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Archives for 5月 2014

ポール・クルーグマン「なんで経済学者は人口成長を気にかけるの?」

Paul Krugman, “Why Economists Worry About Population Growth,” Krugman & Co., May 30, 2014.
[“Demography and the Bicycle Effect,” May 19, 2014;”Cheese-eating Job Creators,” May 21, 2014.]


なんで経済学者は人口成長を気にかけるの?

by ポール・クルーグマン

Edwin Koo/The New York Times Syndicate

Edwin Koo/The New York Times Syndicate

経済学者アルヴィン・ハンセンが「長期停滞」(secular stagnation) の概念をはじめて提案したとき,彼は投資需要の低迷に人口増加の鈍化が果たす役割を強調した.
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ポール・クルーグマン「不運な失業者たち」

Paul Krugman, “The Unlucky Unemployed,” Krugman & Co., May 30, 2014.
[“Unemployment: It’s Not Personal,” May 17, 2014.]


不運な失業者たち

by ポール・クルーグマン

VAN DAM/The New York Times Syndicate

VAN DAM/The New York Times Syndicate

先日,『ワシントン・ポスト』の記者マット・オブライエンがアメリカの長期失業について書いた記事は,興味深くもあるし,気持ちが落ち込みもする.それによると,長期失業は基本的に不運の問題だという:不景気なときに誰かがレイオフされたとして,その人は新しい職を見つけるまで苦しい時期を過ごすことになる;しかも,失業が長引けば長引くほど,仕事を見つけるのは難しくなる.

この分析には同意するしかない――1つ付け加えるなら,オブライエン氏の取材結果は,これと別の筋書きをおおむね決定的に反駁している.その筋書きっていうのは,「長期失業者は(6ヶ月以上にわたって失業している人たちは)問題のある労働者だ」っていうもの.

この筋書きがどういう仕組みになってるか,みんなにはわかるはずだ.かりに,労働者たちにはとある性質があるとしよう――「ガンバルマン性」だとかなんとか,そんなやつがあるとしよう.その性質は,公式の技能尺度には表れないものの,彼らを雇用するかどうか考えてる雇用主にはなぜか直観的にピンとくるとする.すると,このいわく言い難い性質を持ち合わせていない労働者は,仕事をなくしたり新しい勤め先を見つけるのに苦労しやすくなる.長期失業してる人たちが仕事を見つけるのに苦労してるのは,この個人的な資質の足りなさを反映してるってことになる.

失業に関するいろんな論評の行間を読んでみると――とくに失業手当を削減したがってる連中の書いたものを読んでみると――これに似た理論が土台になってるのがわかるはずだ.

ただ,大事なのは次の点だ:労働者の資質と失業のつながりは,景気がわるいときよりもいいときの方が強くなるはずなんだよ.2000年,労働力が不足してたときには,おそらく,レイオフされてた人たちにはなにか問題があったんだろう.2009年の場合は,たんにいた場所がわるかったって話だ.かりに失業してるかどうかが個人の資質の問題だとしたら,失業は大不況以後よりも以前の方が問題になっていたはずだよね.

もちろん,いまぼくらが経験してるのはその真逆だ.

言い換えると,失業は個人の問題なんかじゃないってこと.「経済が問題なんですよ,おばかさん」.オブライエン氏が指摘しているように,経済刺激策を打てないでいるのはアメリカの労働者たちに対する罪だと考えるべき理由が,これでもう1つ増えたわけだ.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

根づよい問題

by ショーン・トレイナー

アメリカの失業率はこの4月に 6.3 パーセントにまで下がった.これは2008年以来最低の水準だ.だが,その一方で,アナリストのなかには,「その数字は実際の状態を反映していない」と考える人たちがいる.

そう懸念する主な理由は,失業率を計測する政府の方法にある.失業している労働者が,意欲を失って仕事を探すのをやめてしまうと,彼はもはや労働力ではないと考えられ,失業率には含まれなくなる.これを補うため,労働統計局は代替の失業率計測値を(公式の失業率と併せて)公表している.「U-6」と呼ばれるこの数値には,求職意欲をなくした潜在的労働者とできればフルタイム雇用につきたいと考えているパートタイム労働者を失業率に含めている.今日,この U-6 は約 12.3 パーセントだ.

