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Archives for 12月 2013

アレックス・タバロック 「政府に進化を遂げたメキシカンマフィア?」

●Alex Tabarrok, “The Mexican Mafia”(Marginal Revolution, October 21, 2011)


メキシカンマフィア(Mexican Mafia)1 は刑務所内を本拠とする極めて規模の小さな(おそらく150~300人程度からなる)ギャング集団(prison gang)であり、南カリフォルニアにある刑務所内での彼らの影響の強さはかなりのものである。しかしながら、彼らの強力なコントロールは刑務所内にだけとどまるわけではない。メキシカンマフィアは南カリフォルニア中の何百というストリートギャングから収入の10~30%を「税金」として徴収しているのだ(相手のギャングの方が規模が大きいこともしばしばである)。ここで一つの疑問が頭をよぎる。刑務所の中から娑婆にいるストリートギャングに税金を課すなんてことがどうして可能となっているのだろうか? この疑問への回答はAmerican Political Science Review誌に掲載されているデイヴィッド・スカーベク(David Skarbek)の論文(“Governance and Prison Gangs”) (あるいはこちら(pdf)を参照)で与えられている-この論文ではメキシカンマフィアの組織構造と行動様式、そして行動の成果(パフォーマンス)について詳しい説明がなされている-。

メキシカンマフィアが(刑務所の外の世界にまで)強い影響力を持つ主要な理由は、大半の麻薬ディーラーは遅かれ早かれ-大抵は早かれだが-刑務所に入る運命にあるという事実に求められる。将来的に同じ刑務所の中で過ごす羽目になるかもしれず、その際に(メキシカンマフィアの言うことを聞いておかないと)罰を加えられる恐れがあるために、メキシカンマフィアの脅し2  は刑務所の外にいる麻薬ディーラーから信頼される3 ことになるのだ。さらに、刑務所は各地のギャングが一堂に会する唯一の場所でもある。そのような刑務所で権力を掌握しているからこそメキシカンマフィアは何百というギャング集団から税金を徴収することが可能となっているというわけだ。

スカーベクの論文の中でも最も興味深い分析の一つは、メキシカンマフィアの力が強まるにつれて彼らは-まるでマンカー・オルソン(Mancur Olson)が語るあの「定住盗賊」(stationary bandit)4 のように-公共財の供給を始めるようになる-言い換えれば、政府のように振る舞い始める-という指摘である。つまり、メキシカンマフィアは納税者(ギャング)-刑務所の中で過ごす納税者および娑婆にいる納税者-の身の安全を守り、各ギャングの縄張りに対する所有権を保護し、ギャング間の抗争を仲裁する役割を自ら進んで行うようになるのである。ただし、メキシカンマフィアがそのような役割を担うのはあくまで「税収」の増加につながる場合に限ってであることは言うまでもない。また、メキシカンマフィアの力があまりに強すぎるために自ら手を下す必要すらない場合もあり、そのような場合には一種の私掠免許状や復仇免許状が発行されることになる。私掠免許状の発行を通じて、税逃れをするようなギャングの身の安全は最早保証されない旨が宣言され、私掠船(pdf)5 が代わりに罰を下すことにOKサインが出されるわけである。

最後になるが、メキシカンマフィアは外部性の内部化にまで乗り出すことになったということだ。

さらに、メキシカンマフィアは通り過ぎざまの銃撃行為(drive-by shootings)の規制にも乗り出した。敵対するギャングとの抗争を解決するための手段として通り過ぎざまの銃撃行為に訴えた場合、結果的にメディアや警察から注目を集めることになるが、行為に及ぶギャング当人はそのことに伴うコストの一部しか負担することはない。そのため、通り過ぎざまの銃撃行為は過大に行われてしまう恐れがある(Buchanan 1973)。1992年のこと、メキシカンマフィアのメンバーから各刑務所と近隣のスレーニョスに宛ててあるメモが送り付けられた。そのメモにはこう書いてあった。メキシカンマフィアの承諾なしに通り過ぎざまの銃撃に及んだ者には死が待っている、と。その後間もなくして通り過ぎざまの銃撃の件数は減少することになったのであった。

犯罪やガバナンスといった話題を巡ってメキシカンマフィアから学べることは数多いと言えるだろう。

 

