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Archives for 4月 2014

タイラー・コーエン 「住民の多くが放射性廃棄物貯蔵施設の受け入れに同意するのはどんな時?」

●Tyler Cowen, “When are people OK with nuclear waste?”(Marginal Revolution, June 20, 2013)


スイスでつい最近実施された研究の一つによると、その答えは同意の有無を確認された時だということだ。一方で、(放射性廃棄物貯蔵)施設の建設と引き換えに(建設予定地の住民に対して)金銭的な補償の支給が提案される場合には同意は得にくくなるという。 [Read more…]

スコット・サムナー「資本所得への課税は労働所得よりも重い」

Scott Sumner “Capital income is taxed more heavily than wage income” (TheMoneyIllusion, April 24, 2014)


(以下はEconlogに載せたより長い記事のフォローアップだ)

確かに、資本所得の「公式な」最高税率は労働所得よりも低いけれども、財政学で何よりもまず始めに学ばなければいけないことは、見かけは偽りでありうるということだ。税の経済的な帰着は、しばしば法律上の税の帰着とは大きく異なる。

ロバート・ソローの最近の書評1 を読んでいる際、髪を掻き毟りたくたくなるような主張に出くわしてしまった。

我々は政治的な理由によって、十分なレベルの不動産税すら保つことができない2 。もしそれが可能であるならば、それは妥当な出発点となることだろう。もちろん、資本からの所得に有利な現在の税制とは異なる、より強く累進的な所得税については言うまでもない。

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  1. 訳注;本サイトでも度々紹介している、トマ・ピケティ「21世紀の資本論」についての書評。 []
  2. 訳注;アメリカの連邦不動産税は2010年に一度廃止され、2011年から復活しているものの免税範囲は年々引き上げられており(2004年は150万ドルだったものが、2014年には534万ドルになっている)、こうしたことを指していると思われる。 []

ポール・クルーグマン「私の政策が失敗するのはどう考えても批判者がわるい!」

Paul Krugman, “Just Blame the Naysayers,” Krugman & Co., April 25, 2014. [“Blaming the Messengers, Euro Edition,” The Conscience of a Liberal, April 15, 2014.]


私の政策が失敗するのはどう考えても批判者がわるい!

by ポール・クルーグマン

Marco Gualazzini/The New York Times Syndicate

Marco Gualazzini/The New York Times Syndicate

ほほーう.ユルゲン・スタークのコレを見逃してた.これまでにぼくが読んだもと中央銀行家の文章で,いちばんすんごいヤツに数えられるね:「我々がくらしているのは,持続的な物価安定の時代である可能性が高い」――もと欧州中央銀行の委員が,最近出た『フィナンシャル・タイムズ』の論説にこう書いている.「これはいい知らせだ.これにより,実質の可処分所得は増加し,やがては民間消費を支えることになるだろう.インフレ予想はしっかりと定着している.物価下落を予想して家計と企業が購入を延期していることを示す証拠はない.差し迫ったデフレの警告や欧州中央銀行の行動をもとめる訴えは見当違いであり,無責任だ.この議論が長引けば長引くほど,そして,議論が激しくなればなるほど,自己成就的な予言のリスクは高まってしまう.」
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ポール・クルーグマン「最小限の費用で地球を救う方法」

Paul Krugman, “How to Save the Planet, at Minimal Expense,” Krugman & Co., April 25, 2014. [“Rising Sun,” The Conscience of a Liberal, April 15, 2014]

Kadir van Lohuizen/The New York Times Syndicate

Kadir van Lohuizen/The New York Times Syndicate

最小限の費用で地球を救う方法

by ポール・クルーグマン

気候変動進捗」ブログの編集者で物理学者のジョー・ロムが,先日,国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC) が出した3つ目の最新報告書に注意を促してくれた.この報告書では,地球温暖化緩和または温暖化ガス排出源削減について取り扱っている.

今月,こうしたコストはそれほど大きくないとパネルは発言した――国内総生産のコンマ数パーセントにすぎず,今世紀の終わりまで続けたとしても,成長率にとっては些末な打撃にしかならないんだそうだ.
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アレックス・タバロック 「ロイヤル・パープルの謎 ~なぜ紫色は王家の色と見なされたのか?~」

●Alex Tabarrok, “Royal Purple”(Marginal Revolution, August 10, 2004)


かつて紫色(貝紫色)はロイヤルカラー(王家の色)と見なされていたが、どうしてそうなったのだろうか? その答えは美学にではなく経済学にある。紫色は自然界の中にわずかしか存在しなかった。ティリアン・パープル(貝紫色)の染料はアッキガイ科の巻貝の鰓下腺(パープル腺)から得られた分泌物が原料とされたが、古代の人々が身にまとうトガを染めるためには1.5グラムの染料が必要とされた。そしてそのためには12,000匹の巻貝を入手せねばならなかったのだ。

