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クリヴェリ&グプタ「資源豊富国の税制」

Ernesto Crivelli, Sanjeev Gupta “Revenue substitution in resource rich economies: Evidence from a new dataset” (VOX, 27 May, 2014)

資源豊富国はそれ固有の一連の困難を抱えている。天然の財産は祝福とも呪いともなるのだ。本稿では、天然資源による歳入とその他の税収の繋がりを検討する。その結果は、これらの国々は国内の税を天然資源に基づく歳入で代替する傾向にあるというものだ。すなわち、資源歳入1ドルにつき30セントの非資源税収が失われている。困ったことに、この代替は成長を損ないづらい税に偏重して起こるのだ。


商品価格の上昇と新規発見の増加により、2011年時点で天然資源からの歳入は天然資源豊富国の多くにおいて政府歳入の半分以上を占めている(図1)。時とともに、非資源税収が天然資源歳入で代替されていっていることをデータは示している。例えば、2000年から2011年にかけて全歳入に占める石油による歳入の割合の平均は80%から87%へと上昇した(図2)。こうした傾向は、鉱物輸出国においては比較的薄い(IMF 2012)。どちらの場合においても、歳入は商品価格の動きと足並みを揃えているようだ。

これらの歳入は、資源豊富国にとってインフラと重要な社会サービスの双方への支出を増大させる余裕を生み出している。ここでひとつの疑問が湧く。資源歳入への重度の依存は、成長の促進にとって適切なのだろうか。

図1.2011年の主要国における天然資源からの歳入

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出典: IMFスタッフによる推定

図2.天然資源からの歳入
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出典: IMFスタッフによる推定

資源歳入の増加により天然資源豊富国は歪みを生む税金への依存を減らすことができたと主張することも可能だろう。それによって民間部門の活動が促進され、したがって経済成長が後押しされることとなる。OECD加盟国に関する最近の分析は、各種税のうち資産税や広範囲を対象とした消費税(とりわけても付加価値税)は、貯蓄と投資への歪みが少なく、最も成長を損ないづらい税であることを示している (OECD 2010, Acosta-Ormaechea and Yoo 2012)。その反対に、所得税(法人税も含む)は最も強い成長阻害効果を持っていると見られており、これは経済的決定を直接に妨げるからである(Heady 2011も参照)。

先の疑問に対する答えは、資源歳入がそれぞれの非資源歳入の構成要素に対してどのような効果を及ぼすかを理解することの中に隠れている。すなわち直接税VS間接税、所得税VS消費ないし取引税といったことである。資源歳入によって、政府による法人税や所得税の徴収が減らされるのであれば、資源歳入へ依存する戦略は成長を強化するものと見るべきだ。こうした分析は、成長を損ないづらい税政策や行政改革の設計に携わる政策決定者にとって有用となるだろう。

実証上の困難

非資源歳入とその構成要素に対する資源歳入の効果を評価するのは難しい。それは以下の理由による。

  • 天然資源からの政府歳入のデータは大抵の場合非常に乏しい。これは、資源歳入を集めるための手段の透明性が不十分であることや、法人税のような標準的な課税手段から資源に関する歳入をより分ける必要性があることによる。
  • 天然資源歳入の潜在的内生性が、特定化をさらに複雑にする。非資源部門に対するマイナスのショックによる財政赤字の増加は、天然資源部門からの歳入へさらに依存する必要性を高める可能性がある。
歳入代替:新たなデータセットによる実証上の発見

最近の論文において、私たちは資源豊富国35か国の1992年から2009年にかけてのデータベースを構築し、これは資源歳入と非資源歳入をより分けるだけではなく、非資源歳入をその構成要素ごとにより分けている。すなわち、財とサービスへの税(付加価値税を含む)、所得税、国際取引税である(Crivelli and Gupta 2014)。

これによる計量結果は、天然資源と国内(非資源)税収との代替が実際に起きているということを示している。資源歳入が1ドル増えるたびに非資源税収が30セント少なることを私たちは発見した。私たちにとってそれ以上に重要なのは、主要な税の間で効果に大きく差があることだ。最も大きなマイナスの効果を見せたのは財とサービスに対する税、とりわけ付加価値税であり、最も効果が小さかったのは所得税と取引税であった。この結果は制御変数の導入、異常値の除外の他、特に私たちの推定における資源歳入の内在性に関する懸念を解決するための代替的な推定方法に対しても堅牢である。このサンプル内の国々は過去20年に渡り、財とサービスや取引に対する税を減らす一方で、非資源税収全体における所得税の割合を上昇させてきたのだ(図3)。

図3.国内(非資源)税収構造
(税収全体に対するパーセンテージ)