  1. 訳注;メキシコ系アメリカ人によって構成されるギャング集団 []
  2. 訳注;「「税金」を納めなければ後でどうなるかわかっているな?」 []
  3. 訳注;見せかけではなく信憑性のある脅しとして受け止められる []
  4. 訳注;オルソン本人による説明としては、例えば、”Dictatorship, Democracy, and Development(pdf)”(The American Political Science Review, Vol. 87, No. 3 (Sep., 1993), pp. 567-576)や『Power and Prosperity』を参照のこと。 []
  5. 訳注;暴力をふるってもいいとメキシカンマフィアから許しをもらったストリートギャング []

ノア・スミス「富の再分配?いいや、敬意を再分配しよう」

Noah Smith “Redistribute wealth? No, redistribute respect.” (Noahpinion December 27, 2013)


kaitenzushi

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」 -福澤諭吉

僕は心の中では常に共産主義革命家であり続けている。人類の間の不平等はいつも心を痛めてきたし、そうした不平等を根絶することを望む強い欲求を抱えている。アメリカ社会では、僕らは普通3つの種類の「平等」について議論する。1)「結果の平等」、これは大抵の場合は富や所得の平等を意味する。そして2)「機会の平等」と3)法の下での「権利の平等」だ。1)を典型的に支持するのは、真の共産主義者や社会主義者、そして一部のリベラルだ。2)については中道リベラル、そして3)はリバタリアンと保守主義者だ。この3種類の平等の支持者間の主張は、膨大なもので終わりも見えない。そして、僕と言えばこの3つ全部が大切だと考えている。

でもここから漏れてしまっているものもあると思う。僕は僕が大切だと思う平等のもう一つの重要な側面があることを実感するようになった。そしてそれはそれ以外のどの側面よりも重要かもしれない。それは敬意の平等だ。 [Read more…]

タイラー・コーエン「書評:スティーブン・ピンカー『The Better Angels of Our Nature』」

Tyler Cowen “Steven Pinker on violence” (Marginal Revolution October 11, 2011)


これは重要かつ示唆に富むで、知的なノンフィクションを読む人全てにお勧めできる。書評はここ。でも僕はこの本のメインテーマには疑問も感じている。1

体制変化について計量経済学的な検定を行ってはどうだろうか。17世紀は、19世紀初頭と同じようにそれ以前の時代よりも遥かに暴力的な時代だった。程度の差こそあるけれどね。多分この分布は、「長期にわたる平和の高まりと、それを中断させる暴力の急上昇」とルイス・リチャードソンが暴力的衝突の統計に関する1960年の著書で示唆したところが上手く表現しているんじゃないだろうか。戦争とはミンスキー・モーメント2 のようなものだと考えてほしい。その一方で、多くの「大平穏期(great moderations)」の証拠があるけれど、銃声によってそれら全ては終わりを告げられる。 [Read more…]

  1. 訳注;時代とともに暴力は減少しているという主張。こちらのサイトで本書について詳細な(全63回)書評が行われているので、興味がある方は原書と合わせ是非参照されたい。 []
  2. 訳注;市場の暴落が始まる地点 []

ノア・スミス 「リスク・プレミアムか行動的狂気か?」

●Noah Smith, “Risk premia or behavioral craziness?”(Noahpinion, December 19, 2013)


ジョン・コクランは、ロバート・シラーのノーベル賞受賞講演にかなり批判的だ和訳)。

コクランは、シラーが「バブル」をもっと厳密に定義してくれたらと思ってる(私もこの上なく賛成)。また、シラーがファイナンスを量的でなく文学的にしようとしてるとも思っている(私はこれにはちょっと懐疑的。というのも、シラーはもともと計量経済学者であって、そんな文学的な奴じゃないから)。

だけど、最も興味深い批判は、シラーの彼自身の研究の解釈に対する批判だ。シラーは、株価が長期的には平均に回帰することを示した。そしてこれを、市場が非効率かつ不合理であるからだと解釈した。言い換えれば、平均への回帰を、私が「行動的狂気」1と呼ぶもののせいにしたのだ。だけど、ユージン・ファーマなどは、長期的予測可能性はリスク・プレミアムの予測可能な緩慢な変動によるものと解釈している。

どっちが正しいんだろうか? コクランが鋭く指摘しているように、どちらが正しいかは、市場だけを見ていてもわからない。それ以外の裏づけとなる証拠が必要だ。もし行動的狂気のせいなら、その狂気の証拠は、どこか他所の場所でも観察できるはずだ。もし予測可能な変動をするリスク・プレミアムのせいなら、そのリスク・プレミアムは、なんらかの独立したデータソースを使って測定できるはずだ。ただもっともらしさに訴えて、バンザイして「カンベンしてよ」などと言っても、問題の解決にはならない。

