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ミカエル・トルカノ「技術は教師に取って代わるのか?」

Micael Trucano”Will technology replace teachers? No, but …“(blogs.worldbank.org, 24 February, 2015)


framebreaking 未来では、機械は私に取って代わって私の代わりに別の機械を壊してくれるだろうか

これまで15年以上に渡って数十もの国における教育技術事業について、取組み、助言を行い、評価を行ってきた。情報コミュニケーション技術(ICT)に日常的に親しんでいる人ならば誰でも知っているように、技術分野で働いていると変化というものは常に起こっている。(それに対し、教育分野において変化は常に起こっているということは言えるにせよ、変化それ自体はよりゆっくりと訪れる・・・。)技術それ自身は頻繁に変化する場合がある一方で、そうした技術の導入や使用に関する非常にありふれた疑問の多くは大体が同じものだ。 [Read more…]

タイラー・コーエン「ベンガル大飢饉の原因」

Tyler Cowen”The causes of the Bengal famine” (Marginal Revolution, February 17, 2015)

1943年のベンガル大飢饉は、アマルティア・センをはじめとする人々によって市場の失敗の典型例1 として引用されてきた。でもその新たな(そして素晴らしい)著書「死者を食べるというのは誤り‐飢饉の過去と未来に関する小論集(Eating Dead People is Wrong, and Other Essays on Famine, Its Past, and Its Future ※未邦訳)」において、コルマック・オグラダはこのベンガル大飢饉にまるまる一章を割き、そのような見方とは違った印象を与えてくれる。その要旨を示す箇所を引用しよう。

欲望とパニックによって生まれた投機が、主食である米の「人工的な」不足を作り出したという「エンタイトルメント飢饉2 」として、1943~44年の飢饉はパラダイムとなった。この章において私は、前述した意味における投機ではなく、戦争への注力を食料へと向けるための政治的意思の欠如が飢饉の主な原因であったことを述べてきた。

私としては、飢饉が進行した際に価格統制が導入されたこと、貯蔵業者に対するネガティブキャンペーンが行われたことも付け加えたい。

この本の中では、かなり多くの人肉食が起きたとされる1946~47年のモルドバでの飢饉に関する議論もものすごく面白かった。

  1. 訳注:大規模な飢饉に至るほどではない食料生産の落ち込みがあった際、食料不足や食料価格の高騰を見込んだ買占めが発生することによって、結果として飢饉が発生してしまうという意。 []
  2. 訳注:アマルティア・センは著書「貧困と飢饉」の中で、得るはずのものを得るための力(エンタイトルメント)のどこかに欠陥が生じることで飢饉が生じるとしている。 []

タイラー・コーエン「ギリシャはユーロ圏を本当に離脱するか」

Tyler Cowen “Is Greece really going to leave the eurozone?” (Marginal Revolution, February 17, 2015)

誰にもわからないね。最新のヘッドラインやツイートへの反応が過剰すぎるのかどうかも。様々な政党がバラバラになればなるほど、譲歩を迫る圧力は強くなる。合意が近いように見える分だけ、強硬な態度を取って更なる譲歩を要求するインセンティブは大きくなる。だから短期的なニュースは解釈が難しく、そうしたものに執着してはだめだ。ある方向への振れは、かなり多くの場合逆方向への振れを意味している。たとえ後者はまだヘッドラインになっていなくてもだ。つまり最新のニュースによる振れの方向は、そんなに多くの情報はもたらしてくれない。

ギリシャがどうなるかについては、よく言うところの「最後の鐘」が鳴る、すなわちギリシャから預金が危機的な速度で逃げ出す(逃げ出さないかもしれない)か、ECBが緊急流動性支援を打ち切る(打ち切らないかもしれない)までは分からないだろう。

だったらなぜ、ギリシャがユーロ圏を離脱すると私は考えているのか[Read more…]

メンジー・チン「教科書へ立ち戻って金融政策の有効性を考える」

Menzie Chinn “Thinking about Monetary Policy Efficacy: Back to the Textbooks“(Econbrowser, January 31, 2008)

(訳者注;本記事の原文は2008年1月31日に投稿されたものです。足元の情勢に関する記述は原文執筆時点における原著者の意見であることをあらかじめご承知おき下さい。)


FEDが金利を下げたこともあり、金融政策が産出に影響を与えるあらゆる経路を洗い出し、今の状況ですぐに効きそうなのはそのうちどれなのかを整理しているところだ。

ポール・クルーグマンは、住宅のストックがファンダメンタルから乖離している際には金利の変更は効果がない可能性があると見ている。ロバート・ライシュは、マネーベースの上昇に対応して貸出を拡大するには銀行の資産ポートフォリオはリスクを抱え過ぎていると述べている。トーマス・パレーは、契約の硬直性(変動金利型住宅ローンの金利見直し期間)が金利変更の効果を減少させるとしている。もう一つ別の線の主張は次の問いに要約できる。すなわち、ドットコム・ブームと住宅ブームの後、金融政策が影響を及ぼすことの出来る分野は何だろうかというものだ。

全てそれなりに妥当なところのある数々の異なる主張に出くわす際、私は典型的な教師が行うことを行う。教科書を手に取るのだ。具体的には、ミシュキンの教科書の第23章の図31 の助けを求める。 [Read more…]

  1. 訳注:原文に挿入されている図よりも解像度の良いもの(hicksianさん提供)に差し替えた。 []

タイラー・コーエン「なぜヨーロッパと日本ではデフレが続いているのか」

Tyler Cowen “Why is deflation continuing in Europe and Japan?“(Marginal Revolution, January 22, 2015)