伝承によると、貝紫色を発見した功績はヘラクレス――いや、正確には彼が連れていた犬――に帰せられている。レバントの海岸沿いを歩いている際に巻貝を噛み砕く犬の口が紫色に染まっているのを発見したというのである。巻貝から得られた染料をもとにしてローブを紫色に染め上げ、それをフェニキアの王に贈ったところ、王の口から「フェニキアを支配する者は王(王家)のシンボルとして紫色の衣装を身に付けるべし」との命令が下されたのであった。 [Read more…]

アレックス・タバロック「憲法の計量化」

Alex Tabarrok “Constitutions Quantified” (Marginal Revolution, March 8, 2014)


404px-Magna_charta_cum_statutis_angliae_p1比較憲法プロジェクトでは、1789年以降に著された800程度の憲法のうち720のデータを集めている。例えば一番短い憲法はヨルダンで2270語、それに対して一番長いのはインドのもので146,385語もあり、これは二番目に長いアメリカ憲法の7760語よりもずっと長くて2倍以上ある。ニュージーランド憲法は保障している権利が最も少なく、はっきり言えばゼロであるのに対し、ボリビア憲法は最も多い88個の権利を保障している。

ボリビア憲法にある権利の中には、「全ての人は健康についての権利を持つ」というものがある。これはかなり野心的に思えるけれども、翻訳が正しいのか確信はないので、おそらく原文では健康管理について言っているのかもしれない。他にも住宅、下水、電話通信サービスというのもある。全部をここに書くことは出来ないけれど、次の条文は時代を先取りしてると思う。

あらゆる政府機関、及びいかなる人物、団体も、私的な会話ないし通信を監視あるいは集中化させる装置によってそれを妨げてはならない。

ベネズエラもその憲法の中でボリビアと同じくらいの権利を保障していて、データによれば81個あるそうだ。しかし私としては、ニュージーランドに住んでいるほうがボリビアやベネズエラに住んでいるよりも自分の権利がより保障されていると感じることだろう。権利が長々と列挙されている憲法は権利が長々と列挙されている婚前契約書と少々似ていて、書面上の見栄えはいいけれども、結婚や憲法を作るのは書面ではないのだ。

 

タイラー・コーエン 「靴の鉄則」

●Tyler Cowen, “The Iron Law of Shoes”(Marginal Revolution, June 17, 2012)


かねてよりダニエル・クライン(Daniel Klein)との間で「靴の鉄則」(The Iron Law of Shoes)と呼び合っている法則があるのだが、どうやらその法則を裏付ける研究があるようだ。Omri GillathとAngela J. Bahns、Fiona Ge、そしてChristian S. Crandallによる共同研究がそれだ。

極めて些細な外見上の特徴であっても第三者がそれを見てその人の性格や身分(社会的な地位)、政治的な態度を正確に判断できるヒントとなる。本論文では外見上の特徴として「靴」に着目し、靴だけをヒントにして第三者がどれだけ正確に見知らぬ相手の属性を判断できるかを調査した。まず靴の持ち主には日頃よく履く自分の靴の写真を持ち寄ってもらい、自らの属性について自己評価してもらった。そして我々実験者の側で靴をいくつかの次元1に分けて数値化し、その数値と靴の持ち主による(自分の属性についての)自己評価とを照らし合わせたところ、両者の間には相関が見られることが確認された。次に第三者に靴の写真だけを見てもらった上でその靴の持ち主の属性を評価してもらったところ、靴の持ち主の年齢や性別、所得が正確に予測されただけではなく、愛着不安2の程度に関して第三者の評価と靴の持ち主自身による自己評価との間に強い相関が確認された。少なくともいくつかの側面に関しては靴は他人を評価する手段となり得るようである。

論文のタイトルは“Shoes as a Source of First Impressions(pdf)”(「第一印象の源泉しての靴」)と題されている。twitter上でこの論文の存在に気付かせてくれた@StreeterRyanに感謝する。

  1. 訳注;ヒールの高さや靴の明るさ、色合い、ブランド品かどうか、新しいかどうかなど計17の次元 []
  2. 訳注;恋人をはじめとした親しい相手に自分のことが軽んじられているのではないかという不安 []

タイラー・コーエン「トマ・ピケティに賛成できない理由」/「大著の読み方」

(訳者補足:関連エントリがあります。)
●ピケティ本と同様のアイデアであるピケティの共著論文の紹介
クルーグマンのコメント
ノア・スミスのコメント
●デロングのコメントのhimaginary氏による紹介
クルーグマンの書評(英語)


トマ・ピケティに賛成できない理由

Tyler Cowen “Why I am not persuaded by Thomas Piketty’s argument“(Marginal Revolution, April 21, 2014)

フォーリン・アフェアーズに寄せた書評はこちら(Firefoxを使っていて開かない場合には、「新しいプライベートウィンドウで開く」を使うように)。ここではその全部には触れずに、ブログ読者のためにいくつかの点をやや異なった用語を使って言い換えてみたい。