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政策的含意

非資源部門からの徴税を含むうまく多様化した税収源が、目指すに値する政策目標であるという理由はいくつもある。まず、天然資源は永久に続くとは限らず、信頼できる税収源や税への遵法(tax compliance)文化を構築するのには時間がかかる。また、資源歳入は大きく変動する傾向が強く、適切な財政枠組みがない場合、こうした変動は予算へと反映されてしまう。さらに、資源歳入に強く依存する国は民主化度合いが低く、「資源の呪い」に苦しみ、より高水準の汚職を経験し、非資源部門から税収を集めるための税制を強化するインセンティブが小さいということを示唆する証拠は十分にある。国民が税を支払わない場合、自らの政府に説明責任を維持させる動機は不十分となってしまう。

資源豊富国、とくに長期間に渡って資源が出ると予想されている国々は歪みを生じる課税への依存を減らすことが可能であるにも関わらず、私たちの研究結果はその逆を示唆している。そうした国々は実のところ、経済成長を強化するのに最も適していると考えられる税への依存を減らしているのだ。

資源豊富国は、非資源歳入の展開を慎重に注視すべきだ。資源歳入と成長を損ないづらい非資源歳入の間の代替が大きいのであれば、自らの税政策と歳入行政の設計の検査を検討すべきだろう。とりわけ、個人所得税の設計と管理については注意が必要となる。というのも、資源歳入が増えると、歳入行政が弱体化することで控除や特別措置が増えていくからだ。たとえば付加価値税について、資源豊富国は基本税率がある程度低いだけでなく、軽減税率が高かったりや控除額が大きい傾向にある(図4)。

図4.2012年の地域ごとの付加価値税設計

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出典:IMF財政局データベース

免責条項:ここで示されている見解は著者ら個人のものであり、IMFとその執行委員会、及びその運営とは無関係である。

参考文献
●Acosta-Ormaechea, S., and J. Yoo (2012), “Tax Composition and Economic Growth,” IMF Working Paper 12/257, (Washington: International Monetary Fund).
●Arezki, R., T. Gylfason, and A. Sy (2012), “Beyond the curse: Policies to harness the power of natural resources,” VoxEU, July 8.
●Canuto, O. and M. Cavallari (2012), “Natural wealth: Is it a blessing or a curse,” VoxEU, October 12.
●Crivelli, E., and S. Gupta (2014), “Resource Blessing, Revenue Curse? Domestic Revenue Effort in Resource-Rich Countries,” European Journal of Political Economy (forthcoming).
●Heady, C. (2011), “Tax policy to aid recovery and growth,” VoxEU, March 14.
●International Monetary Fund (2012), “Fiscal Regimes for Extractive Industries: Design and Implementation,” Board Paper, August (Washington: International Monetary Fund)
●OECD (2010), “Tax Policy Reform and Economic Growth,” OECD Tax Policy Studies 20, (Paris: Organization for Economic Co-operation and Development).

ブランシャール 「金融政策の新たな地平」

Olivier Blanchard, “Monetary Policy Will Never Be the Same“, iMFdirect, November 19, 2013.

IMFは2週間前、スタンリー・フィッシャーを記念して危機からの教訓に関する大規模なリサーチカンファレンスを開催した。私の考えをここに記そう。ここでは私は金融政策に関する教訓にフォーカスしたい。しかしそこへ進む前に、他に重要な点、ふたつに先に触れておこう。

1点目。健全財政は(外国で)危機が生じたときの備えとして有益である。以前のエピソードとは対照的に、危機前の健全な財政政策は経済危機に際して発展途上国景気反循環的な財政政策を行う余地を与え、これが決定的な違いをもたらした。

2点目。金融危機発生後の速やかな銀行の整理と資本再増強が非常に重要である。1990年代の日本ではこれが行われずに高くついたが、今回の危機でアメリカはうまく対処し経済の回復を助けた。

それでは金融政策について3点ほど述べよう。第1点目は流動性の罠のインプリケーション、2点目は流動性の供給、3点目は資本移動の管理についてである。

流動性の罠 — ゼロ金利制約が実際に長期間有効になること— が残念ながら非常に大きな損害をもたらすことを我々は学んだ。そして現時点ですでに5年が経過している。同時に、それでもまだ金融政策には幾らかの余地があることも我々は発見した。一連の証拠は非伝統的な政策が期間構造にシステマティックに影響をあたえることができ、その結果ポートフォリオ効果を通じてイールドカーブを曲げることができることを示している。しかし伝統的な政策と比較すれば、そのような非伝統的政策の効果は非常に限らたものであると同時に不確実なものにとどまっているのである。

