ティム・ハーフォード 「クリスマスにまつわるエトセトラ ~陰鬱な科学が送るアドバイス(その1)~」(2005年12月20日)

●Tim Harford, “Seasonal advice from the dismal science, Part 1 of 3”(Marginal Revolution, December 20, 2005)/(その2)の拙訳はこちら、(その3)の拙訳はこちら


*クリスマスカードの送付先リスト? そんなもの、今すぐに焼き払ってしまえ

誰もが心の中ではわかっているに違いないが、クリスマスカードのやり取りは、善意を表現する(この時期特有の)手段というよりは、長年にわたる抗争(あるいは、応酬)(vendetta;ヴェンデッタ)のようなものだ。かつてのお隣さんであるグリンチさん夫妻から今年もカードが送られてきたとしよう。それって、遠く離れた今もなお、我が家と接触を保とうとする彼らなりの真摯な努力を意味しているのだろうか? それとも、「こちら側から先に、カードのやり取りをやめてなるものか」という思いの表れ(一種の義務感に駆られた行為)なのだろうか? 経済学者のトマス・シェリング(Thomas Schelling)は、次のような「破産手続き」を提案している。みんな一斉にクリスマスカードの送付先リストを焼き払ってしまうがよい。そうすれば、また最初から始めることができる。正真正銘の善意だけに突き動かされたクリスマスカードのやり取りを、また一から始めることができるのだ、と。さあ、シェリングのアドバイスに従おうではないか。そうすれば、あなたから送られてくるカードに苦しめられている大勢の人々(ほぼ赤の他人)が救われるだけでなく、あなた自身のためにもなるのだ(もっと詳しい話は、こちらを参照してほしい)。

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*我が子に「火と硫黄の世界」(地獄の責め苦 Fire and brimstone)を体験させよ。ただし、早めに切り上げること。

ロバート・バロー(Robert Barro)とレイチェル・マックリアリー(Rachel McCleary)の共著論文(pdf)では、宗教と経済成長とのつながりが探られているが、2つの注目すべき結果が得られている。まず1つ目の結果は、「天国や地獄は存在する」と信じることは、ビジネスに好ましい影響を及ぼす、ということ。おそらくその理由は、天国や地獄の存在を信じる人は、他人を信頼する傾向にあり、そのおかげで、面倒な訴訟手続き(あるいは、事細かな契約)に頼る必要性がその分減るからだと考えられる。2つ目の結果は、教会で過ごされる時間は、それほど有意義な時間とは言えない、ということ。教会でも誰かと接触を持つことはできるが、他の場所に行けば、もっと生産的なかたちで人とのつながりを築くことができる。子供の成功を願うのであれば、子供を教会に連れていき、神への恐れを植え付けることをお薦めする。ただし、一つの教会に長居し過ぎてはいけない。あちこちの教会を巡るべし。

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*テレビのリモコンに対する所有権を設定せよ

いくら強調してもしすぎることはないアドバイスだ。かつてロナルド・コース(Ronald Coase)は、次のように語った。交渉に伴う費用が小さくて、所有権が明確に確定している状況では、共有資源の利用をめぐる言い争い(いざこざ)は、いついかなる時でも、解決可能だ、と。どのテレビ番組を見るかをめぐって家族の間でいざこざが起こる理由は、テレビのチャンネルを選ぶ権利が誰の手にあるのかがはっきりしないためなのだ。いざこざを鎮めるには、こうすればいい。まず、テレビのリモコンに対する所有権を誰か一人に付与する。その後、大体30分ごとに、チャンネルを選ぶ権利をオークションにかけるのだ。そして、最も高い値を付けた「入札者」に、チャンネルを選ぶ権利を与えればよい。リモコンの所有権を誰が手にするかは、大して重要ではない。リモコンの所有権を誰が手にしようとも、最終的に選ばれる番組は同じになるはずだからだ [1] 訳注;いわゆる、「コースの定理」 。ところで、我が家では、番組選びは家長(paterfamilias)に任せる決まりになっている。
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アドバイスの続きは、また明日。

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1 訳注;いわゆる、「コースの定理」
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