1.収益率が経済の成長率より高くなったままならば賃金が上がる可能性が高いし、それはかなりのものになる。この考えを学術的な形で書いているものには、マット・ロムニーによるものがある。でもこれについては常識、つまり資本蓄積は賃金を釣り上げるということを持ち出すだけで十分だ。私たちが19世紀的なものに戻りつつあるとピケティは示唆している。さて、これは西ヨーロッパの平均的な労働者にとってはとっても良い時代だった。たくさんの戦争が起こったり、産業革命が不完全だった19世紀前半を過ぎた後の時代はとりわけてもそうだ。

今日においてはある種の賃金の停滞があるために、多分そうした良い結果が将来得られると感じられないのだろうし、多くのコメンテーターが良い雰囲気を退けてしまっている。でも近年の(リスク調整済み)資本収益率は高くないし、数十年間下落を続けているということも頭に入れておく必要がある。低い収益率と停滞した賃金という変数の組み合わせは、ピケティの考えを否定するものではないけれども完全にそれと整合するというわけでもない。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「奇跡は至る所にある?」

●Tyler Cowen, “Miracles are Everywhere?”(Marginal Revolution, July 13, 2004)


普通の生活を過ごしていれば大体1カ月1に1回のペースで奇跡を体験することになる。・・・目覚めた状態の人間がはっきりと意識をもって生活しているのは1日あたりおよそ8時間だと言われるが、その間1秒あたり1回のペースで何らかの出来事を見聞きしていることになる。それゆえ、1日あたりに換算するとおよそ3万回の出来事に遭遇しており、1カ月あたりだとおよそ100万回の出来事に遭遇している計算になる。ほんのわずかの例外を除いては我々が体験する出来事は取るに足らないものであり、奇跡と呼ぶには程遠い。奇跡は100万回に1回の確率で起こる出来事だ。それゆえ、平均して大体1カ月に1回は奇跡に巡り合う可能性があるわけだ2

つい最近奇跡的と思えるような体験をしただろうか? そう、それが1カ月に1回の奇跡だ。

近いうちに滅多にない体験をしたらこの計算のことを思い出すといい。

お前はどうなのかって? 騙されているような気がしないでもない。先月のことを思い出してみると確かにいいことはあったが、奇跡というほどでもない。そう言えば先々月も奇跡は起こらなかった。こんなに続けて奇跡に巡り合わないことがかつてあっただろうか。1カ月に1回は奇跡が起こるという計算からすると、こんなに長きにわたって奇跡を体験していないこと自体が奇跡だと言える。お、何だか気分が晴れてきたような気がする。

冒頭の文章はScientific American誌(2004年)8月号の記事(pp.32)3の中で引用されている物理学者のフリーマン・ダイソン(Freeman Dyson)の言葉だ。手に入るようであれば是非とも一読をお勧めする。当該誌の今年のベスト記事の一つだ。

(追記)チャールズ・マーティン(Charles Martin)が指摘しているように、ある出来事を奇跡と感じるかどうかはあらかじめ何が起こると想定していたかに依存する面がある。今朝大学の研究室に到着してすぐに時計で時間を確認した際は奇跡とも何とも思わなかったが、この時間に到着すると前もって予測することはできなかったことだろう。つまりは、起き得る出来事の範囲を広く想定しておけば人生の中で体験する奇跡の数を減らすことができるわけであり、その反対に起き得る出来事の範囲を狭く絞り込んでおけば奇跡の数を増やすことができるわけだ。

  1. 訳注;35日 []
  2. 訳注;最初にこのことを唱えた数学者のジョン・リトルウッド(John Edensor Littlewood)にちなんで「リトルウッドの法則」と呼ばれることもある。  []
  3. 訳注;おそらくマイケル・シャーマーの次の記事がそれ。 ●Michael Shermer(2004), “Miracle on Probability Street” []

ノア・スミス 「サージェントが語る『経済学の12の教訓』をチェックする ~経済学の内容を要約したものでは「ない」~」

●Noah Smith, “Not a summary of economics”(Noahpinion, April 19, 2014)


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アレックス・タバロック(Alex Tabarrok)〔拙訳はこちら〕とエズラ・クライン(Ezra Klein)がともにトーマス・サージェント(Thomas Sargent)――「存命中の経済学者の中で一番頭が切れる存在」の有力候補の1人――のとあるスピーチ(pdf)を話題にしている。このスピーチはサージェントが2007年にカリフォルニア大学バークレー校の卒業式に呼ばれた際に行ったもので、経済学の「教訓」がいくつかリストアップされている。クラインの表現では「経済学について知っておくべきすべてのこと」が網羅されており、タバロックの表現では「経済学の内容が要約されている」1とのことだ。しかし、その表現はちょっと誇張し過ぎじゃないだろうか? サージェント自身は次のように語っている。「この美しい学問が伝える貴重な教訓のショートリストを紹介させていただきます。」 サージェントは経済学の発見を要約しているわけじゃない。「バークレー校の卒業生たち」を念頭に置いた上で「一体彼らが経済学について知っておくべきことは何だろうか?」と彼なりに考えた結果を言葉にしているだけなのだ。 [Read more…]

  1. 訳注;こちらでは「経済学の教訓を語っている」と訳したが、本来は「経済学の内容を要約している」(summarize economics)と表現されている。 []