ニック・ロウ 「タイムトラベルも不可能じゃない? ~国債(政府債務)の負担をめぐる論争への挿話めいたもの~」(2012年10月13日)

●Nick Rowe, “How time travel is possible”(Worthwhile Canadian Initiative, October 13, 2012)


東海岸に在住する住人の手からミルクをひったくって西海岸に在住する住人にミルクを譲り渡す。あなたがそうしたいと考えているとしよう。ただし、ひったくったばかりのミルクが腐らないうちに東海岸から西海岸までの間を高速で移動できる術は持っていないとしよう。

どうしたらいいだろうか? こうすればいい。

まずは東海岸に在住する住人の手からミルクをひったくる。そしてそのミルクを携えたまま数キロほど西に移動。そしてそこに住む誰かにこう掛け合う。「このミルクとあなたが持っているミルクを交換してもらえませんか?」。無事交渉成立と相成ったら新たに手に入れたミルクを携えて数キロほど西に移動。そして先ほどと同じようにそこに住む誰かに対してミルク同士の交換を申し出る。西海岸にたどり着くまで何度も同じことを繰り返せばいい。

100年後に生まれてくる未来人の手からミルクをひったくって今生きているあの人やこの人にミルクを譲り渡す。あなたがそうしたいと考えているとしよう。ただし、100年後の未来に連れて行ってくれるタイムマシーンは持っていないとしよう。

どうしたらいいだろうか? こうすればいい。

「数年後には返すから」。そう約束した上で若者たちからミルクを借りる。そしてすぐさまそのミルクを誰でもいいからあげちゃう。数年経過。(数歳年をとった)そこそこ大人の(旧世代の)若者たちにミルクを返さなきゃいけない。どうするか? 「数年後には返すから」と約束した上で新世代の若者たちからミルクを借りてそのミルクをそこそこ大人の(旧世代の)若者たちへの返済に充てる。数年ごとに何度も同じことを繰り返せばいい。そうこうするうちに100年が経過。旧世代の若者たちにミルクを返済するために新世代の若者たちからミルクを借りる・・・なんてことはしない。無理矢理ひったくるのだ [1] 訳注;税金という名で強制徴収する、という意味。

さて、ポール・クルーグマンの次の発言を味読されたい。

まずはじめに指摘しておきたいことがある。「将来世代」という表現は何とも曲者で『「将来世代」、「将来世代」』と口にしているうちにあれよあれよという間に罠にはまっちゃってた。そうなる可能性があるのだ。国債を財源とした財政出動はある世代の消費を増やす一方で新世代(下の世代)の消費を減らす。そうなる可能性は大いにある。ただし、そうなるのはどちらの世代も存命中の場合に限られる

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1 訳注;税金という名で強制徴収する、という意味。
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