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アレックス・タバロック/タイラー・コーエン「ノーベル経済学賞はアンガス・ディートンが受賞」

Alex Tabarrok “Angus Deaton wins the Nobel“(Marginal Revolution, October 12, 2015)

プリンストン大学のアンガス・ディートンがノーベル賞を受賞した。世銀と協力しつつ、ディートンは途上国に関するデータを拡大するのに非常に大きな役割を果たしてきた。読者諸兄が世界の貧困が史上初めて10%を下回ったという記述を目にして、それをどうやって把握したのかをということを知りたいのであれば、その答えはディートンによる家計調査、データ収集、厚生の計測だ。ディートンの主要な貢献は、世界の貧困についての理解と計測だと私は考えている。

厚生の計測は言うは易し行うに難しだ。 [Read more…]

スタンレー・フィッシャー「ユーロ圏の過去、現在、将来における課題」

Stanley Fischer “Past, Present, and Future Challenges for the Euro Area” (At the ECB Forum on Central Banking conference “Inflation and Unemployment in Europe”, Sintra, Portugal, May 21, 2015)


中央銀行に関するECBフォーラムに参加することができたのは光栄であり、嬉しく思います。ドラーギ総裁をはじめとするECB理事会の委員の方々のご招待に対し御礼を申し上げます。1 この会議のトピックはインフレと失業ではありますが、私はECBとユーロ圏が過去に直面し、将来に直面するかもしれないいくつかの過去、現在、将来の課題を議論するという別の観点からお話しさせて頂きたいと思います。

私のテーマはジャン・モネから拝借しています。彼は1976年に次のように書いています。「ヨーロッパは危機の中で鍛え上げられ、それら危機のために採用された解決策の足し合わせとなるだろう」2 この言葉は、ルイージ・ギソ、パオラ・サピエンツァ、ルイージ・ジンガレスの最近の論文によって議論されており、モネの論点に対する彼らの見解は「モネの誤り?」3) というその論文の題名から察しうるものです。同様の言葉は、2003年にジャック・シラク、2010年には元ECBチーフエコノミストのオトマー・イシングも述べています。4 私がこの効果に関する言説を聞いたのは、2011年のジャクソンホール会議におけるジャン=クロード・トリシェが初めてでした。5 [Read more…]

  1. 原注1;連邦準備制度理事会のBrian Doyle, Jane Haltmaier, Stacey Tevlin, Paul Woodの助けに感謝する。述べられている見解は私自身のものであって、必ずしも理事会や連邦公開市場委員会ないし連邦準備制度のそれではない。 []
  2. 原注2;Jean Monnet (1976), Memoires (Paris: Fayard)を参照。 []
  3. 原注3;Luigi Guiso, Paola Sapienza, and Luigi Zingales (2015), “Monnet’s Error?” NBER Working Paper Series 21121 (Cambridge, Mass.: National Bureau of Economic Research, April []
  4. 原注4;2003年のテレビインタビューにおいて、シラクは「いつであれ危機が起きた時は、我々はより強いヨーロッパと共にそこから抜け出してきた。」と述べている。TF1 and France2 (2003)”Excerpts of TV Interview by President Chirac to TF1 and France2, March 10″ を参照。2010年11月、(当時ECBのチーフエコノミスト兼理事会委員であった)イシング博士はパヴィア大学経済学部における国際経済統合に関する名誉学位授与の際にスピーチを行った。彼は「結局のところ、いわゆる「ヨーロッパ」というものは、多くの危機を潜り抜けてきており、概してその一つ一つの危機からより強くなって抜け出してきた。」と述べた。Professor Otmar Issing Address,” in “Otmar Issing: An Economist and Architect of Supranational Institutions (PDF),” Leaving the Board introduction by Guido Montani, Il Politico (University of Pavia, Italy), no. 1, p. 22. を参照。 []
  5. 原注5:一年後、2012年のジャクソンホール会議で、私は次のようにジャン=クロードを引用した。「ヨーロッパプロジェクトは進行中のプロジェクトです。これは通貨同盟に至るという特定の目標を持って立ち上げられたのではありません。私たちは開始以降次から次へと危機に見舞われれました。このプロセスの各段階において、私たちはアメリカ人から同じ話を聞いてまいりました(中略)「お前らヨーロッパ人は決断の仕方を知らないな。お前らはいつも遅い。ヨーロッパに電話したいときは何番を押せばいいんだ?この夢は失敗に終わる運命なんだよ」と。私たちは毎回この話を聞いてきましたし、私たちは遅かった。しかし結果としてみれば私たちはあらゆる危機からより強くなって抜け出してきました」最近私はジャン=クロードに話しかけ、これが2011年に彼の言ったことであるかどうかを確かめてもらった。彼は肯定したが、自分が「私たちは遅かった」と述べたことには疑いを呈した。というのも彼は大抵「私たちは大胆だった」と述べるからだという。 []