次に引用するのは日本からのニュースだ。

ブルームバーグ・ニュースが行ったエコノミストへの調査によれば、日本銀行が2パーセントのインフレ目標を設定して4年後、物価は依然としてそれに満たない可能性がある。

16個の推計の中央値が示すところでは、消費者物価は2017年3月期の会計年度において平均1.4パーセント上昇し、生鮮食品と消費税による押上げを除けばインフレ目標が設定されてから2017年3月期まで2パーセントに達する年はない。黒田東彦総裁が2013年4月にその記録に残る刺激策を表明した際、彼は約2年以内に目標を達成したいと考えていた。

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ピーター・テミン&ダヴィッド・ヴァインズ「なぜケインズが今日大事なのか」

Peter Temin, David Vines ”Why Keynes is important today” (VOX, 14 November 2014)

ケインズ的刺激策に関する最近の議論は、ケインズが当初自らの理論を擁護した際に出くわしたものとよく似ている。本稿では、そうした当初の議論を解説するとともに、今日の政策議論をそうした文脈に照らし合わせる。現代ではリカードの等価定理や財政乗数がきちんと定義されているため、私たちは過去の人間よりもこの議論をうまく枠に当てはめることができる。著者たちは、短期経済の単純なモデルによって刺激策の論拠を実証できることを論じる。 [Read more…]

バンダリ&フランケル「途上国でこそ名目GDP目標を」

Pranjul Bhandari, Jeffrey Frankel ”Central banks in developing countries should consider targeting nominal GDP” (VOX, 21 August 2014)

中央銀行、とりわけても発展途上国のそれは、依然として透明性と信頼性のあるコミュニケーションを探求している。しかしフォーワード・ガイダンスあるいはコミットメントによる意図の伝達は、好ましくない制約を生み出してしまうことがある。本稿では、名目GDPの形で表現された中央銀行の発表は、インフレ率の形で表現された発表と比較して、発展途上国において非常に一般的である供給・貿易ショックとぶつかり合う可能性がより低いのだ。


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タイラー・コーエン「イスラエル兵士の死と誘拐の限界代替率はいかに」

Tyler Cowen “What is the implied MRS for dead vs. kidnapped Israeli soldiers?” (MarginalRevolution, August 8, 2014)


もし攫われた兵士がある特定の車の中にいると分かっている場合、その車のエンジンに向けて砲撃を行うことは許容されるとアミドロール氏は語った。「その兵士の命を確実に危険に晒すことにはなるが、彼を殺そうと意図するわけではありません」とは彼の言だ。

そうした形で兵士の命を危険に晒すことは道徳上許容されうるのかと問われると、アミドロール氏は次のように答えた。「戦争ってのが白か黒かとなかなか割り切れるものじゃないのは御存知でしょう。兵士たちは戦場に多くの危険があることを知っていなければならず、そしてこれはそうした危険のうちの一つです。」

これはイスラエル兵に関する話題なのだけれど、より一般的にはハンニバル手順と言われるものだ。その根底となる考えは、敵に捕らわれたイスラエル兵一人は最終的に1000人かそれ以上のパレスチナ人収監者と取引されうるというものだ。兵士が誘拐された状態が続くことは、イスラエル市民にとっては兵士が死ぬ場合以上に許容できない状況となる可能性があり、もちろんながら将来の兵士たちの士気にとってはそれ以上に大きな被害となる。 [Read more…]

ノア・スミス「ポール・ライアンの貧困対策案はイデオロギー上の変化だ」

Noah Smith”Paul Ryan’s poverty plan signals an ideological shift“(Noahpynyon, 1 August, 2014)

(訳注;本件の関連エントリ(optical_frog氏の訳)がありますので、あわせてご覧ください。


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(この文は元々Bloomberg Viewに投稿したもの)

数日前、共和党議員のポール・ライアンは人々を貧困から救い出すための案を発表した。彼がその概要を明らかにしたのは、ワシントンに本拠を置くシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所だが、これはいわゆる改革派保守運動と呼ばれるものの知的センターとして立ち上がったとされている。この案は州に対して機会助成(Opportunity Grants)と呼ばれる大規模なブロック助成を創設し、州が多くの反貧困プログラムを実施するよう指導するものだ。そうしたプログラムの中で最も画期的なのは、貧しい人たちが様々な面で生活を向上するための具体的な段階を踏むのを直接的に手助けするソーシャル・ワーカーを雇う点だ。 [Read more…]

ステファン・クラセン「サハラ以南アフリカの貧困と格差を測る」

Stephan Klasen “Measuring Poverty and Inequality in Sub-Saharan Africa: Knowledge Gaps and Ways to Address them“(blogs.worldbank.org, 29 July, 2014)

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ケニア、キベラにあるスラムを岩の上に座って見下ろす少年
​@Gates Foundation

アフリカ中の家計調査の質と量の向上のためにここ数十年費やされた数億ドルにも関わらず、私たちはサハラ以南アフリカにおける貧困と所得格差の水準と傾向について、非常に大雑把にしか把握していない。この残念な事態は多くの理由に起因している。

第一に、アフリカ諸国の統計能力は未だに弱く、調査の資金は援助者のお金に強く依存している。そのせいで調査作業の質、調査プログラムの当事者意識、そして何よりも深刻なことに調査の一貫性と比較可能性が低下しているのだ。この点について援助者は役に立っていない。彼らは大抵、調査の設計について独自の優先順位や目標(これは年によって変わり、それが調査票に反映される)、スケジュールを持っているうえ、時には貴重な国内の人的資源を彼らの調査プログラムに割かせることによって統計能力を損なうことすらある。 [Read more…]