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Archives for 7月 2014

ステファン・クラセン「サハラ以南アフリカの貧困と格差を測る」

Stephan Klasen “Measuring Poverty and Inequality in Sub-Saharan Africa: Knowledge Gaps and Ways to Address them“(blogs.worldbank.org, 29 July, 2014)

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ケニア、キベラにあるスラムを岩の上に座って見下ろす少年
​@Gates Foundation

アフリカ中の家計調査の質と量の向上のためにここ数十年費やされた数億ドルにも関わらず、私たちはサハラ以南アフリカにおける貧困と所得格差の水準と傾向について、非常に大雑把にしか把握していない。この残念な事態は多くの理由に起因している。

第一に、アフリカ諸国の統計能力は未だに弱く、調査の資金は援助者のお金に強く依存している。そのせいで調査作業の質、調査プログラムの当事者意識、そして何よりも深刻なことに調査の一貫性と比較可能性が低下しているのだ。この点について援助者は役に立っていない。彼らは大抵、調査の設計について独自の優先順位や目標(これは年によって変わり、それが調査票に反映される)、スケジュールを持っているうえ、時には貴重な国内の人的資源を彼らの調査プログラムに割かせることによって統計能力を損なうことすらある。 [Read more…]

アレックス・タバロック「セックスの需要と供給」

Alex Tabarrok “The Demand and Supply of Sex1 “(MarginalRevolution, July 28, 2014)


Alternet:本質的に男は女よりもセックスに興味を強く抱いているという考えはあまりにもありふれていて、人々が今までそうでないように考えたことがあるなど想像しがたい。しかし西洋史のほとんど、すなわち古代ギリシャから19世紀初めまで、当時の女はセックス狂でエロマニアだと考えられていた。とあるギリシャ神話の逸話においては、男と女のどちらがセックスをより楽しんでいるのかについてゼウスとヘラが言い争う。そして二人は、かつてヘラが女に転換させたこともある預言者テイレシアースにこれを尋ねる。彼は次のように答えた。「セックスの快感を10に分けたとしたら、そのうち1は男にいき、残りの9は女にいく。」時代が下ると、女はイヴから裏切りを受け継いだ妖婦であると考えられるようになった。女のセックスへの情熱は彼女らの劣った倫理観、理性、知性の印と見られ、夫や父による厳しい支配を正当化する理由となった。男はそれほどには色欲にとらわれておらず、より優れた自制心を持っており、権力や影響力を持つ立場を占めるのに本質的により優れている性別だったのだ。 [Read more…]

  1. 訳注;英語のsexには「セックス」の他、単なる「性別」の意味もあり、内容から見ても原著者は男女の需要と供給のことを念頭にこうしたタイトルにした可能性もある。 []

ポール・クルーグマン「事実が事実であっちゃいけないときにやりがちなこと」

Paul Krugman, “When the Truth Just Cannot Be True,” Krugman & Co., July 25, 2014.
[“Health Care Hatred,” July 14, 2014; “This Age of Infallibility,” July 15, 2014]


事実が事実であっちゃいけないときにやりがちなこと

by ポール・クルーグマン

Cheryl Senter/The New York Times Syndicate

Cheryl Senter/The New York Times Syndicate

適正価格医療保険法 (Affordable Care Act) に関するいいニュースがあれこれとでてる.どれも,疑いの余地があると考えるべきじゃない.登録は目標を上回ってる.複数の独立調査から,保険未加入の国民は急減してるのがわかる.理由はさておき,ともかく医療コストの増加は実のところ劇的に減速している.新規に保険加入した人たちは,総じて保険の保障範囲に満足している.
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ポール・クルーグマン「高インフレ到来っていう神話」

Paul Krugman, “Inflation Mythology,” Krugman & Co., July 25 2014.
[“Always Inflation Somewhere,” July 19,2014; “Understanding the Crank Epidemic,” July 17, 2014]


高インフレ到来っていう神話

by ポール・クルーグマン

MEDI/The New York Times Syndicate

MEDI/The New York Times Syndicate

かれこれ6年あまりもアメリカで札付きの連中が予測しつづけてるハイパーインフレがいっこうに到来してないねって指摘するたびに,「いーや,到来してるね.政府が統計でウソをついてるんだっつーの」ってコメントを山ほど頂戴する.
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デヴィッド・サハ「環大西洋貿易投資パートナーシップ:経済学ブログでの議論まとめ」

David Saha “The Transatlantic Trade and Investment Partnership: Review of the debate on economic blogs“(VOX, 20 July 2014)

環大西洋貿易投資パートナーシップ (TTIP) の初期草案は、その想定される利点と欠点について大きな公での議論に火をつけた。本稿では、このパートナーシップに賛成あるいは反対する議論の一部を取り上げる。既に相対的には貿易障壁が低い中にあって経済的な便益がどれほどのものになるのかという議論がある一方で、批判者はこの協定によってEUにおける消費者保護、公共サービスの提供、環境保護の基準を引き下げることになると主張している。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「フリードマンは大恐慌をどのように分析したか?」