U-6 失業率と公式の失業率の落差はいっそう大きくなっている.このことから,アメリカの長期失業者のうち,仕事探しをやめてしまった人たちは多数にのぼることがうかがえる.

研究で明らかになっているように,6ヶ月以上にわたって失業した人たちは,さらに複合的な問題に直面する.というのも,その資質がどうであろうと,経歴に長期の空白がある労働者を多くの雇用主は雇いたがらないからだ.

また,長期的な失業には技能の喪失がともなううえに,鬱病にかかる率も上昇する.

「長期失業は,仕事を探さず失業給付でぬくぬく暮らすのを選んだ怠け者の話ではない」とオブライエン記者は5月16日付けの『ワシントン・ポスト』に記している.「失業は,就業をのぞんでいながらも,仕事が十分にないために見つけられずにいる人々の話なのだ――そして,この人々は,やがて雇用戦線の後方に退いていく憂き目を味わっている」

© The New York Times News Service

ラルス・クリステンセン「W杯の結果を100万回シミュレートしてみたよー。ブラジルつえー」

LARS CHRISTENSEN”I just ran a million simulations of the World Cup – Brazil won 450,000 times” (The Market Monetarist, MAY 28, 2014)

(5月29日訳者追記:ゴールドマン・サックスも似たような予測をしているのが興味深い。)


まともな経済学者の誰もが、ブラジルで開催される今度のサッカーワールドカップで勝つのはどこかについて一家言を持っているはずだ。というわけで僕ももちろん持っている。

この問題について、僕はダンスク銀行の聡明なる同僚であるJens Pedersen, Morten Thrane Helt, Stanislava Pravdova, Kristoffer Kjær Lomholtと共同で論文を書いた。

次のはその論文、「ブラジルはピッチ上での成功を目前にしているが、経済では苦戦する」からの引用だ。 [Read more…]

クリヴェリ&グプタ「資源豊富国の税制」

Ernesto Crivelli, Sanjeev Gupta “Revenue substitution in resource rich economies: Evidence from a new dataset” (VOX, 27 May, 2014)

資源豊富国はそれ固有の一連の困難を抱えている。天然の財産は祝福とも呪いともなるのだ。本稿では、天然資源による歳入とその他の税収の繋がりを検討する。その結果は、これらの国々は国内の税を天然資源に基づく歳入で代替する傾向にあるというものだ。すなわち、資源歳入1ドルにつき30セントの非資源税収が失われている。困ったことに、この代替は成長を損ないづらい税に偏重して起こるのだ。


商品価格の上昇と新規発見の増加により、2011年時点で天然資源からの歳入は天然資源豊富国の多くにおいて政府歳入の半分以上を占めている(図1)。時とともに、非資源税収が天然資源歳入で代替されていっていることをデータは示している。例えば、2000年から2011年にかけて全歳入に占める石油による歳入の割合の平均は80%から87%へと上昇した(図2)。こうした傾向は、鉱物輸出国においては比較的薄い(IMF 2012)。どちらの場合においても、歳入は商品価格の動きと足並みを揃えているようだ。

これらの歳入は、資源豊富国にとってインフラと重要な社会サービスの双方への支出を増大させる余裕を生み出している。ここでひとつの疑問が湧く。資源歳入への重度の依存は、成長の促進にとって適切なのだろうか。

図1.2011年の主要国における天然資源からの歳入

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出典: IMFスタッフによる推定

図2.天然資源からの歳入
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出典: IMFスタッフによる推定

資源歳入の増加により天然資源豊富国は歪みを生む税金への依存を減らすことができたと主張することも可能だろう。それによって民間部門の活動が促進され、したがって経済成長が後押しされることとなる。OECD加盟国に関する最近の分析は、各種税のうち資産税や広範囲を対象とした消費税(とりわけても付加価値税)は、貯蓄と投資への歪みが少なく、最も成長を損ないづらい税であることを示している (OECD 2010, Acosta-Ormaechea and Yoo 2012)。その反対に、所得税(法人税も含む)は最も強い成長阻害効果を持っていると見られており、これは経済的決定を直接に妨げるからである(Heady 2011も参照)。

