3-6. 供給曲線とその変化

これまでは消費者の需要曲線,つまり買い手側のことを考えてきましたが,続いては,生産者(売り手側)の供給曲線を考えましょう。まず特定の財・サービスを個々の生産者がどれだけ提供しようとするかを,価格と供給量の関係としてグラフにすることから始めます。このグラフを供給曲線と言います。このように,個人の問題から先に考えるというのは需要曲線のときと同じですね。

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ここではできるだけ単純な状況を考えたいので,一人で完結する仕事を想定して話を進めます。例えば革靴を一足ずつ手作りで制作しているOさんの選択を考えましょう。Oさんは,大手の工房から独立したばかりで,一人で革靴を作っています。そして制作には一足あたり4時間かかるとしましょう。また原材料費はここではゼロとします。そして靴作りではなく別の仕事をすると,一日8時間,年間200日働いて年収320万円が得られるとしておきます。

さて,仮に一足あたりの収入が5000円だとすると,Oさんは何足作るでしょうか。この場合は一日8時間働いて1万円の収入ですね。そして年間200日働くとすると年収は200万円です。このときOさんは別の仕事をした方が良いので,靴を一足も作りません。

Oさんが靴作りを始めるのは,一足あたりの収入が8000円を超えるところからです。8000円だとすると,一日8時間働いて年収がちょうど320万円を超えるからです。このように一足8000円のときは,年間で400足作って320万円の収入があると想定しておきましょう。

上の例で見たように,財・サービスの値段が上昇すると,生産者が新たに参入するようになり,供給量が次第に増加します。つまり価格と供給量には右上がりの関係があるのです。

ここで,さらに値段が上昇すると,別の新たな参入者が現れるだけでなく,おそらくOさんは今が稼ぎ時だと考えて,家族と過ごす時間などを削ってでも年間の労働時間を増やそうとするでしょう。例えば一足あたりの収入が1万円を超えたときにはOさんは労働時間を一日12時間に増やして3足作るようになるとするなら,年間の生産量は600足になります。このような値段と生産量の関係を図で表すと次のようになります。

それでは需要曲線を説明した時と同じように,価格と数量を連続的に選べるものとして,また靴の生産者はOさんとPさんしかいないと考えた場合の市場全体の供給曲線を考えてみましょう。

市場全体の供給曲線とは,まずその価格のときに個々の生産者によってどのくらいの数量が生産されるかを考えた上で,それを横に足し合わせたものということができます。上の図では,一足あたり1万円のときにOさんが600足,またPさんが400足を一年間に生産するとしたら,合計生産量が1000足になるということを表しています。

ここで見たように価格と供給量には右上がりの関係があることが一般的なのですが,この関係は原材料価格や生産技術などの影響を受けた場合などに形状が変化することになります。

例えば,これまではゼロとしていた原材料費が高くなったとすると,一足あたりの収入が同じままであるなら生産量は減るでしょう。つまり供給曲線が左側に向かって変化します。また生産技術が進歩して,一足が4時間ではなく,2時間で作れるようになったとするなら,生産量は増えるでしょう。後者の技術革新の影響を図で表すと,次のような供給曲線の変化として表現できますね。