このような理由から、将来についてはそもそも流動性の罠を避ける方法について注目が集まり、インフレ率についての疑問が再び持ち上がっている。今ではほとんどの先進国の間で現在のインフレ率がもっと高ければよかったという幅広い合意がある。危機以前のインフレ率が実際の当時の率よりももっと高かったならば、おそらく現在のインフレ率もより高いものになったであろう。もっと具体的に言えば、危機以前のインフレ率が2%ポイント高かったのならば、現在のインフレ率も今よりも2%ポイント高かった可能性が非常に高く、そして、実質金利は2%ポイント低くなっていたであろう。であれば、おそらくアメリカは今頃はゼロ名目金利から脱出してことであろう。

長期にわたるマイナスの実質金利が必要かもしれないというラリー・サマーズによって指摘された可能性を我々は無視するべきではないだろう。各国は原理的には低い名目金利と緩やかなインフレ率とによってマイナス実質金利を実現することができるはずである。にもかかわらず、我々はいまだに低調な需要が低インフレ率・高実質金利を招き、高実質金利がさらなる需要の低迷をもたらすという負のフィードバックループの危機に直面しているのである。

次に流動性供給について述べよう。先進国において(とはいえ、結論はより一般的に成立するが)、銀行の破綻は銀行自身のみならず他の金融機関と政府にとっても大きな影響をあたえることを我々は学んだ。公的債務比率が高い環境では借り換えリスクを排除できない。これはポール・クルーグマンによって強調されたテーマの一つでもあるが、金融機関に対してだけでなく、政府にとっても最後の貸し手となる存在があることが極めて重要なのである。ヨーロッパ中央銀行による無条件取引前後でのユーロ周縁諸国の国債に関する証拠はこの点についての大きな説得力を与えている。

最後に資本移動について述べる。発展途上国(および、このカンファレンスでは明確に対象とされていないものの小国の先進国)において、資本移動の大きな変動への最善の対処方法は、全てである必要はないが、多くの部分を為替レートで吸収することである。

為替レートによる調整が望ましいとする標準的な議論はこのカンファレンスでポール・クルーグマンが論じたものである。投資家が彼らの資金を国外へ移動させたいのならば、そうさせればよく、それにしたがって通貨は減価するに任せておけば良い。これによってむしろ輸出と産出の増加をもたらすのである。

為替レート調整に依存することに反対する伝統的な議論が3つある。ひとつは外貨で調達しているならば通貨の減価はバランスシートに負の効果をもたらし、輸出の増加以上に国内需要を減少させるであろう、というものである。二つ目は為替レートの名目的な下落は単に物価の上昇をもたらすだけだ、というもの。三つ目は為替レートの大きな変化は実体経済と金融市場の双方に混乱をもたらしかねない、というものである。

しかし、最初の二つについてはこれまでの危機の時よりも重要性が低下していることを証拠は示している。マクロプルーデンス政策、現地通貨建て国債市場の発達、そして為替レートの柔軟性(とそれによる為替レートリスクに対する借り手のより良い理解)のおかげで、エマージング市場での外国為替リスクはこれまでの危機の時に比べてはるかに限定されたものになっているのである。また、金融政策とインフレターゲティングへの信認の向上によってインフレ予想はこれまでよりもしっかりと固定されるようになったため、インフレに対する為替レート変動の影響も限定されるようになった。

しかしながら、3点目は依然として有効である。そしてこれこそが新興市場国の中央銀行が完全な変動相場制ではなく、管理変動相場へと移行しようとする理由である。これは政策金利と為替介入、マクロプルーデンス政策、そして資本移動制限とを組み合わせて実現する。これによって金利によってしか政策を行えなかったときに比べて、よく知られたディジレンマを抑えることが可能になる。政策金利の引き上げは資本流入による伴う加熱を冷ますと同時に、外国の投資家にとって投資へのさらなる魅力を与えるものとなる。為替介入、資本移動規制、およびマクロプルーデンス政策によって少なくとも原理的には政策金利に頼ることなく為替レートの変動と金融システムの混乱を抑えることが可能である。これらの国々では今回の危機でこれらすべての政策が使われた。国によっては資本移動規制により多く頼ったり、国によっては為替介入により多くを頼ったりしてきた。そしてカンファレンスとIMFでの研究の双方からの証拠はこれらのツールが完璧ではないものの機能したことを示している。今後の明白な(そして極めて困難な)課題はこれらのベストな組み合わせを見つけることである。

手短に言えば、金融政策はもはや以前のものに戻ることは永遠にない。今回のカンファレンスは金融政策がどのように変化したかを理解する一助となり、そして将来の我々の研究と政策がフォーカスすべき場所を示してくれたのである。