アレックス・タバロック「ジョン・ナッシュよ、安らかに」

Alex Tabarrok “John Nash, RIP” (Marginal Revolution, May 24, 2015)

ジョン・ナッシュとその妻が昨日交通事故で亡くなった。

CNN:1994年にノーベル経済学賞を受賞したナッシュは、ゲーム理論における業績とともに、私生活における妄想型統合失調症との闘いによって知られている。彼の人生談はラッセル・クロウとジェニファー・コネリーがナッシュ夫妻として主演した2001年のオスカー賞受賞映画「ビューティフルマインド」に着想を与えた。

ナッシュの27ページの論文は最終的に彼にノーベル経済学賞をもたらした。ナッシュの論文は、フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの協力的で交渉型解決のゲーム理論を、各プレーヤーが自己利益のために行動すると仮定した非協力的解決に拡張し、それによってこの理論を経済学、ビジネス、政治学、さらには動物行動と進化の理論にさえ恐ろしいほど関連するものにした。

ナッシュのゲーム理論における業績のさらなる背景はここ。ここにあるPBS1 のドキュメンタリー「ビューティフル・マッドネス」のサイトには、多くのインタビューと彼の業績と影響に関するさらなる解説がある。

  1. 訳注:米公共放送サービス []

タイラー・コーエン「ぼっち遊びは思ったよりも楽しい?」

Tyler Cowen “Do people underestimate how much they will enjoy doing things alone?” (Marginal Revolution, May 4, 2015)

ロベルト・フェルドマンは次のようにレポートしている:

ラトナーは「孤独なボーリングへの妨げ(Inhibited from Bowling Alone)」という題する新たな研究を行ったが、これはアメリカ人の団体アクティビティへの参加の減少を論じたロバート・パットナムの著書1 に賛意を示すものだ。この研究は8月のJournal of Consumer Researchに掲載される予定。この中でラトナー、そして共著者のマクドナー経営大学院マーケティング学教授であるレベッカ・ハミルトンは、彼女らの発見について論じている。すなわち、人々はショーや博物館、映画、レストランに一人で行くことのがどれだけ楽しいのかを、常に過小評価するというのだ。ラトナーによれば、人々の働く時間が増え、婚期が遅くなり、そしてしまいには自由な時間が少なっているため、この計算間違いはますます問題となっているという。

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  1. 訳注:柴内康文訳「孤独なボウリング――米国コミュニティの崩壊と再生(原題:Bowling Alone: the Collapse and Revival of American Community)」(柏書房, 2006年) []

ジョシュ・アングリスト他「計量経済学の教え方」

Josh Angrist, Jörn-Steffen Pischke “Mastering metrics: Teaching econometrics“(VOX, 21 May 2015)

(訳者前書き:以下の記事は、原文著者による自著の宣伝が多分に含まれますが、同書を勧める意図から投稿している訳ではありません。)

経済学という学問は、過去半世紀の間に遥かに実証的となり、抽象的・理論的色合いがかなり薄れたことで劇的に変わった。変化の風は応用ミクロ経済学において最も強く吹いたが、計量経済学はそれに大きく後れをとっている。本稿では、計量経済学の授業には総点検が必要であり、そうした変化は教科書の改良から始めるべきであるということを論じる。


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タイラー・コーエン「ランダム化対照実験(RCT)による貧困削減の新結果」

Tyler Cowen “The new RCT results on poverty reduction” (Marginal Revolution, May 15, 2015)

デクラン・バトラーが次のようにリポートしている

世界の最貧困層に2年間の援助パッケージ、すなわち現金、食料、保健サービス、スキルのトレーニングとアドバイス等を与えることによって、彼らの生活をこの援助が打ち切られてから少なくとも1年間は向上させることができる。これが6カ国における10,000世帯以上に対する実験結果だ。 [Read more…]

