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Menzie Chinn: 円の変化と日本の輸出

Menzie Chinn, “The Yen’s Progress and Japanese Exports”, Econbrowser August 13, 2013.


ちょうど日本から戻ってきたところだが、タイミングを同じくして出たGDP統計は、経済はまだまだ完全な回復から遠いという事実を補強するものであった。

しかしながらアメリカのものと同様にGDP統計の第一次速報は不正確であることが多いので、あまり入れ込まないほうが良いだろう(修正値はアメリカと同様に2008年以降は下方修正される傾向があるものの、方向性の正確な予想と成長の加速は2008年以降は増加している。[0])。成長 [1] [2] の大きな構成要素となっている輸出について考えると、数カ月前に起きた為替レートの下落効果がどれくらい残っているのか判断に迷う。また、他国から見た日本の輸出価格(訳注:他国にとっては輸入価格)はどれくらい下落したのだろうか。今日のWSJ RTE, “Prices for Imports From Japan Decline Sharply” (by E. Morath)から:

火曜日に発表された労働省からの統計によれば、7月の日本からの(アメリカへの)輸入価格は前年同月比で2.4%下落した。2002年12月以来、12ヶ月間におけるもっと急激な下落である。アメリカの第4番目に大きい貿易相手国からの輸入のコストは6ヶ月連続で低下している。

アメリカ国民が輸入されたコンピュータやクルマ、その他の消費耐久財—すべて日本製である—に支払う価格は過去一年で下落した。

為替レートパススルー1 についてはここに譲る。

Figure1はドルに対する為替レートを表している(下落は円の減価を意味する)。この下落は単にアメリカ–日本における現象ではない。円はBISの名目貿易加重指標で計測したもっと広範囲な指標でも下落している。

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Figure 1: ドル/円 為替レートの対数(赤、右軸)、8月13日の値(赤三角、右軸)、日本円の貿易加重指標の対数(青、左軸)Source: Fed via FRED および BIS

さて、為替相場の下落をもってしても輸出価格へのパススルーはゼロになりうる(実際にはならないだろうが)。利益のマージン、あるいは単位コストは為替下落の効果を打ち消してしまうほど上昇するかもしれない。エネルギーなどの輸入財価格は生産コストの重要な構成要素であるため(そしてエネルギー関連の輸入材の価格は通常ドルで取引されているため、円の下落は単位コストの上昇につながる)、福島の原発事故以降、特に輸入物価の上昇という第二の影響が懸念されている。もちろん、アメリカへの輸出に関しては標準的な効果(日本から見た輸出価格の下落=アメリカから見た輸入価格の下落)が支配している。

為替相場の下落はどれくらい持続しているだろうか。今日の輸入コストは過去数ヶ月の為替レートの関数と考えられる。Figure 2 は1990年からの円の実質価値(の変化)の推移である。

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Figure 2:  CPIでデフレートした円の価値の対数(青線、IMFより)、BISの計測方法を使った2013年第二四半期の推計値(青四角)、デフレートされた円建てのユニットレーバーコスト(赤線、IMFより)。すべて2005年=0としている。Source: IMF, International Financial StatisticsBIS, and author’s calculations.

少なくともCPIでデフレートした基準で測ったデータからは安倍政権発足以来、実質実効為替レートは(対数で見て)25%下落していることが読み取れる(おそらくユニットレーバーコストを使っても同様であろう[3])。5月のこのポストで議論したChinn and Kamata (2013)では、フォードバック効果を一定と仮定して、長期的な20%の通貨の下落によって輸出がGDPを1.3%押し上げることを推計した。ここから所得の上昇による輸入の増加を差し引かなければならない。結果として、純輸出の増加はより小さくなる。逆向きに考えてみよう。もし純輸出の乗数が1より大きいなら、GDPはベースラインよりもさらに大きなものになるはずである。

最後に、15年前 (!) に日本に行った時に比べて、日本のものは随分と安くなったように感じる。そして、実際統計(あるいは少なくともビッグマック指数)はこの印象を深めてくれる。

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Figure 3:  アメリカのビッグマック指数(tm)(青)、日本(赤)、いずれも米ドル。注意:調査の頻度は不定期で、通常は4月、5月、6月に行われる。Source: Economist.

6月の時点でアメリカのビッグマックに比べて日本のビッグマックはおおよそ35%安い(対数で)が、これは必ずしも円が35%過小評価(「過小評価」が一体なんであれ)されていることを意味するわけではない。以前書いたように[4]、Penn効果2 は非貿易財の存在を前提とすると、まったく同一の財であってもより低い相対所得の国ではより価格が低いことを示唆する。私が持っているサンプル(1987-2013年の24の中・高所得国のデータ。バランスは取れていない)からは、PPPでみた一人当たりの相対所得の回帰係数は約0.25であった。日本の一人あたりの所得はアメリに比べて31%低いので、円は約27%「過小評価」されていると言える。

  1. 訳注:為替レートパススルーとは、為替レートが1%変化した時に輸入国の通貨で測った輸入物価の変化率を指す。 []
  2. バラッサ=サミュエルソン効果と同等。 []

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