個人的には行動的狂気を疑っている。というのも、実験的な資産市場が、現実世界の「バブル」の話と見紛うほどよく似た、極めて予測性が高く有意な狂気を示すという事実があるからだ。ただ、コンピュータのラボで学部生6人がする数十ドルの取引が、アメリカの株式市場の代わりとして完全だとは言いがたいので、この実験の証拠は、決定的な証拠ではなくあくまで傍証と考えるべきだろう。

リスク・プレミアムに予測可能な緩慢な変動が存在しうる理由を説明しようとしたモデルもいくつかある。私が見たモデルとしては、例によって消費習慣形成やクレプス・ポルテウス型選好(知らなくても聞かないでね!)を取り入れたDSGE型のモデルがある。このような最新のモデルで謎は解けました! と断言する人もいる。コクランは習慣形成モデルにそれほど確信がないようで、このような意識は、私が話した多くのファイナンスの教授にも共有されていた。(また、私が見たこの種のモデルは、集約的不確実性の源泉としてRBCスタイルの生産性ショックを使う傾向があって、反射的に眉に唾をつけたくなってしまう。でも、これは私だけか。)

現実世界における行動的狂気の直接的な証拠に関しても、目ぼしいものはなかったが、それは多分この間までのこと。ロビン・グリーンウッドとアンドレ・シュライファーによるこの論文を見て欲しい。二人は、株式のリターンに対する期待を尋ねた投資家アンケートに基づく、6つの異なるデータセットを比較対照した。6つのデータ系列は強く相関していた。つまり、市場で一般的ななんらかの現象を実際に捉えていたということだ。その中で表明された期待はすべて「外挿的」であるように見える。つまり、直近のリターンがよければ、以後もずっとよいと考えるということだ。でも、この表明された期待はだいたい間違っていた。みんながリターンは上昇すると思ったときには、リターンはすぐ下落する傾向があった。しかも、この下落は単純な資産評価モデルで予測できた。言い換えれば、この表明された期待は、合理的期待ではなかったのだ。

したがって、この表明された期待が実際に投資家の信念を表現するものであれば、行動的狂気の直接的な証拠が得られたことになる。でもコクランは、これらの調査に回答している人たちは、自分の本当の信念ではなく、「リスク中立確率」を語っているのだ、と指摘している。言い換えれば、彼らは自分の信念に関する表明にリスク回避を忍び込ませている、とコクランは考えている。それがもし正しければ、このような調査は行動的狂気の有力な証拠にはならない。

だから、この問題はまだ決着していない。でも進歩は続いている。私見では、手に入る範囲の証拠は「行動的狂気」による説明を示唆していると思うが、決定的な証拠ではない。重要なことは、これは「永遠の謎」といったたぐいの議論ではない、ということだ。この議論は、より有力なデータが利用できるようになれば、解決できるし、解決されるだろう。科学は進歩するのだ。

  1. 訳注: 「behavioral craziness」の訳。ノア・スミスの造語。 []

タイラー・コーエン 「行動公共選択論 ~行動経済学と公共選択論の融合~」

●Tyler Cowen, “Behavioral public choice: the next subfield in economics”(Marginal Revolution, February 20, 2007)


ジェーン・ガルト(Jane Galt)が次のように語っている1

この先で展開される議論は行動経済学にも当てはまるものだ。行動経済学は政府介入の慈悲深さを証明する学問だと左翼の人々は信じているようである。結局のところ人間は愚かな存在なのであり、人々が自らの愚かさから自分自身を守るためにも政府の助けが必要なのだ、というわけである。しかし、私の立場はもう少し微妙なものだ。

1) 人はしばしば愚かな振る舞いをする。
2) 官僚もまた一人の人間であることに変わりはなく、やはり愚かな振る舞いをすることがある。また、彼ら官僚は歪んだインセンティブに直面してもいる。