先の疑問に対する答えは、資源歳入がそれぞれの非資源歳入の構成要素に対してどのような効果を及ぼすかを理解することの中に隠れている。すなわち直接税VS間接税、所得税VS消費ないし取引税といったことである。資源歳入によって、政府による法人税や所得税の徴収が減らされるのであれば、資源歳入へ依存する戦略は成長を強化するものと見るべきだ。こうした分析は、成長を損ないづらい税政策や行政改革の設計に携わる政策決定者にとって有用となるだろう。

実証上の困難

非資源歳入とその構成要素に対する資源歳入の効果を評価するのは難しい。それは以下の理由による。

  • 天然資源からの政府歳入のデータは大抵の場合非常に乏しい。これは、資源歳入を集めるための手段の透明性が不十分であることや、法人税のような標準的な課税手段から資源に関する歳入をより分ける必要性があることによる。
  • 天然資源歳入の潜在的内生性が、特定化をさらに複雑にする。非資源部門に対するマイナスのショックによる財政赤字の増加は、天然資源部門からの歳入へさらに依存する必要性を高める可能性がある。
歳入代替:新たなデータセットによる実証上の発見

最近の論文において、私たちは資源豊富国35か国の1992年から2009年にかけてのデータベースを構築し、これは資源歳入と非資源歳入をより分けるだけではなく、非資源歳入をその構成要素ごとにより分けている。すなわち、財とサービスへの税(付加価値税を含む)、所得税、国際取引税である(Crivelli and Gupta 2014)。

これによる計量結果は、天然資源と国内(非資源)税収との代替が実際に起きているということを示している。資源歳入が1ドル増えるたびに非資源税収が30セント少なることを私たちは発見した。私たちにとってそれ以上に重要なのは、主要な税の間で効果に大きく差があることだ。最も大きなマイナスの効果を見せたのは財とサービスに対する税、とりわけ付加価値税であり、最も効果が小さかったのは所得税と取引税であった。この結果は制御変数の導入、異常値の除外の他、特に私たちの推定における資源歳入の内在性に関する懸念を解決するための代替的な推定方法に対しても堅牢である。このサンプル内の国々は過去20年に渡り、財とサービスや取引に対する税を減らす一方で、非資源税収全体における所得税の割合を上昇させてきたのだ(図3)。

図3.国内(非資源)税収構造
(税収全体に対するパーセンテージ)

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政策的含意

非資源部門からの徴税を含むうまく多様化した税収源が、目指すに値する政策目標であるという理由はいくつもある。まず、天然資源は永久に続くとは限らず、信頼できる税収源や税への遵法(tax compliance)文化を構築するのには時間がかかる。また、資源歳入は大きく変動する傾向が強く、適切な財政枠組みがない場合、こうした変動は予算へと反映されてしまう。さらに、資源歳入に強く依存する国は民主化度合いが低く、「資源の呪い」に苦しみ、より高水準の汚職を経験し、非資源部門から税収を集めるための税制を強化するインセンティブが小さいということを示唆する証拠は十分にある。国民が税を支払わない場合、自らの政府に説明責任を維持させる動機は不十分となってしまう。

資源豊富国、とくに長期間に渡って資源が出ると予想されている国々は歪みを生じる課税への依存を減らすことが可能であるにも関わらず、私たちの研究結果はその逆を示唆している。そうした国々は実のところ、経済成長を強化するのに最も適していると考えられる税への依存を減らしているのだ。

資源豊富国は、非資源歳入の展開を慎重に注視すべきだ。資源歳入と成長を損ないづらい非資源歳入の間の代替が大きいのであれば、自らの税政策と歳入行政の設計の検査を検討すべきだろう。とりわけ、個人所得税の設計と管理については注意が必要となる。というのも、資源歳入が増えると、歳入行政が弱体化することで控除や特別措置が増えていくからだ。たとえば付加価値税について、資源豊富国は基本税率がある程度低いだけでなく、軽減税率が高かったりや控除額が大きい傾向にある(図4)。

