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Archives for 12月 2014

タイラー・コーエン 「最も影響力のある経済学者は誰?」

●Tyler Cowen, “Who are the most influential economists?”(Marginal Revolution, December 31, 2014)


エコノミスト誌が掲げる「影響力のある経済学者ランキング」に対してあちこち怒りの声が上がっている。このランキングの妥当性についてああだこうだと口出しするつもりはないが、ここで一点だけ指摘させてもらいたいことがある。「この種のランキングを作成したければ誰某に意見を求めればいい」「一番信頼できるデータはこれだ」「推定を行う際には一般化モーメント法(Generalized Method of Moments)を使うべきだ」云々とありがたい忠告が方々から寄せられているわけだが、「タイラー・コーエンに尋ねよ」という単純極まりないアルゴリズムが最も優れた答えを弾き出してくれる場合が少なくないともっぱらの噂だ。というわけで、私が考える「ここ最近において最も影響力のある経済学者」をリストアップすると以下のようになるだろう(順不同)。

1. トマ・ピケティ(Thomas Piketty)

2. ポール・クルーグマン(Paul Krugman)

3. ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)

4. ジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)

5. アマルティア・セン(Amartya Sen)

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ポール・クルーグマン「ウラジミール・プーチンのロシアはガタガタになってる」

Paul Krugman, “Vladimir Putin’s Unraveling Russia,” Krugman & Co., December 26, 2014.
[“Putin on the Fritz,” December 15, 2014; “Petrothoughts,” December 14, 2014]


ウラジミール・プーチンのロシアはガタガタになってる

by ポール・クルーグマン

TOM/The New York Times Syndicate

TOM/The New York Times Syndicate


いかに迅速かつ疑問の余地なしにロシア経済の歯車が狂ってきたか,目を見張るものがあるね.石油価格急落が大きな原動力になってるのは一目瞭然だ.だけど,ルーブルの下落はブレント石油の下落より進んでいる――今年はじめから石油は 40 パーセント下落しているのに対し,ルーブルは半値になってる.
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ポール・クルーグマン「芸人としての経済学者」

Paul Krugman, “Economists as Entertainers,” Krugman & Co., December 26, 2014.
[“The Oz Effect,” The Consciece of a Liberal, December 20, 2014.]


芸人としての経済学者

by ポール・クルーグマン

Christopher Gregory/The New York Times Syndicate

Christopher Gregory/The New York Times Syndicate


イギリスの研究者たちによると,ドクター・オズが語っている健康アドバイスの半分以上は,根拠レス(主張を支える根拠がない)か,間違っている(根拠は彼の言い分と矛盾している)んだそうだ.Vox のジュリア・ベルズが言うには,意外でもなんでもないとのこと:「なにより,オズは娯楽産業の人間だ」と彼女は書いている(リンク).

でも,今回の要点はそこじゃない.要点は,娯楽産業とは思われなそうな分野にもドクター・オズたちがうじゃうじゃいるってことだ.
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アレックス・タバロック 「クリスマスツリー戦争 ~『人工』vs.『天然』~」

●Alex Tabarrok, “Not From the Onion: The Christmas Tree War”(Marginal Revolution, November 9, 2011)


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slateより転載

「人工のクリスマスツリー」を販売する陣営(以下、「人工」陣営)と「天然のクリスマスツリー」を販売する陣営(以下、「天然」陣営)との間で主導権をめぐる「戦争」が長年にわたり繰り広げられている最中だが、これまでのところは「人工」陣営が優勢というのが実状だ。しかし、「天然」陣営も黙ってはいない。「天然」陣営が組織する全米クリスマスツリー協会(The National Christmas Tree Association)が形勢逆転を狙ってここにきて「情報戦」を仕掛けてきているのだ。作戦名は「ニセモノのクリスマスツリーに関する隠された真実」(What You Might Not Know About Fake Christmas Trees)。例えばこういう具合だ。「ニセモノのクリスマスツリーの原料はリード線であり、製造地は中国である。それも搾取された労働者たちの手によって作られているのだ」。個人的にお気に入りの「口撃」もついでに引用しておこう。

・・・ニセモノのツリーを初めて開発した会社は元々トイレ用ブラシを製造していた。・・・これまでにテクノロジーは目覚しい進歩を遂げてきていることは確かだが、ニセモノのクリスマスツリーの第一号は緑色をした巨大なトイレ用ブラシに他ならなかったという史実には依然として興味をそそられる。

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アレックス・タバロック 「サンタの正体は?」

●Alex Tabarrok, “Father Christmas?”(Marginal Revolution, December 24, 2007)