これまで経済学の各分野は個々の現象を説明するメカニズムをあれこれと組み合わせることで(それこそ考え得る限りのありとあらゆる組み合わせを探ることで)徐々に磨きがかけられてきており、そのような流れから無縁な分野を見つけることは困難なのだが、ここにその数少ない分野の一つがあったと言えよう。官僚が抱える心理的・認知的なバイアスがどのような帰結をもたらすかについて一般化できるような結論を得ることは困難だろうが、しかしそのような困難を抱えていたとしても新たな学問分野が産声を上げる妨げになるわけではなく、現に数多くの分野が花開いてきている(例えば、・・・そう、行動経済学がいい例だ)。おそらく今後15年のうちに行動公共選択論(Behavioral Public Choice)に関するサーベイ論文がJournal of Economic Literatureに掲載されることだろう。この分野の黎明期にいち早く参入して論文の一つでも書いておけばよかったと後悔する人も出てくるに違いない。

あと何点か付け加えておこう。行動公共選択論は政府が実施するプログラムがうまくいくのはどういう時であるかについて我々の知見を広げる助けとなるはずだ。例えば、政府で働く人々の士気(morale)が高い場合、彼らは「私たちのやっていることは重要なんだ」と感じ――実際にはそんなことはなくとも――、結果的に非常に優れた仕事ぶりを発揮する可能性がある。つまり、行動公共選択論は政府の介入に反対する新たな論拠を提供する可能性があるのは確かだが、必ずしも政府バッシング一色2 というわけではないのである。また、人間が抱える心理的・認知的な諸傾向を考慮に入れることで、なぜある状況では汚職が当たり前の現象として蔓延る一方で別の状況ではそうではないのかを理解するヒントが得られることだろう。さらには、人間の心理的な諸傾向を踏まえることで実現可能な均衡の数を絞り込むことが可能にもなるだろう。

  1. 訳注;リンクが切れており元記事を発見することはできなかった。ちなみに、ジェーン・ガルトはメーガン・マクアドール(Megan McArdle)がかつて個人用ブログを執筆する際に使用していたペンネーム []
  2. 訳注;政府の介入に全面的に反対する学問分野 []

ジョン・コクラン 「三人のノーベル賞受賞講演とファイナンスのレトリック」

●John Cochrane, “Three Nobel Lectures, and the Rhetoric of Finance”(The Grumpy Economist, December 17, 2013)


本年のノーベル賞授賞式に出席できたことは、私にとって大きな喜びであり、名誉でもあった。授賞式はノーベル賞受賞講演から始まった。そしてそれは、極めて示唆に富むものであった。 [Read more…]

クルーグマン「共和党のオバマケア欺瞞:謎解きを1つ」

Paul Krugman, “The Republicans’ Obamacare Hypocrisy: A Mystery Solved,” Krugman & Co., December 27, 2013.


共和党のオバマケア欺瞞:謎解きを1つ

by ポール・クルーグマン

DANZIGER/CartoonArts International/The New York Times Syndicate

DANZIGER/CartoonArts International/The New York Times Syndicate

『ワシントンポスト』のコラムニスト,エズラ・クラインは,保険医療をめぐる共和党の欺瞞に困惑してる(と,少なくとも本人は言ってる.ほんとはちゃんとわかってるんじゃないかと思うけどね).

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クルーグマン「ものわかりいい共和党なんてわけがわからない」

Paul Krugman, “The Elusive, Fairly Reasonable Republican,” Krugman & Co., December 27, 2013.


ものわかりいい共和党なんてわけがわからない

by ポール・クルーグマン

Doug Mills/The New York Times Syndicate

Doug Mills/The New York Times Syndicate

みんさんご存じのとおり,経済学者には3種類ある.リベラルなプロの経済学者,保守的なプロの経済学者,そして,プロの保守主義者の経済学者(別名「右翼売文業者」)の3種類だ.いやいや4種類でしょう,という人がいるだろうね.実はそうでもないの――左翼はお金があんまりなくてね.この非対称性のおかげで,周知の「売文格差」が生じてる.

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ジェームズ・ハミルトン 「大規模資産購入プログラムの効果はいかほど?」

●James Hamilton, “Estimates of the effects of the Fed’s large-scale asset purchases”(Econbrowser, October 20, 2013)/(訳者付記)Fedが量的緩和の縮小(テーパー)を決める前に書かれたエントリーである点に注意。つい先日のFedによるテーパーの決定に関しては本サイトで訳出されているティム・デュイの分析を参照のこと。


週末にとあるカンファレンスに参加してきたのだが、このカンファレンスでは今般の金融危機が金融政策に対して持つ教訓は何か?という点をテーマに様々な報告がなされた。数多くの興味深い報告を聞くことができたのだが、個人的に特に興味深かったのは大規模資産購入プログラムとフォワードガイダンスの効果に関する最新の推計結果を取り上げたジョン・ウィリアムズ(John Williams)サンフランシスコ連銀総裁の報告だった。