図4.2012年の地域ごとの付加価値税設計

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出典:IMF財政局データベース

免責条項:ここで示されている見解は著者ら個人のものであり、IMFとその執行委員会、及びその運営とは無関係である。

参考文献
●Acosta-Ormaechea, S., and J. Yoo (2012), “Tax Composition and Economic Growth,” IMF Working Paper 12/257, (Washington: International Monetary Fund).
●Arezki, R., T. Gylfason, and A. Sy (2012), “Beyond the curse: Policies to harness the power of natural resources,” VoxEU, July 8.
●Canuto, O. and M. Cavallari (2012), “Natural wealth: Is it a blessing or a curse,” VoxEU, October 12.
●Crivelli, E., and S. Gupta (2014), “Resource Blessing, Revenue Curse? Domestic Revenue Effort in Resource-Rich Countries,” European Journal of Political Economy (forthcoming).
●Heady, C. (2011), “Tax policy to aid recovery and growth,” VoxEU, March 14.
●International Monetary Fund (2012), “Fiscal Regimes for Extractive Industries: Design and Implementation,” Board Paper, August (Washington: International Monetary Fund)
●OECD (2010), “Tax Policy Reform and Economic Growth,” OECD Tax Policy Studies 20, (Paris: Organization for Economic Co-operation and Development).

タイラー・コーエン「白人アメリカ人は奴隷制とその遺産からどれだけ利益を得たのか」

Tyler Cowen”How much have white Americans benefited from slavery and its legacy?” (Marginal Revolution, May 25, 2014)


補償に関するタナシー・コーツのエッセイについて、多くの人が議論している。エズラ・クラインがこの論議を次のように要約している。

コーツが示しているのは、自らのために複利の力を手にしようと、白人によるアメリカは数百年にも渡って殺傷兵器や人種差別的法律、偏った裁判所や居住地隔離を用いてきたということだ。彼が何度も繰り返し使っている単語は「略奪」である。白人によるアメリカは、アフリカ系アメリカ人の働きを盗むことによってその富を築き、そしてそれが違法となってからはアフリカ系アメリカ人の働きと芽生え始めた彼らの富を略奪することでさらに富を増した。そして次には、決定的なことに、複利の魔法を働かせたのだ。

私としては、今生きている白人アメリカ人のほとんどは、この国がアフリカ系アメリカ人を奴隷化していなかったとしたらもっと裕福になっていたし、したがってほとんどの白人もまた奴隷制で損失を受けたんだと思っている。黒人が失ったものよりはずっとずっと小さいものだけれどね。例えば、より自由でより公正な政策はその市民のほとんどを裕福にする傾向にあると一般的には認識されている。(多くの問題について私たちは「公正」が何を意味するか意見が一致しないけれど、奴隷制とその遺産は明らかに不公正だ。) [Read more…]

ニック・ロウ「家としての国」

Nick Rowe “Countries as homes” (Worthwhile Canadian Initiative, May 26, 2014)


EU議会選挙の結果のために昨夜は遅くまで起きていた。イギリスでは、イギリス独立党が27.5%の投票を得て一位となった(労働党は25.5%で二位、保守党は24%で三位)。フランスでは国民戦線が25%で一位となった1

独立党と国民戦線の両方ともEUからの脱退と移民の減少を求めている(他の面においては彼らは異考えを異にしている)。イギリスはユーロには加盟しておらず、近い将来にユーロを採用する見通しもないため、欧州中央銀行の金融政策にイギリスの結果が大きな影響をもたらすことはないように思える。どちらの党も組織としては全く「まとも(respectable)」ではないけれども、独立党のほうが国民戦線よりはまともだ。

僕が国際貿易理論を教えるときは、まずこんなことをする。 [Read more…]

  1. 訳注;経済と極右の台頭の関係に関する研究については、本サイトのこのあたりも参照。完全に余談であるが、今回のフランスの投票結果では極右政党に投票した割合は若年層がとりわけて高く、それも教育水準の低い(大卒未満)層ではより一層顕著であり、彼らはまた失業率が著しく高い層でもある。 []

ジェームズ・ハミルトン「ピケティへの批判」

James Hamilton”Criticisms of Piketty” (Econbrowser, May 25, 2014 )


トマ・ピケティの新著「21世紀の資本論」について、多くの議論がなされている。批判については賛同できる部分もあるし、そうでないところもある。

ここ最近槍玉にあげたのはクリス・ジルスで、ピケティが公開しているデータとスプレッドシートに「一連の問題とエラー」を発見した。ポール・クルーグマンは次のように反応している

ジルスはいくつかの明らかな間違いを発見しているが、それはそんな大したものじゃないように思える(略)

でも、財産格差が上昇しているというピケティの全体としての命題が間違っているということはあるんだろうか。そんなわけない。そしてジルスがそんな結論に達しているという事実は、彼自身が何らかの間違いを犯しているという強力な印でもあるんだよ。