6歳と9歳の二人の息子が次のような会話を交わしていた。

「丸々と太ったデブがトナカイに乗って世界中を一晩で飛び回るっていうんだぜ? そんな話信じられる? 馬鹿げてるよ。」

「僕もそう思う。」

「じゃあ誰がプレゼントを用意してくれてるんだろう? パパかなあ?」

「違うんじゃないかなあ。パパならお金をくれるはずだもん1。」

  1. 訳注;経済学者であるパパ(タバロック)は「クリスマスの死重的損失」の話題をよく知っているはずだ。だからわざわざプレゼントを買うはずがなく、直接お金を渡すはず。毎年のように枕元に(お金ではない)プレゼントを届けてくれるサンタの正体がパパのはずがない、という意味。 []

ジェームズ・ハミルトン 「原油価格の急落は景気の下振れをもたらすか?」

●James Hamilton, “Do falling oil prices raise the threat of deflation?”(Econbrowser, December 21, 2014)


ここのところ原油価格が急速な勢いで下落しているが、その影響のためにアメリカ国内のインフレ率がFedの目標である2%を大きく下回る可能性がある。仮にそうなった場合、アメリカ経済は新たなリスクを抱え込むことになるだろうか? 私の答えは「ノー」である。以下でそう考える理由を説明しよう。

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PCEデフレーターの月次ベースの変化率(前年同月比)の推移(データの出所;FRED

経済学者が依拠する理論的なモデルの枠内で「インフレ」が話題とされる際には、名目賃金を含めたあらゆるモノ(財やサービス)の価格が同時に同じ割合だけ上昇する状況を指してインフレと呼ぶことが多い。名目金利が一定のままであれば、そういう意味でのインフレ(率)が低ければ低いほど、資金の借り入れに伴って負担すべき実質的なコスト(実質金利)は高まることになる。現在のアメリカでは短期名目金利はゼロ%の水準に張り付いているが、今後もしばらくそのような状況が続いたとしよう。そのような中でインフレが低下することになれば(実質金利が高まることで)総支出(総需要)が収縮する可能性がある。Fedにとってはそのような事態は御免被りたいことだろう。・・・と理論的にはそういう話になる。

一方で、現実の世界に生きる消費者たちがインフレについて語る際には経済理論が説くのとはかなり異なる意味合いを持たせることが多い。世間一般の多くの人々は自分が受け取る(名目)賃金の水準はそれまでと変わらない一方で頻繁に購入する個別の財やサービスの価格が上昇する状況を指してインフレと見なす傾向にあるのだ。このような(「インフレ」に関する経済理論と世間一般の人々との間での)認識のギャップを踏まえれば、Fedがインフレの引き上げを追い求める一方で、大半の消費者はインフレの引き上げ(上昇)を嫌うというのも特に不思議な話でもないと言えよう。

今年の秋以降における原油価格の動向は世間一般の人々の物価観(物価の捉え方)にフィットするところがある。アメリカ国内におけるガソリンの平均小売価格は現在のところ1ガロン=2.40ドル程度の値をつけている。一方で昨年を振り返ると、昨年1年間のガソリンの平均小売価格は1ガロン=3.60ドルであり、アメリカ国内におけるガソリンの消費量は1350億ガロンに上った。仮にガソリンの小売価格が今後も現在の水準(1ガロン=2.40ドル)のままで推移し、アメリカ国内の消費者や企業が昨年と同じ量のガソリンを消費するとすれば、合計で1600億ドルのお金が浮く計算になる。言い換えると、(アメリカ全土の世帯数は1億1600万世帯であることを踏まえると)1世帯あたり1400ドル分の余裕が予算に生まれ、その余裕をもとにしてガソリン以外の財(やサービス)の購入を増やすことが可能となるわけなのだ。

このような「棚ぼた」の発生は低所得世帯にとっては特に大きな事件だといえるだろう。というのも、低所得層は他のどの世帯にもまして予算(所得)のずっと多くの割合をエネルギー向けの消費に費やしているからだ。

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データの出所;Daniel Carroll

世の消費者たちはこのような「棚ぼた」を手に入れるや高額の耐久財――景気の動向を左右する上でかなり大きな役割を担っている財――の購入に前向きになる傾向にある。過去のデータはそう告げている。

結論を述べよう。ガソリン価格の下落に端を発するデフレ(ないしはインフレの低下)は総需要の落ち込みを相伴うことはないと考えられる。ガソリン価格の下落に伴うデフレ(ないしはインフレの低下)が持つ効果をあえて指摘すると、それはFedに対して金利の引き上げ(ゼロ金利の解除)に動くのをもう少しだけ辛抱させる点にあると言えるだろう。

ポール・クルーグマン「イギリス版ポール・ライアンあらわる」

Paul Krugman, “Intellectual Dishonesty on Display in Britain,” Krugman & Co., December 19, 2014.
[“Flimflam Does London,” The Conscience of a Liberal, December 6, 2014]


イギリス版ポール・ライアンあらわる

by ポール・クルーグマン

Kieran Dodds/The New York Times Syndicate

Kieran Dodds/The New York Times Syndicate


イギリス財務大臣ジョージ・オズボーンの秋声明 (Autumn Statement) で,イギリス首相デイヴィッド・キャメロンの財政プランが明らかになった.これを見て,評論家たちの間にかなりの不信が広がっている.
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ポール・クルーグマン「早すぎる利上げは破滅的になりかねない」

Paul Krugman, “Raising Rates Too Early Could Be Disastrous,” Krugman & Co., December 19, 2014
[“Jean-Claude Yellen,” The Conscience of a Liberal, December 10, 2014.]