ウィリアムズの報告ではこれまでに行われた-対象となっているデータもそのアプローチも多様な-一連の学術研究の結果を基にしてFedによる大規模資産購入プログラムの効果が予測されている。具体的には、Fedが追加的に債券の購入額を6000億ドルだけ増やした場合に10年物国債の利回りにどのような効果が生じると予測されるかが推計されているのだが、その推計結果をまとめたのが以下の表である。推計結果にはばらつきがあり、その効果の大きさにはかなりの不確実性が付きまとっているものの、大半の研究では(Fedが追加的に債券の購入額を6000億ドルだけ増やした場合)10年債利回りは0.15~0.25%(15~25ベーシスポイント)程度低下するとの予測結果が得られている。

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現在Fedウォッチャーの間では「Fedが『テーパリング』(資産購入額の縮小、量的緩和の規模縮小)に踏み切るのはいつか?」ということがホットな話題となっているが、この話題はFedが最終的に保有する国債と不動産担保証券(MBS)の額に生じる違いに関連するものである。しかし、その違いは(ウィリアムズの推計で問題となっている)6000億ドルという規模と比べるとわずかなものでしかない。例えば、つい先日も指摘したことだが、仮にFedが(幾人かのアナリストが予測していたように)先月(9月)のFOMC(連邦公開市場委員会)でテーパーを宣言して翌月(10月)以降に国債の純購入額1 を毎月ごとに25億ドルずつ減らしていった場合と来年(2014年)の1月にテーパーに踏み切る場合2 とを比べると、2014年(来年)の終わりの段階でFedが保有する国債の額にはおよそ1000億ドルだけの違いしか生まれない3 。上の表を頼りにすると、1000億ドルの違いは10年物国債の利回りで測っておおよそ0.025~0.05%(2.5~5ベーシスポイント)程度の違いを生むということになるだろう。国債だけではなく不動産担保証券の保有額の違いも考慮に入れるとこの値(0.025~0.05%)はさらに倍あるいは3倍になるかもしれないが、そうだとしても(10年債利回りにごくわずかの違いしか生まない;訳者挿入)テーパーのタイミング(「Fedがテーパーに踏み切るのはいつか?」)こそが最も重大な出来事であり、マーケットが注目すべき話題であると言えるのかどうか個人的には疑問に感じるところだ。

真の問題は「Fedがテーパーに踏み切るのはいつか?」という点にはない。「Fedが準備預金に対する金利(準備預金付利;IOR)を引き上げるのはいつか?」という点こそ問題にすべきなのだ。我々が注目すべきは大規模資産購入プログラムに生じる変化ではなく、IORが引き上げられるタイミングなのである。

  1. 訳注;国債の追加的な購入額のうち満期を迎えた国債の再投資分を除いた額 []
  2. 訳注;来年の1月以降になってはじめて国債の純購入額を毎月ごとに25億ドルずつ減らしていく場合 []
  3. 訳注;10月からテーパーに乗り出した場合の方が来年の1月からテーパーに乗り出す場合よりも2014年の終わりの段階でFedが保有する国債の額は1000億ドルだけ少ない []

タイラー・コーエン「クリスマスは効率的か?」

Tyler Cowen “Is Christmas efficient?” (December 23, 2013 Marginal Revolution)


みんな多分知っているだろうけど、消費者向けの商品やサービスへの需要はサンクスギビングの後に大きく上昇して、季節的な景気循環の上昇局面をもたらす。主要国のほとんどでは、12月ないしその近くに大きなプレゼントイベントがある。その結果、第4四半期1 の産出と雇用は大きく拡大し、第1四半期には不可避的な収縮がもたらされることになる。普段僕たちは季節調整済みのデータを使うけれど、季節的な景気循環は通常の景気循環と比べて小さいってわけじゃない。それについて詳しくはここを見てほしい。

でもそうした季節循環は効率的なんだろうか。実際にグリンチがクリスマスを盗もうとしている場合2 、それはカルドア・ヒックス基準で言うところの潜在的パレート改善なのだろうか。 [Read more…]

  1. 訳注;サンクスギビングもアメリカで11月、カナダで10月と、第4四半期にあたる。 []
  2. 訳注;童話「How the Grinch Stole Christmas!(いじわるグリンチのクリスマス)」の主人公。クリスマスが嫌いで、クリスマスを盗んで中止させようとする。 []