この推測についてクルーグマンは正しいのではないかと思う。一つのスプレッドシートの一つのエラーは、近年の世代では所得と財産の格差が上昇してきているという結論を反証するものではない。ピケティ以外の多くの優れた情報源からも、この結論についての豊富な証拠があるのだ。

もちろん、上記の最初の一行にある「ジルス」を「ハーンドン、アッシュ、ポーリン1 」に置き換えたとしても、クルーグマンは正しかっただろう。クルーグマンによるピケティの擁護と、彼がラインハート=ロゴフ批判先頭に立ったときの熱意との対比は面白い。しかしこの2つの論争双方において公正な要約を行っているジャスティン・ウォルファー([1], [2])には称賛を。 [Read more…]

  1. 訳注;ラインハート=ロゴフによるスプレッドシートの誤りを発見した論文の著者。 []

スコット・サムナー「医療について語るレヴィットについて語るクルーグマン」

Scott Sumner “Krugman on Levitt on healthcare” (TheMoneyIllusion, 17 May, 2014)


スティーブン・レヴィットが行った、医療に関するいくぶん馬鹿げた表面的ないくつかのコメントについて、クルーグマンが記事[邦訳]で批判している。デヴィッド・キャメロンとの議論の中で、レヴィットは無償医療を車が無料の市場になぞらえた。当然ながら医療市場は、この比喩には含まれていないいくつかの非常に重要な点において自動車市場とは異なっている。この比喩が役に立たないのではなくて(これはなぜアメリカがこんなにもたくさん医療に支出しているのかを説明するのに役立つ)、それよりも問題なのはこれが議論の出発点に過ぎないのであって、問題を総括するのに有用ではないということだ。

だからクルーグマンはこの点について正しいのだが、次のコメントは読んで私はPCの前で叫びだしたくなってしまった。

アメリカでは,比類ないほど民営化された制度をやっていて,ただ比類ないほど高くついてる1 .その一方で,医療の品質を示す指標は全体として,アメリカが質の面で優位にあるなんて示してはいない.これに照らしてみれば,「医療分野で民間市場はひどいはたらきをする」って命題は経験に裏付けられていることが証拠からしっかりと見て取れる.

「比類ないほど民営化された制度」だって? [Read more…]

  1. 訳注;この引用部はoptical_frog氏の訳を使わせて頂いているが、最初の一文だけサムナーの論旨に合わせて少々改めている。 []

スコット・サムナー「より高めのインフレ目標が必要というクルーグマンの話」

Scott Sumner, “Krugman on the need for a higher inflation target,” The Money Illusion, May 15, 2014.


ポール・クルーグマンが,もっと高いインフレ目標が必要だと提案するペーパーを公開してる (pdf).次のような論証には,異論の言いようがない:

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ニック・ロウ「短期ってどのくらい?」

Nick Rowe”How long is the short run? The macroeconomics of “doing nothing” revisited1 ” (Worthwhile Canadian Initiative, May 21, 2014)


私たちが通常、入門マクロ経済学を教える際に与える答えは次のようなものだ。「それは価格の粘着性による。もし価格がとても柔軟であれば短くなるし、価格がとても粘着的であれば長くなるだろう。」

もっと優れた答えもある。「それは金融政策による。もし金融政策がとても良いのであれば短くなるし、金融政策がとても悪いのであれば永久に続くことだろう。」

この点についてサイモン・レンルイスとは考えが一致していると思う。そしてこの点は単に入門マクロ経済学の学生だけに重要というわけではないということについてもサイモンに同意する。

多くの入門マクロ経済学の教科書は、短期・長期の区別をAD-ASの枠組みを使って解説している。価格水準(P)を垂直軸、実質産出(Y)を水平軸に置いてみよう。そして右下がりのAD曲線、垂直なLRAS曲線、右上がり(あるいは水平)のSRAS曲線を描く。そうしたら、この3つの曲線全てが同じ点で交差しているという長期均衡の状態からスタートしよう。この経済は下図の点Aにある。 [Read more…]

  1. 訳注;本記事以外にも、どのような金融政策がとられるかという議論抜きには意味がない(「何もしない」というのがどういう行動かも定義次第であり、それも一つの金融政策行動である)という主張はニック・ロウが繰り返し述べていることである。 []