早すぎる利上げは破滅的になりかねない

by ポール・クルーグマン

Kirsten Luce/The New York Times Syndicate

Kirsten Luce/The New York Times Syndicate


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[▲ 食品・エネルギーを除く個人消費支出(1年前の同じ四半期と比べたパーセント変化]

連銀はまちがいなく金融引き締めに向けて動き出しつつあるようだ.でも,インフレ率はいまだに目標値を下回っている.『エコノミスト』誌でライアン・アベントが言ってることに,ぼくも賛成する:もし利上げをやれば大失敗になる――ちょうど,欧州中央銀行総裁ジャン=クロード・トリシェが2011年にヨーロッパで利上げに踏み切ったのと同じ大失敗,スウェーデン中央銀行の早期利上げと同じ失敗,そして2000年に日本がやった利上げと同じ失敗になるだろう.
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パオロ・マナッセ 「経済学ブログの経済学」

●Paolo Manasse, “The economics of economics blogs”(VOX, October 28, 2011)


経済学者の仕事はインセンティブの働きを理解することにある。その証拠に経済学者によるブログでもあちこちでインセンティブの話題が取り上げられている。ところで、一流の経済学者たちが貴重な時間を「浪費」してまでブログに手を出すインセンティブは何なのだろうか? これは研究に十分値する問題である。

特にアメリカを拠点とする経済学者に言えることだが、彼らの多くはブログの運営にかなりの時間と労力を注いでいる(名の知れた例としては、スティーヴン・レヴィットポール・クルーグマンブラッド・デロンググレゴリー・マンキューダニ・ロドリックベッカー&ポズナーマーク・ソーマジョン・テイラーらの名前を挙げることができるだろう)。その理由は何なのだろうか? 専門ジャーナルに論文を投稿してもそれが無事に受理されて公にされるまでには長い時間を要するが、それなりに年齢を重ねた経済学者にとってはその長いタイムラグが我慢ならないというのも一因なのだろうか? あるいは、経済学者という存在や経済学上の専門的な研究に対する世間の注目を高めたいという思いがあるのだろうか? それとも、「市民としての義務」(“civic duty”)を果たす――経済学のアイデアを誰もが理解できるようにしたり、議論を喚起して読者である世間一般の人々と意見交換する――ためということなのだろうか? もっと頭を悩まされる別の疑問もある。ヨーロッパの多くの国々――とりわけイタリア――の経済学者はアメリカで活躍する経済学者ほどにはブログの運営に乗り気ではないようだが、それはどうしてなのだろうか? [Read more…]

タイラー・コーエン 「『公共財の私的供給』の例としてのブログ」

●Tyler Cowen, “Blogs and the private production of public goods”(Marginal Revolution, October 13, 2003)


ブログというのは「公共財の私的供給」の注目すべき例の一つだといえるだろう。ブログの執筆者(ブロガー)はモチベーションも高く、豊かな素養を備えていることもしばしばである。ブログではありとあらゆる問題について瞬時かつタイムリーなかたちで意見やコメントが続々と開陳される。しかし、その対価として金銭的な報酬を得ているブロガーは稀だ。「知への愛」が執筆動機だというブロガーもいれば、今のところはできるだけ高い評判の獲得に努めて後々その評判をてこにお金を儲けようとの魂胆を秘めているブロガーもいることだろう。現在(2003年現在)までのところ、400万を超えるブログが開設されているということだ。

しかし、おそらく誰もが予想していることだろうが、ブロガーのすべてが公共財の供給に貢献しているわけではないのが実状だ。率直に言うと、ブロガーの多くは「怠け者」なのである。最新の研究結果の一つは次のように伝えている。

研究のハイライト:ブログのうちおよそ4分の1は開設してたった1日で(開設された次の日以降から)放置される。男性と女性を比べると、男性のほうが飽きる(ブログを放置する)のが若干早い。なお、どちらかと言うと女性のほうがブログの開設に踏み切る傾向が高い。年齢に着目すると、全体の90%を上回るブログが30歳未満の人物によって開設されている。放置されていないブログを対象とすると、ブログの更新頻度は平均すると14日(2週間)に1回というペースでしかないということである。