2-7. 政府の個別取引への介入が必要なときもあります

既に説明したように,政府の仕事には様々なものがあります。4種類に分けて1−6の後半で紹介しましたね。しかし,この教科書では,個別取引への介入が必要なのはどのような時なのかという二つ目の仕事を考えることに焦点を絞ることにしましょう。

市場と政府の適切な役割分担を考えるために,簡単な思考実験をしてみましょう。まず無政府状態を右端に,そして完全統制経済を左端に配置しましょう。

無政府状態とは,財産権も所有権も契約も守られないので,暴力で他人の持ち物を奪い取ってもかまわない世界だとします。さすがにこれが望ましいと思う人はいないでしょう。

そこで政府の役割として挙げた「所有権の確保や契約の履行といった市場取引の基盤整備を行うこと」が重要になるわけです。

それでは先ほどの図を少し書き変えて,政府により市場取引の基盤は整理されているが,政府は人々が行う個別の取引には一切介入しないという自由放任を右端に置いてみましょう。

それでは完全な自由放任の経済を出発点として,どの程度までは政府の介入が必要かを考えましょう。どのような介入は必要だとあなたは思いますか。反対に,誰がどのような仕事をするのかを政府が決定し,必要な生活物資は配給されるような完全統制経済から始めて,どのような行為は人々の自由な選択に任せても問題ない,または任せた方が良いと思いますか。

おそらく誰が考えたとしても,両極端ではなく,この領域は介入が必要だがこの領域は自由に任せた方が良い等の中庸な結果になるでしょう(ただし適切な役割分担のあり方については,この教科書を読み終わった段階では皆さんの考え方が変わるかもしれませんね)。

もちろん人により好みの違いがあり,望ましいと考える社会の姿に差はあるでしょうが,おそらく両極端ではなく,一定の幅の中に収まるだろうという点が重要です。

この教科書の目的は,繰り返しになりますが,交換により生み出される利益を最大限実現するという目的を達成するために必要な,市場と政府の適切な役割分担を考えることでした。そのためにも,続いては市場における取引が完全にうまくいく場合を先に考えてみることにします。