen, “Sales of new novels and romances during the Romantic period”(Marginal Revolution, September 18, 2005)


ロマン主義の時代(19世紀前半)のブリテン諸島(イギリス)で23作品にも及ぶベストセラー小説を生み出した作家がいる。それは誰だかわかるだろうか? 答えに目をやる前に少しばかり予想してもらいたいと思う。

その答えは誰かと言うと・・・・・、

ウォルター・スコット〔日本語版のウィキペディアはこちら〕だ。『ウェイヴァリー』(1814年出版)の売り上げはおそよ4万部。『ガイ・マナリング』の売り上げはおよそ5万部。ベストセラーランキングの第23位に名を連ねるスコットの本(タイトルは不明)の売り上げはおよそ1万部。第24位はフランシズ・バーニーの『カミラ』。売り上げはガクッと落ちて4千部だ。ウォルター・スコットは(小説部門に加えて)詩部門の売り上げランキングでもトップ。僅差の第二位にバイロンが続く。トマス・ムーアトーマス・キャンベルサミュエル・ロジャース、そしてロバート・サウジーは当時の詩部門の売り上げランキングでコールリッジワーズワースよりも上位に名を連ねている。

ダン・ブラウンの作品がベストセラーリストに名を連ねているのを目にしてつい嘆きたくなる気持ちに襲われることがもしかしたらあるかもしれないが、そんな時には是非とも上の事実(ウォルター・スコットの独り勝ち)を思い出してもらいたいものだ。(こと文学作品の市場に関しては)「独り勝ち」(”winner-take-all”)現象はこれから先の未来に待ち構えている目新しい現象というよりは過去のものとなりつつある(古めかしい現象という)面があるのだ。

前掲の売り上げの数字はウィリアム・スト・クレア(William St. Clair)の出色の一冊である『The Reading Nation in the Romantic Period』から引用したものだ。この本は過去にもこちらのエントリー〔拙訳はこちら〕で話題にしたことがある。

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