2-3. 人は限界的な部分を見て意思決定を行います

友人と行った飲み放題の居酒屋で,私が中ジョッキで3杯のビールを飲んだとしましょう。ここで,なぜ2杯でも4杯でもなく,3杯飲んだのかを考えてみましょう。

おそらく2杯では足りないけれど4杯では酔いすぎるからなどと考えて,3杯で止めておいたのでしょうね。ここで重要なのは,結果として3杯飲んだ段階で満足したかどうかではなく,その前後の選択よりも3杯飲むという選択のほうが満足度が高かったという点です。

経済学の第3原理は,人は限界的な部分を見て意思決定をするというものです。この限界的に考えるとは,全体を見るのではなく,端の部分を少しだけ増やしたり減らしたりすることの影響を見るということなのです。

なぜそのような意思決定をするのでしょうか。それは多くの場合において,最善の選択が可能になるからです。上の居酒屋の例について,横軸にビールを何杯飲んだか,また縦軸に店を出る時点でどのくらいの満足度があるのかを棒グラフで描いたらどのようになるでしょうか。おそらく次のような形になると思われます。

このように,量を増やすことで満足度が次第に増えていくが,頂点を超えると逆に減っていくような単純な関係にある場合には,量を増やしても減らしても満足度が減る点,ここでは3杯目のところを選ぶのが最善の選択です。

別の例を考えてみましょう。新宿にある伊勢丹の営業時間は午前10時から午後8時までです。それではなぜ閉店時間が午後9時ではなく,午後8時なのでしょう。

営業時間を一時間延ばすと,おそらく売り上げも増えますが人件費や光熱費等の経費もかかってしまいます。したがって伊勢丹としては,午後8時までの営業で会社が黒字になっているかどうかが大事なのではなく,閉店時間を午後8時にすることと例えば午後7時や午後9時にすることとを比較して,最も利益が大きい閉店時間を選択できているか否かが重要なのです。

このように営業時間を設定するという問題を考える場合でも,限界的に考える,つまり少し増やしたり減らしたりしたときの影響を見た上で選択を行うことは有益なのです。

ちなみに伊勢丹は,開店時間から閉店時間まで連続して営業していますが,すべての業種がそのような営業スタイルを採るとは限りません。例えばレストラン等で,ランチタイムとディナータイムに店を開けて,15時から17時までは店を閉めておくなどということもあるでしょう。またコンビニエンスストアのセブンイレブンなどは,昔は本当に朝7時から夜11時までの営業でしたが,店を中途半端に閉めるよりも開けておく方が得なので,現在では24時間営業としているようです。なぜこのような営業時間を選択しているのか考えてみてください。