スコット・サムナー「世界経済の成長」

Scott Sumner “Global growth” (TheMoneyIllusion, March 22, 2015)


マッキンゼーが世界経済に関する報告書を送ってきてくれたが、これはオンラインでも読める。この報告書の中では次のことが目を引いた。

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(1964年の世界全体の経済は、今日の中国経済と同じ大きさ)

どういうわけでこんなことが起こり得るのだろうか。答えは次のグラフにある。 [Read more…]

ミカエル・トルカノ「技術は教師に取って代わるのか?」

Micael Trucano”Will technology replace teachers? No, but …“(blogs.worldbank.org, 24 February, 2015)


framebreaking 未来では、機械は私に取って代わって私の代わりに別の機械を壊してくれるだろうか

これまで15年以上に渡って数十もの国における教育技術事業について、取組み、助言を行い、評価を行ってきた。情報コミュニケーション技術(ICT)に日常的に親しんでいる人ならば誰でも知っているように、技術分野で働いていると変化というものは常に起こっている。(それに対し、教育分野において変化は常に起こっているということは言えるにせよ、変化それ自体はよりゆっくりと訪れる・・・。)技術それ自身は頻繁に変化する場合がある一方で、そうした技術の導入や使用に関する非常にありふれた疑問の多くは大体が同じものだ。 [Read more…]

タイラー・コーエン「ベンガル大飢饉の原因」

Tyler Cowen”The causes of the Bengal famine” (Marginal Revolution, February 17, 2015)

1943年のベンガル大飢饉は、アマルティア・センをはじめとする人々によって市場の失敗の典型例1 として引用されてきた。でもその新たな(そして素晴らしい)著書「死者を食べるというのは誤り‐飢饉の過去と未来に関する小論集(Eating Dead People is Wrong, and Other Essays on Famine, Its Past, and Its Future ※未邦訳)」において、コルマック・オグラダはこのベンガル大飢饉にまるまる一章を割き、そのような見方とは違った印象を与えてくれる。その要旨を示す箇所を引用しよう。

欲望とパニックによって生まれた投機が、主食である米の「人工的な」不足を作り出したという「エンタイトルメント飢饉2 」として、1943~44年の飢饉はパラダイムとなった。この章において私は、前述した意味における投機ではなく、戦争への注力を食料へと向けるための政治的意思の欠如が飢饉の主な原因であったことを述べてきた。

私としては、飢饉が進行した際に価格統制が導入されたこと、貯蔵業者に対するネガティブキャンペーンが行われたことも付け加えたい。

この本の中では、かなり多くの人肉食が起きたとされる1946~47年のモルドバでの飢饉に関する議論もものすごく面白かった。

  1. 訳注:大規模な飢饉に至るほどではない食料生産の落ち込みがあった際、食料不足や食料価格の高騰を見込んだ買占めが発生することによって、結果として飢饉が発生してしまうという意。 []
  2. 訳注:アマルティア・センは著書「貧困と飢饉」の中で、得るはずのものを得るための力(エンタイトルメント)のどこかに欠陥が生じることで飢饉が生じるとしている。 []

タイラー・コーエン「ギリシャはユーロ圏を本当に離脱するか」

Tyler Cowen “Is Greece really going to leave the eurozone?” (Marginal Revolution, February 17, 2015)

誰にもわからないね。最新のヘッドラインやツイートへの反応が過剰すぎるのかどうかも。様々な政党がバラバラになればなるほど、譲歩を迫る圧力は強くなる。合意が近いように見える分だけ、強硬な態度を取って更なる譲歩を要求するインセンティブは大きくなる。だから短期的なニュースは解釈が難しく、そうしたものに執着してはだめだ。ある方向への振れは、かなり多くの場合逆方向への振れを意味している。たとえ後者はまだヘッドラインになっていなくてもだ。つまり最新のニュースによる振れの方向は、そんなに多くの情報はもたらしてくれない。

ギリシャがどうなるかについては、よく言うところの「最後の鐘」が鳴る、すなわちギリシャから預金が危機的な速度で逃げ出す(逃げ出さないかもしれない)か、ECBが緊急流動性支援を打ち切る(打ち切らないかもしれない)までは分からないだろう。

だったらなぜ、ギリシャがユーロ圏を離脱すると私は考えているのか[Read more…]