●Tyler Cowen, “How would monetarism have fared against the Great Depression?”(Marginal Revolution, August 11, 2013)/(訳者による付記)アレックス・タバロック「バーナンキVSフリードマン」(227thday氏による訳)とあわせて参照あれ。


この話題についてはポール・クルーグマンが折に触れて取り上げているところだが(最新のエントリーはこちらを参照)、例えば彼は次のように書いている。

しかしながら、主要なポイントは次のところにある。すなわち、我々は古典的なマネタリズム(classic monetarism)からは大きく隔たった位置にいるということだ。古典的なマネタリズムによると、中央銀行は(例えばM2のような)貨幣集計量を自らの意のままにコントロールすることができ、そして経済の成り行きは貨幣集計量の動きによって決定付けられるということになるが、そのような(古典的なマネタリズムによる)主張は一旦経済がゼロ下限制約下に追いやられてしまった場合1には全く成り立たないのだ。フリードマンによる大恐慌(Great Depression)の分析が間違いである理由はこの点を認識していないところにある。

私はクルーグマンとは考えが違う。フリードマンが大恐慌をどう分析したかといった問題を論じる際にはフリードマン本人の発言(フリードマン自身がどう語っているか)に直接あたるようにした方が議論も実りあるものとなることだろう。この話題(フリードマンは大恐慌をどう分析したか?)を巡る私の考えについては過去のエントリーでまとめているので、以下にその一部を引用しておくことにしよう。 [Read more…]

  1. 訳注;中央銀行が操作対象とする政策短期金利がゼロ%に達してしまった場合 []

アレックス・タバロック「社会主義の道徳への影響」

Alex Tabarrok “Moral Effects of Socialism“(MarginalRevolution, July 19, 2014)


ダン・アリエリーとその共著者は興味深い新論文において、ドイツの東と西で育った人々の道徳的行動、具体的には不正行為について調べている。

1961年から1989年にかけて、ベルリンの壁が1つの国家を2つの全く異なる体制に分割していた。私たちはこの自然実験を利用し、社会政治的背景が個人の正直さに影響を与えるかどうかを調べた。抽象的なサイコロ投げの課題を用いたところ、社会主義の下に置かれた東ドイツ人は資本主義の下に置かれた西ドイツ人よりも不正行為を多く働くことを見出した。私たちはさらに、不正行為は妥当な反論が可能な状況においてより高い確率で起きることも見出した。 [Read more…]

ポール・クルーグマン「改革保守派が言う新アイディアは昔ながらのやつとなにも変わらない」

Paul Krugman, “Reform Conservatives’ New Ideas Are the Same Old Ideas,” Krugman & Co., July 18, 2014.
[“Trick or Tweak,” July 2, 2014; “The Meme is Out There,” July 9, 2014]


改革保守派が言う新アイディアは昔ながらのやつとなにも変わらない

by ポール・クルーグマン

KAL/The New York Times Syndicate

KAL/The New York Times Syndicate

先日,『ニューヨークタイムズ・マガジン』のカバーストーリーで,作家のサム・タネンハウスがこう問いかけてた――「共和党はアイディアに満ちた党になれるか?

そりゃノーでしょ.これもまた,単純な問いに単純な答えが出る一例だ.
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ポール・クルーグマン「Uber 時代のスマート通勤」

Paul Krugman, “A Smarter Commute In the Age of Uber,” Krugman & Co., July 18, 2014.
[“Life without Cars,” The Conscience of a Liberal, July 15, 2014.]


Uber 時代のスマート通勤

by ポール・クルーグマン

Patrick T. Fallon/The New York Times Syndicate

Patrick T. Fallon/The New York Times Syndicate

このところ,スマートフォン配車サービスの Uber とか Lyft なんかをめぐる議論をちょっと追いかけてる.少しだけ,独創的でもない考えを書いておこう.さて,厳密に言うと,その考えってのは独創的だ.つまり,ヨソで書かれてるのを読んだことがないって点ではぼくなりの考えにはちがいないけど,でもまあ,どこかで誰かが書いてるだろう.というわけで,これは参考のためでもある.
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アレックス・タバロック「バーナンキVSフリードマン」

Alex Tabarrok “Bernanke v. Friedman” (MarginalRevolution, July 15, 2014)


ミルトン・フリードマンは、大恐慌が起こったのは銀行制度の崩壊によりマネーストックの減少と貨幣速度の減速が起こり、それが大規模な総需要の不足を招き、かつそれにFEDが対策をとらなかったからだと主張した。彼のアンナ・シュワルツとの共著の題名、「合衆国貨幣史」は的を射たものだ。ベン・バーナンキもまた、銀行制度の危機を大恐慌の筋書きの中心に据えているが、その伝播の仕組みは大きく異なっている。バーナンキによると、銀行制度の危機は信用の崩壊を招いた。大恐慌研究に関する彼の貢献もまた、「大恐慌の伝播における金融危機の非貨幣的影響」という的を射た題名となっている。 [Read more…]